あたしが一体なにをしたッ?! 中編
「まったく、レーナの言う通りだ。一体いつまで黄昏てるつもりだお前は。いまはレベルを上げることに専念しやがれ。つうことでほれ、そこのスライムをとっとと倒せ。」
間髪いれずに続けられた野郎の冷たい言葉とともに、レーナの魔法でもって嫌々ながらあたしはスライムの前まで追いやられる。ぷるぷるとプリンの様に、いやこの場合はゼリーか? なんて疑問を感じつつ、そんな動きを見せる水色の物体に仕方なしに視線と握りなれない剣を向け、掛け声と共に切りかかる。すると・・・
――テケテテッテッテ~ン。
間の抜けた音と共に、右上上空にテロップが出て来てステータスが表示された。そこにはあたしの名前、性別、年齢。そして各種の経験値及び装備が表示されている。
「やっとLv.10か。やっぱちまちま稼ぐにしても限度があるな。」
「そうねぇ、やっぱりここは大物ねら――「わなくて良いですからッ!!」
レーナの言葉に瞬時に反応し、あたしは言葉を被せる。続く言葉が容易に想像できて聞きたくない。ってかそれ以前に全力で持って拒否させてもらう!!
「あら、大丈夫よ。あんたには止めを刺して貰うだけだから。」
『別に死にはしないわよ?』なんて軽く言ってくれるが、まったく持って冗談じゃない。あんたたちと違ってあたしはまだまだ初心者なんだ! HPだって少ないし、ちょっとしたことでやられちゃうんだよ?! 体力だって無いし、攻撃力だって無いに等しいのに、そんな無茶振りは止めてくれッ!!
「って思ってんのに何でこんなことになってんのッ?!」
どこでも○アならぬ、レーナの転移魔法発動により足元に魔方陣が現れ、一瞬にして魔物が徘徊する森へと師匠こと、ヴァルツと共に移動させられていた。
太陽の光が森の奥まで届かないのか、鬱蒼とした木々が所狭しと枝を伸ばしている。そして前門の虎、後門の狼...ではなく、それよりももっとヒドイ状態の四面楚歌でやはりあたしは叫んでいた。力いっぱい、全身全霊、それこそ大声で、
「だからあたしが一体なにをしたーーッ?!」
そんなあたしの心のからの叫びは周りを取り囲む魔獣たちには一切通じず、ましてやそれ以前にヴァルツやレーナにも通じてはいなかった。