転生をしてみよう!
大晦日ということでなんとなく思いつきを投稿した次第です。頑張って連載していきたいと思っているので続読よろしくお願いします。
気が付いた時、私は終わりのない、というか終わりの分からない真っ白な空間にいた。
私がここにいる理由と思われるのは五つの出来事。
一つ目、友達である由希と一緒に下校していたこと。
二つ目、信号が青に変わって横断歩道を渡り始めたこと。
三つ目、渡っている途中でキール音と共に、トラックがすごい勢いで突っ込んできたこと。
四つ目、由希の体を思いっきり前に押したこと。
そして五つ目、私の体をすさまじい衝撃が襲ったこと・・・つまりは。
「私って死んだのか。」
天美 雫。東京の私立高校に通う高校三年生。享年一八歳。
自分でも思うけど、死ぬの早いなー。特にいいことしてないけど、ここまで早死にするほど悪いこともしてきたつもりはないんだけどなー。
まあ、とりあえずお父さん、お母さん、ばあちゃんごめんなさい。先に逝きます。でもってじいちゃん、多分そっちにいけると思うから、会うことになったらよろしくねー。来るのが早すぎるって怒られる気がしなくもないんだけれど。
「随分と理解と諦めが早いんだね、君は。」
そんなことを考えていると後ろから声がした。あれ?さっき見まわした時ここに私以外に人っていたっけ?っていうか既に死んでいるから、人って言っていいのかは分からないんだけれども。
振り返ると、十歳ぐらいの男の子と一五歳ぐらいの女の子が揃って立っていた。そして、彼らを一目見た瞬間に人(私みたいな霊体)じゃないことが分かった。何故かというと、女の子の背中には天使の様な真っ白な翼が生えていたからだ。すごーい、なんてファンタジー。
「えっと、神様に天使様、ですよね?」
私の問いに男の子(多分神様)はきょとんとした顔をした後、大笑いした。
「すごいね、雫ちゃんは!今まで見てきた中でここまで落ち着いていて、面白い人間はいなかったよ!」
「・・・・・・。」
褒められているのだろうか、反応に困る。どう反応したらいいのか分からなかったので女の子の方に視線を向けてみるとパッチリと目が合った。すると女の子は申し訳なさそうに私から目を逸らした。一体どうしたんだろう? 何もしたつもりはないんだけど・・・
私と女の子のそんなやり取りを見た男の子は笑うのをやめて、真面目な顔を私に向けた。私も背筋を伸ばして向かい合うように立つ。
「天美 雫さん。貴女のお察しの通り、私は神で、彼女は天使と呼ばれる存在です。そして彼女は主に人間という生物に関しての事務を任せています。」
事務って・・・会社みたいなものなんだ、天界って。でもってやっぱり神様と天使だったんだ。
「通常、生物というものは誕生した瞬間に寿命というものが決まっており、その寿命が尽きると同時に何かの理由で命を失う仕組みになっているのです。」
「ってことは随分と短く設定されてたんですね、私の寿命って。」
そう聞いた時、神様は首を横に振り、天使さんは顔を伏せた。
「いえ、違うんです。」
「違う・・・とは?」
「当初、天美 雫という人間は八十一歳まで生きる予定でした。何も悪事などを働かなければ末期ガンで亡くなる予定でした。そして。」
そこで神様は言葉を切った。そして続ける。
「そして十八歳で亡くなる予定だった人間が一人、貴女の傍にいた。」
そこまで聞けば私でも分かる。八十一歳で死ぬはずの私が十八歳で死んだ理由、そして、天使の女の子が私に申し訳なさそうにしている理由が。
「由希があの時死ぬはずだったのに私がかばってしまったがために予定が二人分狂ってしまった。そして、無関係な私を殺してしまったことをその子は悔やんでいる、ということですね。」
「申し訳ありません!謝って済むことでは決してありませんが、本当にすみません!」
私が理解したことを口に出した瞬間、天使の女の子は謝りながら泣き崩れてしまった。あ、そんなつもりはなかったのに・・・
いたたまれない気持ちで女の子を見ていると、神様が口を開いた。
「つまるところ、君は約七十年近くの生活を無くしてしまったわけなのだが、提案がある。君は転生、しかも異世界転生というものに興味はないかな?」
異世界、転生。いわゆるファンタジー的なやつなのかな。
「そう。魔法、魔物のいる君たちの世界で言うファンタジー世界。そして、今回は私たちのミスだから君の思うとおりに転生させようと思っているんだけど、どうかな?」
それはまた・・・
「夢のある話ですね。それが本当ならむしろこの状況を喜んですらいるかもしれませんね。出来るならばこちらからお願いしたいです。」
考えることなく私は承諾する。私の現実世界での趣味は読書、それもラノベやノベルスといった辺りのもので。その上、異世界転生ものが多かったからね。その境遇に自分がなれるというのなら大歓迎だよ。
「えっと、思うとおりっていうのは私のどんな願いも全てそのまま反映されるっていうことですか?」
「そうだよ。願いはどんなものでも構わない。君たちのいう、チート能力や理想的な容姿、今の君には関係ないだろうけど若返っての転生も可能だよ。ただし、申し訳ないけど不死だけは世界のバランスが崩れることになるから了承できないからね。」
そこは願うつもりはなかったなー、私は現実でおじいちゃんを亡くしてるけど葬式の時のあの感じは出来ればもう味わいたくはない。不死になれば、あれが永遠に繰り返されることになるんだもんなー。
にしても不死は世界のバランスを崩すからダメってことは世界のバランスを崩す、つまりは、ある個体かその魂がずっと同じ世界にとどまるってことがダメなのかな。
「えーっと・・・どうしよっかな・・・」
それから頭の中で今までの異世界転生ものの小説や神様からの助言をもとにして、十数個の願いを叶えてもらった。主だったものは、王道的な魔法チート。前世の記憶維持、そして記憶維持転生の場合、赤ちゃん時代は黒歴史決定なので年齢、容姿はこのままということ。
そして、異世界語の読み書きと発音能力。実は言語に関しては神様が
「別に共通語を日本語に改変してもいいよ?」
といってくれたのだが丁重にお断りさせてもらった。私一人のために文明が変わるって・・・それに言語が違うだけで特別感あるしね。まあ、理解できなかったら困るから理解できるようにはするけど。
寿命については普通の年数を神様が与えてくれるそうなので安心。ついでに名前はどうするか聞かれたので(天美雫)から(レイン)にさせてもらった。安直だったかな?
「それで、後二つなんですが、構いませんか?」
「残り二つね、いいけど、随分と欲がないんだね。てっきり数十個はあるかと思ったけど。」
いえいえ、十数個でも私にとっては十分なんですよ。ハッキリ言って自分じゃチートと記憶維持と読み書き能力ぐらいしか思いつかなかったし・・・。
「それで、後二つというのは何かな?」
「私に関することではないんですけど、由希の寿命ってどうなるんですか?」
神様は天使の女の子に説明を促す様に顔を向ける。
「現在、由希さんの寿命は決まっておりませんが、死ぬべきであった由希さんが死なず、死ぬべきでなかった雫さんが死んでしまったので、世界のバランスを保つためにお二人の寿命を入れ替えて対応しようと思っております。」
涙を拭いながらもしっかりと答えてくれた。神様が、それで構わないか?という風な視線を向けてきたので頷く。もともと二つのうちの一つは私の残りの寿命を由希にあげてくれっていう願いだったしね。お願いするまでもなかった。
「優しいね、君は。」
私の心を読んだようで神様が言ってきた。だって人生十八年って短すぎるでしょう?
しかも本人は明言してなかったけど由希は小学校の教師になって子供達に勉強を教えたり、一緒に遊ぶことが夢らしい(由希のお母さんから聞いた)。それは叶えてもらわねばなるまい。
「それで、最後の一つは?」
「もう一つは、その天使の女の子を・・・罰することなく許してあげてください。」
「・・・え?」
天使の女の子は鳩が豆鉄砲を喰らったような顔をしている。まあ、私が女の子を、とまで言ったところで、びくっとしてたしね。何の罰を受けさせられるんだろうって。神様は予想していたのかその顔に笑いを浮かべていた。
「その様子だと分かってたみたいですね。最後に私がこれをお願いするんじゃないかと。」
「うん、まあ。君の生前の様子と今までのやり取りからね。分かった、彼女には何も罰を与えない。むしろ彼女を優遇してあげようか?」
神様はそう笑いながら言った。・・・流石は神様。そこまで見抜かれてましたか。
「い、いけません!私は貴女を、貴女を殺してしまったのですよ!? なのに罰がないなんて。」
女の子が食って掛かってくる。でもね、私自身、貴女に対して一切怒ってないし、むしろ感謝すらしたいんだけどね。
「いや、そういわれても、私の世界じゃ私が被害届出さなければ、罰されることはおろか、事件にすらならないし・・・。」
「そんな・・・どうして・・・」
また膝をついてしまった。神様と目だけでどうしたらいいか相談していると、
「夢、貴女の夢は?私はそれすら潰して・・・」
と言ってきた。うーん、夢、夢ね・・・
「夢って言われてもね・・・由希の強運でもう十分だし。」
普通、ワールドカップのエスコートキッズで海外行くと思わないでしょ。その普通を壊すのが由希の強運だったからね。それ以外にも語り切れない位の事をやらせてもらったし、それに何よりも。
「記憶維持での異世界転生なんていう夢が叶うんだから、それ以外の夢はちょっと物足りないかなって。」
そう、他の夢は努力すれば叶わなくもないけど、こればっかりはどうやっても叶えられないボーナスステージ。そう考えると天使の女の子には感謝以外の感情はない。
私の笑顔を見て何も言えなくなってしまったようで彼女は顔を伏せてしまった。・・・仕方ない。これも私にとってはボ-ナスステージなんだけど。
「神様、願い事一つ追加してもいいですか?」
「構わないけど、何かな?」
「私が向こうの世界で死んだら転生させずに天使にして、彼女の下で働かせてくれませんか?」
天使の女の子も、流石の神様も一瞬フリーズした。数秒後、神様は笑いながら許可を出してくれた。なので私は女の子に笑いかけながらお願いしておいた。
「私、物覚えは悪い方だから苦労するだろうけどしっかり教育してね。それが罰ってことで。」
「・・・・・・はい!」
元気な返事をありがとう。よかった、元気になってくれて。
というわけで大分遅くなったけれど!
「それじゃあ、転生させるけど、準備はいいかい、レイン?」
「いつでもどうぞ。ありがとうございました!」
「お気をつけて。よい人生になることをお祈りしております。」
「ありがとう。じゃあ、神様、お願いします!」
私の準備ができたという発言を聞いた神様は目をつぶって集中した。すると私の感覚がぼけ始める。
ぼやけた聴覚で最後に聞いた言葉はというと・・・
「あ、転生位置間違った!」
・・・・・・え?なんですって?
目を覚まして最初に見たものは玉座に座った明らかにヤバそうな、いわゆる悪魔の姿だった。間違うにもほどがあるでしょ、神様! 天使の子よりひどいよ、ミスり方が!
「人の子が何故こんなところにいる。まあいい、どちらにせよ殺すには変わりないからな。」
え?交渉の余地なし?玉座に座ってるような魔王っぽい悪魔って長ったらしい前置きするものじゃないの?
そんなことを考えている間にも悪魔の指の黒い塊が集まっていく。まずいって、私・・・
何か呪文!えっと・・・頭に真っ先の浮かんだものでいいんだよね?
「消え去るがいい。」
そういって黒い塊を放ってきた。もうどうにでもなれ!
「《デイティールクス》!」
私の手からすさまじい光があふれ出した。自分で出しておいてなんだけど、眩しくて目を瞑る。
「ガッ・・・・・・」
何か一瞬声がしたけどなんだろう?
光が収まって目を開けるとそこには悪魔の姿はおろか、壁が壊れて・・・外が見えていた。しかもどんどん日光が暗雲の隙間から差してくる。
なんか・・・ゲームとかアニメで見たことある気がするんだけど。大体こういう時って魔王が倒された時だったよね・・・?
「ま、魔王様!?」
何か私の後ろにいた、頭が狼の悪魔が叫んだ。ってえ? やっぱりこいつって魔王だったの?
ってことはなに?
「私・・・来てすぐに世界、救っちゃった?」
物語だったら一話で話が終わっちゃったよね?
こっから先って私、一体どうすればいいんだろうか・・・
いきなり魔王を倒してしまうという感じで始まりました、この作品です。
連載が本当に安定しませんのでゆったりと、「あ、珍しく連載してる、ラッキー」程度で続読いただけると嬉しいです。