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おとぎ話の法則

作者: 嶋 月美



――ねぇ、知ってる?

    眠り姫は王子のキスで目覚めるんだ――



そんなおとぎ話を私は、幾つも聞いてきた。見てきた、そして感じた。

それはどれも華やかで、色があり

            当然のように非現実で。


でも、それが私にとっては心躍るものでいつかは……


「いつかは私も……」


そう、いつかは私もこんな風に好きな人と

     おとぎ話といったら可笑しいけど、そんなような何かをしたい。


――もし、その人が私を見えなくたって。

      この目の前すべての景色を見れなくたって



三木君が私と付き合い始めたのは、私からの告白だった。

恋愛に対しては積極的なせいか、すぐに言ってしまう癖がある。

そんな私の唐突な告白に三木君は驚きつつも、確かに頷いたのは最近の話。

そのときの三木君の少し赤い顔が、今でも忘れられない。

私まで赤くなってしまうほど、その表情が今の出来事のように焼きついてる。


そんな三木君は私が告白する前。

いつも一人で、いつも窓から外を眺めていた。

当然のように、まるで決められたかのように。


――見えるはずもない、景色を


そんな彼を私はクラスメイトとして見ていくうちに

そうとは見れなくなってしまった。

何で? 理由は簡単だった。


――彼の顔


おとぎ話の王子様は誰も彼も、かっこよく描かれている。

三木君も負けじと劣らず、クラス。

学年中でも通るぐらいの綺麗な人だった。

周りの子も、確かに三木君の顔の話題はよくしている。


「三木君って顔はいいのに、かわいそうだよねぇ。

              目が見えないなんて……」


私はもう一度、三木君のほうへと目をやった。


――顔がいいから私は好きになったの? 三木君を?


確かにそれは本当だけど、それだけじゃない。

それだけじゃなくて

   そうじゃなくて……


「三木君、私はね。違うの、三木君の顔じゃなくて違う場所を好きになったの」


帰り道、三木君の手をとりながらそんな事を呟いてしまった。

その日は妙に、陽が眩しかった。


「私、最初はそうだったかもしれない。三木君の顔が好きだったかもしれない。

 綺麗だもん、三木君の顔は。

 でも、そうじゃないの。今はそうじゃないんだよ……」


数えてしまえば幾つもあるんだ。


三木君は目が見えないながら、勉強をこうして一緒にしている。

確かに教室はそのときだけ違うけど

でも、それでもがんばっている。


この前も小さい子が走ってくるのを避けて歩いてたし

自分ひとりで、何事もしようとしているし

それに、それに……


「私はね、そんな三木君の……全部が好きになってたんだよ?」




最初におとぎ話のような恋愛をしたい。

できるなら、三木君と。


でも、もう私にとってそれはどうでもよかった。

むしろ、いらないぐらい。

だって……


――今、確かにこの手を繋いでいる。


それだけで私の胸はたくさんだから。

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