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あっと声を上げる僕に水瀬様は失笑している。

 

 

 

「今までやめていった執事もみんなそうだったんだ。けどまぁ、シュウはああ見えて優しいから。そのうち慣れるよ。一番時間がかかるだろうけど」

 

 

 

水瀬様の言葉にコクコクと同意して頷いた。

やっぱり優しさを隠してるだけなんだ。

 

 

もっと黒瀬様と話してみたいし、これからも図書室に通おう。

 

 

 

 

――なんて安易な考えを抱いていた僕は、

 

 

 

水瀬様の最後の言葉の本当の意味に気づかなかった。




「では、僕はこれで」

 

 

 

小さくお辞儀をして屋上から出ていこうとする僕に、

 

 

 

「あ、ちょっと待って」

 

 

水瀬様が引き止めるように僕の腕を掴んでグイッと引っ張った。

 

 

 

(うわぁ……僕、男の子にまともに触られたの初めてかもしれない)

 

 

 

あったとしてもオジサンだったし。

なんて一人で動揺している僕を他所に水瀬様は屋上の中央まで僕を連れていく。

 



「もう少ししたらいい感じになるんだ」

 

 

(い、いい感じ……?) 

 

 

キョトンと首を傾げ言葉の意味を理解できずにいると。

 


 

「もうちょっとだけ待ってよっか」

 

 

 

水瀬様はそう言いながらその場にコロンと寝ころんだ。

仰向け状態の空を仰ぐような形で。

 

 

 「…………?」

 

 

 

何がしたいのか、僕はどうすればいいのか。

分からずにポケっと突っ立っていると。

 

水瀬様が空から僕に視線を流しながら、笑った。

 

 

 

「七瀬くんも寝てみなよ。大丈夫、ヒロには内緒にしとくからさ」

 

   

ヒロ……?

それ、誰の事だろう?

 

 

 

「僕あんまり上下関係とか好きじゃないんだ。だから僕のことは下の名前で呼んでくれて構わないよ」

 

「ルイ様、ですか……?」

 

「あー、できれば“様”もナシがいいんだけど」

 

「えっ、でも……」

 

 

 

それだと呼び捨てになるし、

軽い感じで逆に呼びにくい、です。

 

 

 

「じゃあくん付けでいいよ。男同士だから変だけど。これはご主人様命令ね」

 

「わ、分かりました」

 

 

 

僕がようやく頷いたのを見てホッとしたようにみな……ルイくんは微笑んだ。

 

 


「ほら、寝てみて。空が壮大で呑み込まれそうな感覚になるんだ」

 

 

ルイくんが自分の隣の床をパンと叩いた。

それで僕は、「失礼します」と言ってそこに寝ころんだ。

 

そして僕の視界が地から空へと変わった時僕の目は大きく見開かれた。

 


 

(…………っ!!)

 

 

声も出ないほどの、美しさだった。

この美しさといったら言葉では表し尽せないだろう。

   

ただ、お母さんやお父さんがいなくてもちゃんとこの世界は生きていることを感じた。

 

 

 

(二人は、こんな景色に出会ったことがあったのかな)

 

 

 

この空の向こうに二人はいるのだろうか。

手を伸ばしても空を切るくらい遠い、遥か遠くで僕を見ているのだろうか。

 

もし、見ているのだとしたら。どうか祈っていてほしい。

 

 

 

(僕、ここのお屋敷で執事として頑張るから……!)

 



どうか、見守っていて下さい。

 

 

風に自分の気持ちを預け空を仰いでいると。

シュッと何かが空に弧を描き、眩い光で澄んだ空を駆け抜けた。

 



 

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