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仮想彼氏・只今・戦闘中 第6回 ワルツを踊るわたし

前回あんな事が、こんな事になり、そんなーーー、という感じですが、引き続き物語は続いていきます。「パックーーーン!!」レイの悲鳴が戦場にこだまする。彼女は一体どうなってしまうのでしょうか?是非・第1回から第5回までもお読み下さい。DIG クリエイティブ アワード 2012投稿作品!!今回は結構エロいです!!所々・猥褻な表現が含まれます。各自・モザイクをかけてご覧下さい。ではどうぞ!!

 ☆★☆★☆★


「えっ、なにこれ?笑えないんでけど。・・・冗談でしょ?」


わたしの最愛の人の首が、無惨に転がっている。血まみれの胴体と、もう微笑んでくれないあの人の顔。


「危ない。なにしてる?戦場でボーッとするな」


オリンの大鎌をロットで受けとめた。イトウさん、もうどうでもいいんですよ。パックンのいない世界なんて、既にゲームオーバーですから。


「ちっ、もうすこしでしたのん。じゃましないでくださる」


オリンは冷酷にこちらを睨みつける。


「オレはフェミニストなんだ。可愛い娘をいたぶる趣味はない。それよりデートでもしませんか?」


おい、この期におよんで軽薄だな。パックンが死んだんだぞ。・・・というより、イトウさん、あんたが死ねばよかったんだよ。


「その口、二度と聞けなくしてあげますのん」

「いや・いや、おんなには優しくする性分でね。例えばこんな風に」


突然、目の前から姿が消えた。そして次の瞬間。


「嫌ーーー、ケダモノ」


 ♥♡♥♡♥♡


オリンの臀部を後方から撫でまわし、包みこむ様にその肉体をだきしめる。イトウさん、あんたはフェミニストなんかじゅあない。ただのエロオヤジだ。


「殺してやる。跡かたもなく消し去ってやる」


彼女は激情している。デリケートゾーンを触ることがゆるされるのは、選ばれた男子だけだ。乙女の逆鱗は龍よりこわし。


敵ながら同情します。・・・まって、冷静さを失ってる。もしかして作戦?いや・いや・いや。ない・ない・ない。


オリンはすっかり理性がとんでしまっている。それでもイトウさんは、瞬間移動のたびにセクハラをくりかえす。


もうどうだっていい。はやくログアウトしたい。もしくは、死んでリセットさせてくれ。


背後からの攻撃に、気付いたのはその時だった。死神の仮面をつけた黒ローブのそのおとこが、鉈で斬りつける。


このままやられてリセットだ。だけどすごく痛いんだろうな。


 「神々よ、われとともにほろぶべし。フレア」


まばゆき白きひかりがあたりを包み、死神のそのおとこは吹き飛ばされた。


それはあのスケベオヤジのしわざだ。一応ヒロインを守るんだ。かっこいいですよ。でもあんたみないなブサキャラ、こっちはアウト・オブ・眼中ですから。パックンなら話は別ですけど。


「若い娘が命をそまつにするな。今は戦闘に集中しろ」


そんな事いわれても、もうほっといてくれます?・・・というより、そんな大技・最初からつかえよ。


「この術は派手なわりに破壊力がまったくない。敵を吹き飛ばすぐらいなら、つかえるけどね」


 死神はすぐさまおきあがり、次の攻撃をくりだす。


オリンと死神の二人を相手に戦っている。さすがのイトウさんも悪戦苦闘だ。


大きな風が吹いている。その風が影までもゆらす。戦っている三人の影が、大きくのびていく。


「さきにそちらのおば様から、殺してあげますのん」


はい、殺してもらいますのん。どうせ二十歳すぎたら、おば様あつかいですよ。でも本当に痛そうだな。


その攻撃をうけいれるつもりでいた。そしてゲームの様に人生をリセットするのだ。大鎌がわたしをとらえた。そうだ、もう殺してくれ。


次の瞬間、大きく影がのびた様な気がした。まるでなにかが、浮きあがってくる様な幻覚を感じた。


 『えっ、ポロリですか?このご時世に?』


着物の胸元が、ホロリとほどける。帯締めがほどけて、少しずつその肌が露になっていく。


 ♡♡♡♡♡♡


花魁はあくまでコスプレであるらしく、頬は赤くなり、辱められた様な表情を若い彼女はしている。


「たっ、たまらん。もっ・もう、モウレツ」


鼻血がとまらない。どうやら戦闘中は、イトウさんは透視をしていないようだ。


彼女はキレイな身体をしていた。若いその肌は熱をあびているのか、少し桃色に紅潮している。


 影からナニかが、わきでた様な気がした。


だけど誰が一体?黒装束の忍者が大事そうに帯をもっている。ソイツは頭巾とその帯をほうりなげた。


 『えっ、パックン?なんで?』


 ♢♦♢♦♢♦


画面一杯にミドリのソースコードが浮かびあがる。その部屋にはキーを打つ音だけが、ノイズの様に響いている。


「はやかったじゃないか。やるねあんたも」


そのおとこはもう一方に笑いかける。けれども何かが狂っている。


「違う、・・・違うんだ。・・・そんなはずない」

「ナニがだ?パトリックは戻ってきてるじゃないか」


「そうじゃない。まだナニもやってない」

「おい・おい、プログラムが暴走したんじゃないだろうな。こっちまでやばくなるぞ」


「いや、それもない。大体、パトリックの特性にあんな能力はない」


不敵な笑みが、そのおとこの表情から瞬く間に消えていった。二人は顔を見合わせる。


「そんなはずない。・・・だとしたら、アイツは誰だ?確かに死んだよな」


「わからない?けど、もしかしたら?69が作用した?」


 そのままその部屋には、なんの音もしなくなった。


『コード・69を知っているヤツが、このなかにいる』


 ♦♢♦♢♦♢


『パックン、どうして?』


「ごめん。そんな風に悲しませるつもりはなかったんだ。簡単なトリックだよ」


 変わり身の術というらしい。カレは影に隠れて、傀儡を操っていた。


「パトリック。いつから入れ替わっていた?」


「その質問にはノーコメントだ。最初からかもしれないし、実は入れ替わっていないのかも?」


 二人は睨みあい、戦闘を繰りかえす。


「やはり、キミには世界を変える事はできない」

「こんな世界、変えるほどの価値があるのか?」


刀と斧が打つかりあう。ラドクリフの力技に、パックンはスピードで対抗する。


わたしの眼から涙がこぼれた。あなたがいるだけで、このゲームのラブ・ストーリーは続いていくのだ。


 ♥♥♥♥♥♥


「ラドクリフ様以外にみられた。殺す・殺す・殺す。皆殺しにしますのん」


おい、そういう関係ですか?ファンタジーでもSFでもなく、恋愛系・サバイバル・デスゲームですか?


わたしも女性なので、痛いほどわかりますよ・その気持ち。このゲームって露出高すぎじゃね?


その効果で恋愛は燃えあがる。現実世界ではこうはいかない。もしかしたら、よく考えられているのかも?


両軍入り乱れての、激戦が繰りひろげられている。わたしはパックンがいれば百人力だ。恋愛はこんなにも人を強くさせる。


しかし何かがおかしい。奇襲作戦のはずが、敵軍はそれを知っていた。さらに、まちぶせまでしていたのだから。


史実にもとづくなら、わが軍のほうが有利のはずが、圧倒的に不利な状況である。


もうどのぐらいの時間、戦っているのだろう?はっきりとはわからない。集中力がきれだした、・・・次の瞬間。


「もらいましたのん。死になさーーーい」


やばい、殺される。真っ二つにされる。そんなの嫌だ。せっかくパックンに出会えたのに。


「気を抜くなといっているだろ。サンダーボルト」


イトウさんはわたしをはらいのけ、オリンに電撃をくらわせた。花の花魁が黒く焦げ、花びらが艶やかに散っていく。


攻撃の際に斬りつけられた様で、傷口からハラワタがはみだしている。


「やっちまった。若いねーちゃんを殺しちまった。こんなのはオレの趣味じゃない。またこれで出生率がさがる」


残りのちからを使い尽くしたようだ。足もとがふらついている。完全に油断していて、まわりがみえていない。・・・次の瞬間。


「イトウさん、危ないーーー」


ラドクリフが大槍で突きさす。串刺しになったその傷口から、どろっとした血が少しずつ、とまることなく流れだす。


イトウさんは意識を失っている。力が少しずつ抜け落ちていく。もうすぐカレは死んでしまうのだろう。


 ☂☂☂☂☂☂


「撤退する。今回はうちの完敗だ」

「えっ、でもまだ試合の途中だよ」

「イトウを見殺しにする訳にはいかない。それに今回は痛みわけだ」


黒こげのオリンの死体が、布に包まれはこばれていく。まるで霊柩車にでもはこばれていくようだ。


わたしはパックンのこの判断に、納得がいかない。たかがゲームじゃないか。一人のキャラクターの生き死にに、一喜一憂していたら、楽しめるモノも楽しむことはできない。


 ■ ある新聞社において


「美穂さん、原稿あがりました」

「サンキュー、新人君。つぎこれね」

「人使いあらすぎません?それにいい加減、名前おぼえてください。佐藤たけるです」

「ごめん・ごめん。よろしくね・パンチ」


れいこの旧友の美穂は、ある新聞社に勤務していた。新聞といっても、ゴシップや都市伝説などを扱うB級の出版社だ。


「怒りますよ。ボクは天然パーマですから」

「テンパの佐藤だから、やっぱりパンチだよな」


オヤジ・ギャルというのは死語である。けれども彼女を表現するのに、これ以上の言葉は存在しない。


「もういいです。諦めました」

「ところでパンチ。例の事件どうなった」

「どうもこうも、お蔵入りでしょ。被害者も加害者も、なんの接点もないんですから」


 佐藤は面倒くさそうに頭をこする。


「かぶってるのは、現場にある69のダイニングメッセージだけですからね」


 美穂は冷静に受け答えをし、つぎのような結論に達する。


「呪のアプリの噂が最近・流行ってるんだ。二週間以内に死ぬっていう、あれね」

「うちの妹もなんかいってましたよ。無料だけど大変な事になるらしいですね。本当にそういう話・好きですよね」


「ウェブで、そのアプリのソースコードが公開されていたらしいんだけど。それの通称が69」

「記事にしたら面白いでしょうね。けど、どうせガセなんでしょ」


「あと変な薬も流行ってるの。合法ドラック扱いらしいんだけど、それの通称も69。ハイになり過ぎて、やばいらしいんだ」


部下の佐藤はふて腐れている。無駄な残業が増やされるかもしれない。


「調べときます。どうせファッションでつけただけだと思いますけど」

「頼むよ。新人君」

「佐藤です。いい加減、おぼえてください」


 巷ではナニか不吉な事が、おこっているらしい。


 ☁☁☁☁☁☁


イトウさんから大槍を抜きとった。まだ血はとまらない。もう息をしていない。


「そっと寝かせて、まだ死んでいないよ」

「でも、もう助からないよ。このまま死なせてあげたほうが」

「なにいってるんだ。どうして仲間が死んでいくのに、そんな風に平気でいられる」


道理的には正しいことをいっている。カレの思考はプログラミングで、正しく制御されている。だけどもそんなことをいわれても、これは単なるゲームなのだ。


「禁忌の呪術を使う。用意を手伝ってくれ」


豚の血をもってこさせ服をぬがす。身体中にその血を使って梵字をえがく。書き忘れたところがあると、その場所だけ、あの世にもっていかれるそうだ。


「神の名にしたがい、われはカレに命ずる。そしてこのモノを再び地上にもどしたまえ」


訳のわからない呪文を唱え続けた。驚くことにイトウさんはよみがえってきた。


 ■ 2013年1月・東京


 はーい、こちらはJKギャルステーションです。

 はい、みなさん・よろしくどーぞ。

 ユーストリームで生放送中です。

 ツイッターで拡散よろしく。

 ラインとかもつなげてね。


 新年・明けましておめでとう。

 と、同時にノストラダムスに続きまして、

 マヤの人類滅亡・ガセが証明されました。

 いえーーーい。

 マヤ人・バカじゃね。

 暦・つくり・わすれてやんの。

 じゃあ、リプから色々・紹介していくね。


『コード69を手に入れれば、世界はキミの思うがまま。キミは世界を変える事ができる』


 ・・・ナニこれ?

 まあ変な人はほっときます。


 ☆★☆★☆★


『そんなおんなとは思わなかった。キミには失望した』


思いもよらない冷たい言葉だ。さっきまでは、あんなに強く恋いこがれていたのに、現実は残酷だ。恋の歯車はナニが原因で狂いだすかわからない。


仕方がないので、イトウさんのお見舞いにいくことにした。一応・あの人は命の恩人だ。まあ、ゲームのなかの話ではあるのだが。


「イトウさん、けがの具合はどうですか?」

「おかげ様でね。なんとか生きてるよ」


「ありがとうございます。助けてくれなかったら死んでました」


 何度も助けてもらった。スケベでなかったなら尊敬している。


「すごいですよ。あんなに強いとは思いませんでした」


ただのスケベオヤジと思っていた。からの即戦力。おみそれいたしました。


「呪文の言葉も知的といいますか」

「あっ、あれ、適当なんだ。掛け声だからなんでもいいの。昔・漫画でみたのかな?」


おい、そんな適当でいいのか?いい加減にもほどがあるだろうが。


「便利ですよね。あの呪術。あんな状態でも生きかえれるんですから」


それを聞いて、不機嫌そうにイトウさんは答えた。


「バカいっちゃいけない。死んだ人間は生きかえれないよ。それに凄いエネルギーを使うんだ。アイツはいま、ボロボロのはずだ」

「えっ、でも、死んだ人間にあの術を使うとどうなるんですか?」


「死んだ人間に、別のナニかがはいってくる事になる。どうなると思う?酷い事にしかならないね」


肝心なことにイトウさんは答えようとしない。ゲームなのに残酷な設定にし過ぎている。これは報告しておいたほうがいいだろう。


それよりも、わたしは知りたい事があった。なぜラドクリフの考えを読まなかったかという事だ。


「アイツの思考は読む事ができない。ナニもないんだ。少なくとも表層上にはね」


珍しく神妙な面持ちで、この人はそう答えた。


「しかも深層心理にひろがっているのは、底のない闇だ。覗きたくもないね」


そういって髪の毛を少しととのえた。寝汗をかいていたようだ。


「まあ、ねーちゃんの場合、覗かなくてもまるわかりだけどね。パトリックの事が好きで・好きでたまらない。顔にそう書いてあるよ」


えっ、・・・そんな、やっぱりわかります。こんな時でもカレの事をおもうと、心がときめいてしまう。


 ♡♥♡♥♡♥


「・・・うっ、たまらん。モウレツ」


イトウさんの鼻から血が流れだす。もしかしてさっきからずっと、この至近距離から透視してましたか?


わたしのオッパイもお尻も、あんな所やこんな所まで、乙女の大事な箇所を覗きまくりですか?


嫌ーーー!!こんな人の事を、少しでもいい人と思った自分がなさけない。


わたしは胸とこかんを両手で隠し、うしろを向いている。しかしこれでは、お尻が至近距離から丸見えだ。


『そうだ。お尻を手で隠せば、ナニもみえないはすだ』


 屈んで姿勢を低くして、ピップを両手で隠した。


「おー、本当にいい身体をしているね。その肉の付きかたがオレ好みなんだ。ちなみに透視だけじゃなくて、どこからでも映像を見ることができたりして」


おっ、今・無防備過ぎる。大事な所を手で覆い、再び正面を向いた。


「ひゅー・ひゅー・いいね。最高だ。元気になったら、触ちゃおうかな。いや、絶対に触る。ちなみに透視ができるって事は、手もすけてみえますから」


おい、どうあがいても丸見えじゃねえか。エロ過ぎだろ・このゲーム。嫌ーーー、本当に・本当にはずかしいです。


「冗談・冗談。盗撮なんてせこいマネはしないよ。どうせなら、ありのままのキミをみてみたい」


あんた本当に肉食系ですね。そういうの嫌いじゃないけど、あんたにだけは嫌。生理的に受けつけません。


「なー、デートしてくれよ。なんならオレの子供をうんだっていいんだぜ。透視なんかしないからさ」


裸はみていないと笑顔でそういう。けれどもさっきから、ギラギラした目線で上から下まで舐めまわす様に、じっとわたしの身体を観察しています。


どう考えても、本当は丸見えに違いない。イトウ・お前・絶対にチートだろ。そうだチートに違いない。そしてこの鬼畜が。


元気になるな。元気になったら、パックンに殺してもらうんだから。


今日はパックンにだきつくことができない。そのことがとても悲しくて、わたしの眼には涙があふれそうになっていた。


 ☁☁☁☁☁☁


お見舞いをおえて、パックンの所にいそいだ。けれどもカレは、腫れモノに触る様にわたしに接する。


顔も見たくないという感じだ。チームのことがあるので、必要最低限のことはする。しかしわたしには、かかわりあいたくない様子だ。


パックンはいつも正しい。けれども、あんな風に接しなくてもいいじゃない。ほかの人には正論で接しても、わたしのことは特別扱いしてほしい。


わたしは例の薬を二錠とりだし、水でいっきに口のなかに流しこむ。


スマートフォンは怪奇なバイブレーションとともに、アプリを立ちあげる。奇妙な事にこのゲームは、ログインとログアウトの方法が全く同じだ。


わたしの精神は、このゲームから切り離されていく。暫くパックンにあえないのが、とても悲しい。それ以上にカレの心が離れていくことに、涙がとまらなかった。


 なんで喧嘩なんかしちゃったんだろう?


人を好きになるといつもこうだ。相手はいつも土足で、わたしのなかに踏みこんできて、心の底をあらしまわる。愛すれば愛するほど、相手は平気でそれをしてくる。


傷つくたびに、もう恋なんてしないと決めているのに、恋愛がはじまるその瞬間には、すっかりそのことを忘れてしまっている。


わたしの視覚に無数のホログラムが浮かびあがり、すみやかにログアウトは実行された。そしていつもの日常が、繰り返されていくのだ。


 ♧♣♧♣♧♣


 『・・・えっ、なにこれ?』


わたしはピストルをかまえている。そこには少女が横たわっている。銃口から白い煙が舞いあがり、その娘は血をながしていて、もう息をしていない。


目の前にはデジャブのように森林がひろがっている。けれども夢とはなにかが違っている。


「おい、また一人でやがったな」

「まったく最近、おかしなことばかりだ」


その二人組にも見覚えがあった。奴らはいっけんサラリーマンのような出立ちだが、ブルースブラザーズの様に黒服とグラサンできめこんでいる。


そのSPのような強靭な筋肉に、わたしはすぐに押し倒されてしまった。


一瞬の出来事であるが、目の前の事実を信じられない気持ちと、これから起こる出来事への恐怖がいりまじって、頭のなかを交差していく。


「やめろ。なんだこれは。うっ・うっ・うっ」


片方のおとこがわたしの身体を押さえこみ。もう片方がわたしの口元にガーゼを押しつける。おそらく睡眠薬か何か、塗り込んでいるのだろう。意識がどんどん遠のいていく。


「暴れるなよ。肝心なところにキズがついちまう」

「そんなことになったら、おれたちはもうおしまいだ」


わたしは必死にもがいているが、段々とちからが抜けていき、そして意識はうすれていく。


「おい、よく見るとカワイコちゃんだな。殺すのが勿体ない」

「殺しはしないさ。でもやっぱ死んじゃうんだろうな」


「生きていようが、死んでいようが、69の秘密さへわかればそれでいい。それによく見ると貧乳だ」

「馬鹿野郎。それがいいんじゃないか。貧乳最高」


 『わたしの身体はパックンだけのモノだ』


 ★☆★☆★☆


気が付くと、わたしはその部屋にいた。ミドリのライトで身体を照らされている。その部屋はやけにうすぐらかった。


気がつくと服は剥ぎとられていて、わたしは黒の下着を身につけている。


天井から縄で、うでを縛りあげられた。両手両足には拘束具が取りつけられ、わたしの自由は奪いとられている。少しも身動きできない様に、縄がしっかり肉体を縛りあげる。


冷たいはずの鉄の柱は、わたしの体温をすって熱を帯びている。それが身体をほてらせる。


『なんだこの場所は?本当に悪趣味・極まりない』


この理不尽な現実を受けいれられない。妄想のなかでいま・わたしは、パックンとワルツを踊っている。


看守の様なおとこがやってきた。ソイツはナチスの軍服をきている。片方の眼に眼帯をしていて、あまり眼は見えていないようであった。


耳もあまり聞こえていないのだろうか?訳のわからない独り言をひたすら連呼している。


「お嬢ちゃん。やっとおめざめですか?」


あんたに『おはようございます』と、いったところでどうなる?


「さっそくだけど、69について知ってることをおしえてもらう。もし拒むなら、その身体におしえてもらうことになる」


そういってそのおとこは、ひたすらムチを打ちつづける。肌にムチがあたりこすれ弾ける音と、わたしの悲鳴にならないその音が静かにその部屋にひびきわたる。


『痛い。本当に痛い。なにするのよコイツ』


その男は本当に狂っている。答えのない質問をわたしに投げかけては、答えられないわたしをムチで打ちたおすのだから。


わたしの口元はボールギャングでふさがれていて、最初から答える事ができない。そこから唾液があふれだし、ミドリの照明が身体のラインを浮かびあがらせる。


『こんな姿は絶対に、パックンには見られたくない』


ムチの音が鳴りやむことはない。そのおとこは容赦なくその行為をくりかえす。わたしは必死にもがいて抵抗するのだが、縄が身体に絡みついて身動きがとれない。


わたしは普段は強い女性を演じている。この競争社会で生きのこるためには、それが必要だった。涙と汗と唾液が混じりあって、それが身体を蒸しかえす。


わたしの感情はすっかりへし折られ、プライドのかたまりの高飛車おんなは、どこかに去っていってしまった。


深層心理の奥の奥にいるのは、乙女そのままのありのままの『わ・た・し』。


『パックン・はやくきて。わたしを助けて』


来るべきはずもない王子様の名前を心のなかで叫んで、わたしはそのまま意識を失ってしまった。

濡れ丸です。僕の番だけエロくてすいません。

イトウさん、本当にあんたエロいよ!!

最後までよろしくお願いします。

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