神さま特製ランダムボックス
「・・くっ・・なかなかやるな勇者よ。だがお遊びはここまでだッ!! 我が渾身のこの一撃、受けてみよッ!!」
そう目の前で黒髪の長髪男...自称他称その他諸々云々の暗黒の魔王が悪鬼の如くその口から鋭い牙を覗かせ、某少年漫画のように叫ぶ。
「ふははははっ!! 渾身の一撃とは大口を叩いたな! 既にそんな力も無いくせにッ!!」
そして勇者と呼ばれた悪役顔の男は自称他称その他諸々...以下略の魔王にも負けず劣らず真っ黒いオーラを纏いながら嘲笑する。
「フンッ! 貴様を道連れにする余力ならまだ残っておるわッ!!」
「はははっ! 生憎貴様に道連れにされる俺ではない!! ...という訳で歌音! 後は任せたッ!!」
「はッ?! ちょ、ちょっとなんでこっちに振るわけッ!? てか王さまと約束したのはあんたなんだからあんたが道連れになりなさいよッ!!」
「断るッ!!」
「断るなッ!! さっさと道連れになって来いッ!」
「却下するッ!!」
「却下する...あっ!? こら奏逃げるなッ!!
他人の如く傍観していたあたしに話しを丸投げした挙句、スタコラさっさと逃走したのは異世界に伴に召喚された双子の片割れ。
おい、こら。武器持って逃げんな。あたしに丸腰で戦えってか? そんなん無理。あたしはあんたと違って紙さま...じゃなかった神さまから祝福なんて受けてないし、神さま特製ランダムボックスから出て来たあたしの武器(?)はあんなんだし...て、ちょっとなに魔王、その笑い。
「フフンッ、怖気づいたか勇者よ。所詮その程度の実力でこの我に挑もうなど1000年早いわ!!」
「1000年早いわってそんな経ったらこっち死んじゃってますけど? てかそれ以前にそんなズタボロの姿で吼えられてもねぇ...」
「くっ...まさか姿形だけではなく横柄な態度までも同じだとは...」
「いや、だからそこは否定させて? 何から何まであんなんと同じだなんてホント嫌だから。マジでホントに嫌だから。出来れば大事なとこだから回数関係なしに言いたいけど!」
「フフッツ...よかろう! この魔王、勇者を道連れに死地の旅へと・・・!!」
「いや、だからね? ひとの話し聞いてる? 勇者はあっちであたしじゃないの。あたしを巻き込まないでくれる?」
「死にさらせーーーッ!! 勇者よーーーーッ!!」
「だーかーらーひとの話しを聞けって言ってんでしょうがーーーッ!!」
突っ込み体質のあたしは思わずポケットに入っていたそれを魔王目掛けて投げつけてしまった。それはそれはもう長年の癖...と言うか習慣の為にキレイなフォームでもって。そして...
そしてそれはキレイな放物線を描き魔王の腹へとジャストミート。
「...はっ・・さ・流石は・・勇・・・者・・・こ・・の我が負ける・・・とは・・・・」
あたしが投げた神さま...以下略の武器(硬式ボール)が腹に直撃し、魔王はそのまま壁へを吹き飛ばされる。
その後、最後の力を振り絞ったのか掠れた声を残し魔王は自身の命を奪った硬式...以下略を残し、霞となってその場から消えて行った。
それから数百年。その硬式ボールは聖なる武器として神殿で大切に保管されたと言う...






