あたしが一体なにをしたッ?! 前編
青く晴れ渡った大空、そして流れ行く白い雲を仰ぎ見ながら心地よい微風を頬に受け...ってこんな感じの歌が在った様な無かった様な...何てまあ何にせよ若草色の絨毯と言う名の大草原に視線を移しつつ心の中で自分自身に突っ込みを入れる。そんなあたしの名前は安住乃亜。
ちなみに高校2年生...に進級したのは遥か昔、今のあたしは――...あぁ、なんか目からしょっぱい水が...あ、なんか鼻からも......
ぐずぐずと鼻を鳴らしながら薄汚れた袖で目元を拭うと再び物思いと言う名の回想に耽る。
いま現在、自分が存在しているこの世界はひと昔前に流行ったRPGのオンライン・ゲーム。魔法や魔族、ましてや魔王なんてものが存在するゲームだったのを記憶している。まぁ、なんにしてもあまりにもへたっぴで何度もリトライしていたので覚えていただけなのだが。ちなみにヴァーチャルなどではなくもろリアルな世界。怪我をすれば血を流すし、へたすれば死んでしまう。
そんなリアルの世界の住人に為ってしまったあたしは気が付くと、何時もの如く何時もの台詞を口癖のように叫んでいた。
『あたしが一体なにをしたーーッ?!』
と―――...
強いて言うならば通算34回目のリトライ後、自棄を起こしたあたしはログアウトせずにダイブするために着けていたゴーグルを放り投げた。そのゴーグルが本体のゲーム機に当たり、ゲーム機がバグを起こしてしまったのが原因だ。決してあたしが投げたゴーグルが打つかってバグが起きた分けじゃない! そうとも! ログアウトしなかった所為でこうなった訳でもない! ...はずだ。
リビングの大型テレビがフリーズ...本体は動いているがログオフが完了出来なくなったあたしはまぁいいや、なんて軽い気持ちで本体の電源をオフ。所謂強制終了だ。そう、強制終了したのと同時になぜかあたしの意識もブラックアウトした。
―――そして現在...さよなら現実、こんにちは異世界状態になっていた。...うん、分かってます。自分が100%悪いってのは認めます。えぇこの際認めますとも! しかし...しかしだ。やはり叫んでしまう自分が...
「――はい、そこッ! いつまでも叫んでないでちゃっちゃと手を動かすッ!!」
凛と響くような声が後方から発せられ、あたしの思考は中断した。