レナードの朝
徐々に強暴に鳴る警報に、現実世界に引き戻された。
と言っても、夢は見なかった。
覚えていないというのが正しいのか?
見ているのかもしれないが、レム睡眠時に高速眼球運動が映し出す幻影を、今朝のおれは全く覚えていない。
深〜いところから一気に召喚された感じだ。
相変わらず、目覚めは悪い。
生まれた瞬間に眠っている赤ん坊はいない。
だから、人それぞれ体内時計が違って当然だ。
強制的に起こされるというのは、自然の摂理に反している。
自分が何時に生まれたのか知らねぇけど……。
人間が創り出すモノは、全て不自然だ。
金も会社も、不自然な秩序だから破綻する。
今度は、もっと遅起きできるトコに束縛されよう。
雇ってもらえれば、の話だが……。
職業選択の自由が認められてはいるが、法律なんて無いに等しい。
法律を学ぶ人間だって振るいにかけられる。
それで法治国家を謳ってんだから、笑わせる。
義務教育で法を学んでいないおれが、法に裁かれる義務はない。
民事にしろ刑事にしろ、おれの罪を取り扱ってくれる裁判所があるとは思えないが……。
想像以上に、眠れ過ぎた。
……その程度の問題意識だということなのだろうか?
疲れ知らずの精神がどんなに病んでいても、悩み知らずの肉体は悠長に休息を欲する。
人生の1クォーターを奪っておいて、アドバイスひとつ無しかよ。
ったく!
まぁ……見たかもしれない悪夢に気付かなかっただけでも、良しとするか。
さて――どうする?
アイフル。
……とりあえず、メシだ。
ぃや、パンだ。
パンダ?
……白黒はっきりさせねぇと。