3
「おい、ボー人間。早く来い」
鋭く飛んできたその声で僕は自分の世界から引き剥がされた。
いけないいけない。
自分の世界に浸っている場合じゃなかった。
「すみません、今向かいます」
僕は鞄をほぼ引きずりながら眼帯の男の子の所へ足を速めた。
追いつくと眼帯の男の子の前には一つのドアがあった。
「ここが、お前の……ボー人間の部屋だ」
そう言うが早いか音を立ててドアを開け放った。
思わず中を覗くと、そこは――……
「うわぁ……」
全てが白で統一された、美しい部屋だった。
「こんな部屋に、僕なんかが住んでいいんですか!?」
勢いよく後ろを振り返ると、そこで眼帯の男の子はまじまじとこちらを見ていた。
「な、なんですか……?」
「いや……、」
男の子は戸惑ったような色を見せ、慌てて目を逸らした。
その瞳には哀しい黒い影ができていた。
「夕食まで時間があるから、屋敷の中でも探検しとけ。じゃあな」
話を切り上げるようにそう言うと、そのまま何処かへ行ってしまった。
「…………?」
どうしたんだろう、と首を傾げつつも僕は着替えるためにドアを閉めた。
そして再び廊下に出た時は、僕の服装はガラリと変わっていた。
慣れないネクタイを締め、上に黒いチョッキのようなものを羽織り、
長い黒色のズボンを履いて。
「に、似合うかなこれ……」
非常に不安な気持ちを抱き、
ドアの前で突っ立っております。
サイズはピッタリなんだけれど、
果たして似合うかどうか心配です。
(――でも、)
取り敢えず、お屋敷の中は把握しておきたいから
何処か行ってみようかな。
夕食の時間までには戻って準備しないといけないみたいだし。
他の執事さんたちも居ると思うし。
「執事も歩けば羊に当たる……かな」
僕はどちらに行くか迷って、
左の方へと進むことにした。
( しかし彼……いや彼女が当たったのは、たくさんのご主人様でした )




