ゾンビ
11月30日――これといって特筆すべき出来事は、強いて挙げられない。
……ぁ。
親父の誕生日か。
幾つになったか知らんけど。
幾つまで生きるか知らんけど。
たぶん、もう、死ぬまで……働かないだろう。
年齢的に仕事が無いという先入観があるのかどうかわからないが、解雇された後何回か職業安定所(いつからかハローワークって呼ばれるようになった)に通っただけで、今はず〜っと家の中でクロスワードパズルを解読している。
当然、無償で。
懸賞に送ったら、ナンか当たるかもしれへんけど。
働かないなら、家事をやれ。
稼ぎがないなら、タバコをやめろ。
あの閑暇に、羨ましいくらい腹が立つ。
これといった用もないのに、おれと同じくらいの時間に起きて、同じくらいの時間に新聞と折込チラシをって、同じくらいの時間に洗面所を占拠して――フレックス制度は導入されていないのか?
四人しか住んでなくて、カブるってどぉゆぅことよ。
まぁ……会話を持ちたくないから、口に出して文句は言わんけど。
学生時代のおれも、ブルーワーカーだった頃の親父の眼にはムカツク存在として映っていたかもしれない。
違うのは――あの頃のおれは未知数のガキで、現在の親父は利益社会から除名されて復帰が絶望的なことだ。
若いってことは、それだけで可能性だ。
少なくとも、雇用主はそう判断する。
嫌な――世代交代だ。