仮想彼氏・只今・戦闘中 第6回 ワルツを踊るわたし
前回あんな事が、こんな事になり、そんなーーー、という感じですが、引き続き物語は続いていきます。「パックーーーン!!」レイの悲鳴が戦場にこだまする。彼女は一体どうなってしまうのでしょうか?是非・第1回から第5回までもお読み下さい。DIG クリエイティブ アワード 2012投稿作品!!今回は結構エロいです!!所々・猥褻な表現が含まれます。各自・モザイクをかけてご覧下さい。ではどうぞ!!
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「えっ、なにこれ?笑えないんでけど。・・・冗談でしょ?」
わたしの最愛の人の首が、無惨に転がっている。血まみれの胴体と、もう微笑んでくれないあの人の顔。
「危ない。なにしてる?戦場でボーッとするな」
オリンの大鎌をロットで受けとめた。イトウさん、もうどうでもいいんですよ。パックンのいない世界なんて、既にゲームオーバーですから。
「ちっ、もうすこしでしたのん。じゃましないでくださる」
オリンは冷酷にこちらを睨みつける。
「オレはフェミニストなんだ。可愛い娘をいたぶる趣味はない。それよりデートでもしませんか?」
おい、この期におよんで軽薄だな。パックンが死んだんだぞ。・・・というより、イトウさん、あんたが死ねばよかったんだよ。
「その口、二度と聞けなくしてあげますのん」
「いや・いや、おんなには優しくする性分でね。例えばこんな風に」
突然、目の前から姿が消えた。そして次の瞬間。
「嫌ーーー、ケダモノ」
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オリンの臀部を後方から撫でまわし、包みこむ様にその肉体をだきしめる。イトウさん、あんたはフェミニストなんかじゅあない。ただのエロオヤジだ。
「殺してやる。跡かたもなく消し去ってやる」
彼女は激情している。デリケートゾーンを触ることがゆるされるのは、選ばれた男子だけだ。乙女の逆鱗は龍よりこわし。
敵ながら同情します。・・・まって、冷静さを失ってる。もしかして作戦?いや・いや・いや。ない・ない・ない。
オリンはすっかり理性がとんでしまっている。それでもイトウさんは、瞬間移動のたびにセクハラをくりかえす。
もうどうだっていい。はやくログアウトしたい。もしくは、死んでリセットさせてくれ。
背後からの攻撃に、気付いたのはその時だった。死神の仮面をつけた黒ローブのそのおとこが、鉈で斬りつける。
このままやられてリセットだ。だけどすごく痛いんだろうな。
「神々よ、われとともにほろぶべし。フレア」
まばゆき白きひかりがあたりを包み、死神のそのおとこは吹き飛ばされた。
それはあのスケベオヤジのしわざだ。一応ヒロインを守るんだ。かっこいいですよ。でもあんたみないなブサキャラ、こっちはアウト・オブ・眼中ですから。パックンなら話は別ですけど。
「若い娘が命をそまつにするな。今は戦闘に集中しろ」
そんな事いわれても、もうほっといてくれます?・・・というより、そんな大技・最初からつかえよ。
「この術は派手なわりに破壊力がまったくない。敵を吹き飛ばすぐらいなら、つかえるけどね」
死神はすぐさまおきあがり、次の攻撃をくりだす。
オリンと死神の二人を相手に戦っている。さすがのイトウさんも悪戦苦闘だ。
大きな風が吹いている。その風が影までもゆらす。戦っている三人の影が、大きくのびていく。
「さきにそちらのおば様から、殺してあげますのん」
はい、殺してもらいますのん。どうせ二十歳すぎたら、おば様あつかいですよ。でも本当に痛そうだな。
その攻撃をうけいれるつもりでいた。そしてゲームの様に人生をリセットするのだ。大鎌がわたしをとらえた。そうだ、もう殺してくれ。
次の瞬間、大きく影がのびた様な気がした。まるでなにかが、浮きあがってくる様な幻覚を感じた。
『えっ、ポロリですか?このご時世に?』
着物の胸元が、ホロリとほどける。帯締めがほどけて、少しずつその肌が露になっていく。
♡♡♡♡♡♡
花魁はあくまでコスプレであるらしく、頬は赤くなり、辱められた様な表情を若い彼女はしている。
「たっ、たまらん。もっ・もう、モウレツ」
鼻血がとまらない。どうやら戦闘中は、イトウさんは透視をしていないようだ。
彼女はキレイな身体をしていた。若いその肌は熱をあびているのか、少し桃色に紅潮している。
影からナニかが、わきでた様な気がした。
だけど誰が一体?黒装束の忍者が大事そうに帯をもっている。ソイツは頭巾とその帯をほうりなげた。
『えっ、パックン?なんで?』
♢♦♢♦♢♦
画面一杯にミドリのソースコードが浮かびあがる。その部屋にはキーを打つ音だけが、ノイズの様に響いている。
「はやかったじゃないか。やるねあんたも」
そのおとこはもう一方に笑いかける。けれども何かが狂っている。
「違う、・・・違うんだ。・・・そんなはずない」
「ナニがだ?パトリックは戻ってきてるじゃないか」
「そうじゃない。まだナニもやってない」
「おい・おい、プログラムが暴走したんじゃないだろうな。こっちまでやばくなるぞ」
「いや、それもない。大体、パトリックの特性にあんな能力はない」
不敵な笑みが、そのおとこの表情から瞬く間に消えていった。二人は顔を見合わせる。
「そんなはずない。・・・だとしたら、アイツは誰だ?確かに死んだよな」
「わからない?けど、もしかしたら?69が作用した?」
そのままその部屋には、なんの音もしなくなった。
『コード・69を知っているヤツが、このなかにいる』
♦♢♦♢♦♢
『パックン、どうして?』
「ごめん。そんな風に悲しませるつもりはなかったんだ。簡単なトリックだよ」
変わり身の術というらしい。カレは影に隠れて、傀儡を操っていた。
「パトリック。いつから入れ替わっていた?」
「その質問にはノーコメントだ。最初からかもしれないし、実は入れ替わっていないのかも?」
二人は睨みあい、戦闘を繰りかえす。
「やはり、キミには世界を変える事はできない」
「こんな世界、変えるほどの価値があるのか?」
刀と斧が打つかりあう。ラドクリフの力技に、パックンはスピードで対抗する。
わたしの眼から涙がこぼれた。あなたがいるだけで、このゲームのラブ・ストーリーは続いていくのだ。
♥♥♥♥♥♥
「ラドクリフ様以外にみられた。殺す・殺す・殺す。皆殺しにしますのん」
おい、そういう関係ですか?ファンタジーでもSFでもなく、恋愛系・サバイバル・デスゲームですか?
わたしも女性なので、痛いほどわかりますよ・その気持ち。このゲームって露出高すぎじゃね?
その効果で恋愛は燃えあがる。現実世界ではこうはいかない。もしかしたら、よく考えられているのかも?
両軍入り乱れての、激戦が繰りひろげられている。わたしはパックンがいれば百人力だ。恋愛はこんなにも人を強くさせる。
しかし何かがおかしい。奇襲作戦のはずが、敵軍はそれを知っていた。さらに、まちぶせまでしていたのだから。
史実にもとづくなら、わが軍のほうが有利のはずが、圧倒的に不利な状況である。
もうどのぐらいの時間、戦っているのだろう?はっきりとはわからない。集中力がきれだした、・・・次の瞬間。
「もらいましたのん。死になさーーーい」
やばい、殺される。真っ二つにされる。そんなの嫌だ。せっかくパックンに出会えたのに。
「気を抜くなといっているだろ。サンダーボルト」
イトウさんはわたしをはらいのけ、オリンに電撃をくらわせた。花の花魁が黒く焦げ、花びらが艶やかに散っていく。
攻撃の際に斬りつけられた様で、傷口からハラワタがはみだしている。
「やっちまった。若いねーちゃんを殺しちまった。こんなのはオレの趣味じゃない。またこれで出生率がさがる」
残りのちからを使い尽くしたようだ。足もとがふらついている。完全に油断していて、まわりがみえていない。・・・次の瞬間。
「イトウさん、危ないーーー」
ラドクリフが大槍で突きさす。串刺しになったその傷口から、どろっとした血が少しずつ、とまることなく流れだす。
イトウさんは意識を失っている。力が少しずつ抜け落ちていく。もうすぐカレは死んでしまうのだろう。
☂☂☂☂☂☂
「撤退する。今回はうちの完敗だ」
「えっ、でもまだ試合の途中だよ」
「イトウを見殺しにする訳にはいかない。それに今回は痛みわけだ」
黒こげのオリンの死体が、布に包まれはこばれていく。まるで霊柩車にでもはこばれていくようだ。
わたしはパックンのこの判断に、納得がいかない。たかがゲームじゃないか。一人のキャラクターの生き死にに、一喜一憂していたら、楽しめるモノも楽しむことはできない。
■ ある新聞社において
「美穂さん、原稿あがりました」
「サンキュー、新人君。つぎこれね」
「人使いあらすぎません?それにいい加減、名前おぼえてください。佐藤たけるです」
「ごめん・ごめん。よろしくね・パンチ」
れいこの旧友の美穂は、ある新聞社に勤務していた。新聞といっても、ゴシップや都市伝説などを扱うB級の出版社だ。
「怒りますよ。ボクは天然パーマですから」
「テンパの佐藤だから、やっぱりパンチだよな」
オヤジ・ギャルというのは死語である。けれども彼女を表現するのに、これ以上の言葉は存在しない。
「もういいです。諦めました」
「ところでパンチ。例の事件どうなった」
「どうもこうも、お蔵入りでしょ。被害者も加害者も、なんの接点もないんですから」
佐藤は面倒くさそうに頭をこする。
「かぶってるのは、現場にある69のダイニングメッセージだけですからね」
美穂は冷静に受け答えをし、つぎのような結論に達する。
「呪のアプリの噂が最近・流行ってるんだ。二週間以内に死ぬっていう、あれね」
「うちの妹もなんかいってましたよ。無料だけど大変な事になるらしいですね。本当にそういう話・好きですよね」
「ウェブで、そのアプリのソースコードが公開されていたらしいんだけど。それの通称が69」
「記事にしたら面白いでしょうね。けど、どうせガセなんでしょ」
「あと変な薬も流行ってるの。合法ドラック扱いらしいんだけど、それの通称も69。ハイになり過ぎて、やばいらしいんだ」
部下の佐藤はふて腐れている。無駄な残業が増やされるかもしれない。
「調べときます。どうせファッションでつけただけだと思いますけど」
「頼むよ。新人君」
「佐藤です。いい加減、おぼえてください」
巷ではナニか不吉な事が、おこっているらしい。
☁☁☁☁☁☁
イトウさんから大槍を抜きとった。まだ血はとまらない。もう息をしていない。
「そっと寝かせて、まだ死んでいないよ」
「でも、もう助からないよ。このまま死なせてあげたほうが」
「なにいってるんだ。どうして仲間が死んでいくのに、そんな風に平気でいられる」
道理的には正しいことをいっている。カレの思考はプログラミングで、正しく制御されている。だけどもそんなことをいわれても、これは単なるゲームなのだ。
「禁忌の呪術を使う。用意を手伝ってくれ」
豚の血をもってこさせ服をぬがす。身体中にその血を使って梵字をえがく。書き忘れたところがあると、その場所だけ、あの世にもっていかれるそうだ。
「神の名にしたがい、われはカレに命ずる。そしてこのモノを再び地上にもどしたまえ」
訳のわからない呪文を唱え続けた。驚くことにイトウさんはよみがえってきた。
■ 2013年1月・東京
はーい、こちらはJKギャルステーションです。
はい、みなさん・よろしくどーぞ。
ユーストリームで生放送中です。
ツイッターで拡散よろしく。
ラインとかもつなげてね。
新年・明けましておめでとう。
と、同時にノストラダムスに続きまして、
マヤの人類滅亡・ガセが証明されました。
いえーーーい。
マヤ人・バカじゃね。
暦・つくり・わすれてやんの。
じゃあ、リプから色々・紹介していくね。
『コード69を手に入れれば、世界はキミの思うがまま。キミは世界を変える事ができる』
・・・ナニこれ?
まあ変な人はほっときます。
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『そんなおんなとは思わなかった。キミには失望した』
思いもよらない冷たい言葉だ。さっきまでは、あんなに強く恋いこがれていたのに、現実は残酷だ。恋の歯車はナニが原因で狂いだすかわからない。
仕方がないので、イトウさんのお見舞いにいくことにした。一応・あの人は命の恩人だ。まあ、ゲームのなかの話ではあるのだが。
「イトウさん、けがの具合はどうですか?」
「おかげ様でね。なんとか生きてるよ」
「ありがとうございます。助けてくれなかったら死んでました」
何度も助けてもらった。スケベでなかったなら尊敬している。
「すごいですよ。あんなに強いとは思いませんでした」
ただのスケベオヤジと思っていた。からの即戦力。おみそれいたしました。
「呪文の言葉も知的といいますか」
「あっ、あれ、適当なんだ。掛け声だからなんでもいいの。昔・漫画でみたのかな?」
おい、そんな適当でいいのか?いい加減にもほどがあるだろうが。
「便利ですよね。あの呪術。あんな状態でも生きかえれるんですから」
それを聞いて、不機嫌そうにイトウさんは答えた。
「バカいっちゃいけない。死んだ人間は生きかえれないよ。それに凄いエネルギーを使うんだ。アイツはいま、ボロボロのはずだ」
「えっ、でも、死んだ人間にあの術を使うとどうなるんですか?」
「死んだ人間に、別のナニかがはいってくる事になる。どうなると思う?酷い事にしかならないね」
肝心なことにイトウさんは答えようとしない。ゲームなのに残酷な設定にし過ぎている。これは報告しておいたほうがいいだろう。
それよりも、わたしは知りたい事があった。なぜラドクリフの考えを読まなかったかという事だ。
「アイツの思考は読む事ができない。ナニもないんだ。少なくとも表層上にはね」
珍しく神妙な面持ちで、この人はそう答えた。
「しかも深層心理にひろがっているのは、底のない闇だ。覗きたくもないね」
そういって髪の毛を少しととのえた。寝汗をかいていたようだ。
「まあ、ねーちゃんの場合、覗かなくてもまるわかりだけどね。パトリックの事が好きで・好きでたまらない。顔にそう書いてあるよ」
えっ、・・・そんな、やっぱりわかります。こんな時でもカレの事をおもうと、心がときめいてしまう。
♡♥♡♥♡♥
「・・・うっ、たまらん。モウレツ」
イトウさんの鼻から血が流れだす。もしかしてさっきからずっと、この至近距離から透視してましたか?
わたしのオッパイもお尻も、あんな所やこんな所まで、乙女の大事な箇所を覗きまくりですか?
嫌ーーー!!こんな人の事を、少しでもいい人と思った自分がなさけない。
わたしは胸とこかんを両手で隠し、うしろを向いている。しかしこれでは、お尻が至近距離から丸見えだ。
『そうだ。お尻を手で隠せば、ナニもみえないはすだ』
屈んで姿勢を低くして、ピップを両手で隠した。
「おー、本当にいい身体をしているね。その肉の付きかたがオレ好みなんだ。ちなみに透視だけじゃなくて、どこからでも映像を見ることができたりして」
おっ、今・無防備過ぎる。大事な所を手で覆い、再び正面を向いた。
「ひゅー・ひゅー・いいね。最高だ。元気になったら、触ちゃおうかな。いや、絶対に触る。ちなみに透視ができるって事は、手もすけてみえますから」
おい、どうあがいても丸見えじゃねえか。エロ過ぎだろ・このゲーム。嫌ーーー、本当に・本当にはずかしいです。
「冗談・冗談。盗撮なんてせこいマネはしないよ。どうせなら、ありのままのキミをみてみたい」
あんた本当に肉食系ですね。そういうの嫌いじゃないけど、あんたにだけは嫌。生理的に受けつけません。
「なー、デートしてくれよ。なんならオレの子供をうんだっていいんだぜ。透視なんかしないからさ」
裸はみていないと笑顔でそういう。けれどもさっきから、ギラギラした目線で上から下まで舐めまわす様に、じっとわたしの身体を観察しています。
どう考えても、本当は丸見えに違いない。イトウ・お前・絶対にチートだろ。そうだチートに違いない。そしてこの鬼畜が。
元気になるな。元気になったら、パックンに殺してもらうんだから。
今日はパックンにだきつくことができない。そのことがとても悲しくて、わたしの眼には涙があふれそうになっていた。
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お見舞いをおえて、パックンの所にいそいだ。けれどもカレは、腫れモノに触る様にわたしに接する。
顔も見たくないという感じだ。チームのことがあるので、必要最低限のことはする。しかしわたしには、かかわりあいたくない様子だ。
パックンはいつも正しい。けれども、あんな風に接しなくてもいいじゃない。ほかの人には正論で接しても、わたしのことは特別扱いしてほしい。
わたしは例の薬を二錠とりだし、水でいっきに口のなかに流しこむ。
スマートフォンは怪奇なバイブレーションとともに、アプリを立ちあげる。奇妙な事にこのゲームは、ログインとログアウトの方法が全く同じだ。
わたしの精神は、このゲームから切り離されていく。暫くパックンにあえないのが、とても悲しい。それ以上にカレの心が離れていくことに、涙がとまらなかった。
なんで喧嘩なんかしちゃったんだろう?
人を好きになるといつもこうだ。相手はいつも土足で、わたしのなかに踏みこんできて、心の底をあらしまわる。愛すれば愛するほど、相手は平気でそれをしてくる。
傷つくたびに、もう恋なんてしないと決めているのに、恋愛がはじまるその瞬間には、すっかりそのことを忘れてしまっている。
わたしの視覚に無数のホログラムが浮かびあがり、すみやかにログアウトは実行された。そしていつもの日常が、繰り返されていくのだ。
♧♣♧♣♧♣
『・・・えっ、なにこれ?』
わたしはピストルをかまえている。そこには少女が横たわっている。銃口から白い煙が舞いあがり、その娘は血をながしていて、もう息をしていない。
目の前にはデジャブのように森林がひろがっている。けれども夢とはなにかが違っている。
「おい、また一人でやがったな」
「まったく最近、おかしなことばかりだ」
その二人組にも見覚えがあった。奴らはいっけんサラリーマンのような出立ちだが、ブルースブラザーズの様に黒服とグラサンできめこんでいる。
そのSPのような強靭な筋肉に、わたしはすぐに押し倒されてしまった。
一瞬の出来事であるが、目の前の事実を信じられない気持ちと、これから起こる出来事への恐怖がいりまじって、頭のなかを交差していく。
「やめろ。なんだこれは。うっ・うっ・うっ」
片方のおとこがわたしの身体を押さえこみ。もう片方がわたしの口元にガーゼを押しつける。おそらく睡眠薬か何か、塗り込んでいるのだろう。意識がどんどん遠のいていく。
「暴れるなよ。肝心なところにキズがついちまう」
「そんなことになったら、おれたちはもうおしまいだ」
わたしは必死にもがいているが、段々とちからが抜けていき、そして意識はうすれていく。
「おい、よく見るとカワイコちゃんだな。殺すのが勿体ない」
「殺しはしないさ。でもやっぱ死んじゃうんだろうな」
「生きていようが、死んでいようが、69の秘密さへわかればそれでいい。それによく見ると貧乳だ」
「馬鹿野郎。それがいいんじゃないか。貧乳最高」
『わたしの身体はパックンだけのモノだ』
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気が付くと、わたしはその部屋にいた。ミドリのライトで身体を照らされている。その部屋はやけにうすぐらかった。
気がつくと服は剥ぎとられていて、わたしは黒の下着を身につけている。
天井から縄で、うでを縛りあげられた。両手両足には拘束具が取りつけられ、わたしの自由は奪いとられている。少しも身動きできない様に、縄がしっかり肉体を縛りあげる。
冷たいはずの鉄の柱は、わたしの体温をすって熱を帯びている。それが身体をほてらせる。
『なんだこの場所は?本当に悪趣味・極まりない』
この理不尽な現実を受けいれられない。妄想のなかでいま・わたしは、パックンとワルツを踊っている。
看守の様なおとこがやってきた。ソイツはナチスの軍服をきている。片方の眼に眼帯をしていて、あまり眼は見えていないようであった。
耳もあまり聞こえていないのだろうか?訳のわからない独り言をひたすら連呼している。
「お嬢ちゃん。やっとおめざめですか?」
あんたに『おはようございます』と、いったところでどうなる?
「さっそくだけど、69について知ってることをおしえてもらう。もし拒むなら、その身体におしえてもらうことになる」
そういってそのおとこは、ひたすらムチを打ちつづける。肌にムチがあたりこすれ弾ける音と、わたしの悲鳴にならないその音が静かにその部屋にひびきわたる。
『痛い。本当に痛い。なにするのよコイツ』
その男は本当に狂っている。答えのない質問をわたしに投げかけては、答えられないわたしをムチで打ちたおすのだから。
わたしの口元はボールギャングでふさがれていて、最初から答える事ができない。そこから唾液があふれだし、ミドリの照明が身体のラインを浮かびあがらせる。
『こんな姿は絶対に、パックンには見られたくない』
ムチの音が鳴りやむことはない。そのおとこは容赦なくその行為をくりかえす。わたしは必死にもがいて抵抗するのだが、縄が身体に絡みついて身動きがとれない。
わたしは普段は強い女性を演じている。この競争社会で生きのこるためには、それが必要だった。涙と汗と唾液が混じりあって、それが身体を蒸しかえす。
わたしの感情はすっかりへし折られ、プライドのかたまりの高飛車おんなは、どこかに去っていってしまった。
深層心理の奥の奥にいるのは、乙女そのままのありのままの『わ・た・し』。
『パックン・はやくきて。わたしを助けて』
来るべきはずもない王子様の名前を心のなかで叫んで、わたしはそのまま意識を失ってしまった。
濡れ丸です。僕の番だけエロくてすいません。
イトウさん、本当にあんたエロいよ!!
最後までよろしくお願いします。