( ご主人様、はじめまして。 )
○*.
「おいしょ、と」
生活用品の入った大きな鞄を引きずり終えると、
僕は目の前に立ちはだかる“城”を見上げて感嘆の声を漏らした。
「ほわぁ、おっきい……」
白いレンガのような壁、 洋風な形の窓枠、
それから巨人が通れるくらいの重そうな扉。
(すっごい手入れされてるなぁ……もしかしてこれなら僕いらないんじゃ?)
今日からここの“お屋敷”で、
僕……七瀬千秋は執事として働きます。
僕のお母さんもお父さんも僕が小さいときに亡くなって、
僕は幼いながら一人になってしまったから
そんな僕が可哀想に映ったのか親戚のオジサンが引き取ってくれた。
オジサンの家は貧乏というほどではないけど。
だけど決して裕福でもなかった。
そこに僕が住むとオジサンの生活は
苦しくなったように幼少期の僕の目には映った。
オジサンは一切そういう事を僕の前では言わない、
優しい人だったけれど僕にはそれが逆に心苦しかった。
だから僕は自立する決心をした。
もうこれ以上オジサンに迷惑をかけたくなかったんだ。
執事として雇ってもらった今、 僕はオジサンの力を借りることはできない。
……いや、借りてはいけない。
寧ろここまで育ててくれたお礼として、
お金を返していかねばならない。
オジサンは今も僕を男だと思っているみたいだから、
騙したことへの謝罪の意も込めて、ね。
「よっし、頑張ろう」
拳を硬くし、決意を露わにしていると。
はぁっというため息が背中に掛かるのを感じた。
「頼むから、道をあけてくれよ」
え――――……?




