表示調整
閉じる
挿絵表示切替ボタン
▼配色
▼行間
▼文字サイズ
▼メニューバー
×閉じる

ブックマークに追加しました

設定
0/400
設定を保存しました
エラーが発生しました
※文字以内
ブックマークを解除しました。

エラーが発生しました。

エラーの原因がわからない場合はヘルプセンターをご確認ください。

ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
アルティロイド―究極の生命体―  作者: ユウ
故郷を燃やして~母へ~
81/97

11,黒騎士の正体

 ――今から数十分前の事。ティアナの治療も終了し、最後の墓参りも済ませた。ここから旅立てば、しばらくはサンバナ近辺には戻ってこない為、ティアナは特に念入りに手を合わせている。

 次に向かうのは、デスクロウム火山地帯。過酷な環境であり、辛い旅が想定される場所である。シンラは何があってもいいように、持ち物の整理をしている。

 そして女性陣が、各々の行動をする中で、たった一人、カルマンだけは何かを言うわけでもなく、無言のまま突っ立っていた。

 勿論、ただ立っているわけではない。考え事あっての事である。あまりに真剣に無表情である為、ティアナもシンラも、声をかけにくい状況でもあった。

「お待たせしました」

「あら、もう良いのかしら?」

「はいっ、伝えたい事は全部伝えましたから!」

 和やかに話す、ティアナとシンラ。しかしそんな声も耳に入っていないのか、相変わらずカルマンは動かない。

 目を瞑っている事もあって、ぱっと見ると寝てるようにも見えてしまう。しかも立ちながら。

「ねぇ、準備よろしいらしいけど……そろそろ行かないかしら?」

 シンラは柔らかく、カルマンに呼び掛ける。

 それに目を見開き、

「あぁ、そうだな」

 と、静かに一言だけ口にして、ゆっくりと歩き出した。だがその途端、ゆっくりした歩き出しとは対称的に、急に立ち止まる。

「どうしたんですか、師匠? さっきから変ですよ」

「……お前ら、ゆっくり先に行っていろ。俺は後から追いかける」

 あまりに突然すぎる、カルマンの言葉。当然、ティアナとシンラは、その言葉の真意が読み取れずにいる。

「――じゃあ、先に行ってましょうか、ティアちゃん?」

「えっ、でも……」

 渋々と歩くティアナを、半ば強引に急かすシンラ。アイコンタクトを取ると、カルマンは大きく首を縦に振った。

 二人が見えなくのを見届けると、その目線を、ティオの墓に向ける。

「さて……来るかね、ティオ」

 答えの返ってこない墓に、そう呟いてみる。当然だが、その問いかけに対する答えが、返ってくるはずもないのだ。死者の魂は存在するだろう。しかし、死人に口なし、なのだから。

 軽い溜め息を吐き出し、カルマンは少し離れた草むらにしゃがみ、そっととある存在を待ち続けた。

 

 ――一体どの程度の時間が流れたのかはわからない。たったの五分なのか、十分なのか、あるいは三十分か、一時間は経過したのか。時を計る手段を、カルマンは持ち合わせていない。だが、待ち続けた甲斐はあったのだ。

「……来たな」

 巨大な機械腕を持つ男の、残された左目には、確かに待ち続けた存在が映る。

 全身を黒で覆い、特徴的な黒き仮面、そして黒き剣――そう、つい先程まで、ティアナの命を狙い、そして戦っていた黒き騎士――クロディアンである。

 気配を消している為か、黒騎士はカルマンに気付いてはいない。だが黒騎士ほどの実力者が、全く気付いていないものだろうか。あるいは意識を他に集中している、何かがそこにある。

 後者の推理ならば、「何か」の正体は目の前にある。そうティアナの墓であり、友人でもあったティオの墓である。

 そして、カルマンの推理が正しければ、黒騎士にとっては、友人以上の存在である。

「よぉ、遅かったじゃねぇか?」

 カルマンが黒騎士に話しかける。本当に気が付いていなかったのか、黒騎士は少々驚いているようにも見える。

 しかし、すぐに気を落ち着かせたのか、冷静という感情が手に取るようにわかる。冷静、という言葉が正しいのかはわからないが、ただ一つ言えるのは、黒騎士から伝わってくるものは、圧倒的な冷たさというだけである。

「……何の用だ?」

 仮面を通して聞こえてくる、ノイズが混じったような声。だがその声は、確実にカルマンへ向けられていた。

「何の用だ? その言葉をお前に貰うのは心外だな。うちの子を危うく殺されそうになったんだ、そこまでいったら保護者が出るのは当然だろう?」

 返された言葉に、黒騎士は無言だった。そしてそのまま無言を続ける。

 反応がない事に、少しながら痺れを切らしたのか、カルマンは苛立ちながら溜め息を吐き、その勢いのままに口を開いた。

「今のお前の心理はわからんが、あの子にあんな真似をしたって、過去の事がなくなるわけじゃない、それはわかっているんだろう!?」

「過去の事……ふっ、わからんな。貴様の過去と我が過去、何の関係があるというのだ? 今の我は黒き騎士クロディアンと呼ばれている存在だ」

 カルマンは苛立ちどころか、苛々していた。目の前の人間は、カルマンの質問に答えようとしない。それどころか出てくる言葉は、問いとはあまり関係のない事だからだ。

 だが事実はそれだけではなかった。口論による駆け引きにおいて、話をはぐらかす行為など、最も軽率で簡単な行為だ。

 つまりカルマンにとって、どうしても苛々させられるものがあったのだ。そしてカルマン自身は、その正体に気がついている。

「あぁ、そうかい。ではクロディアン、俺の言葉に答えてはくれないか? あの子に手は出すな、あの子をお前が殺しても、そこに眠る少女は蘇りはしないし、何よりも根本的な事は一つも解決なんてしないんだ」

「根本的な解決? 何の事だ、私はただ断罪の剣を持ち、罪を裁くのみ。罪人を全て裁き斬れば、いずれ罪人は消えよう。貴様が連れていた少女は、かつてティアナと呼ばれた悪魔の欠片なのだ。多くの人間を殺し、多くの恐怖を与えた、この悪魔の欠片は大きすぎる罪を持っている。だからこそ裁かねばならない」

「その悪魔という個体が、そこの墓に眠る少女だ。なら何でお前は、その悪魔に花を添える? それに多くの命を奪った事に対する罪ならば、俺にもある。今までで数え切れない命を、たくさん奪ってしまった。ならば目の前にいる俺に、その断罪の剣を振るってみろ!」

 お互いに話の中に、個人的な感情がこもってしまっている。

 カルマンは言葉通り、黒騎士の持つ剣――オルグナードの裁きを受けようと、大の字になり立ち続ける。 だが黒騎士は何の行動も取らずに、ただ黙って見たままに何もしなかった。いや、何もできなかったのかもしれない。決してカルマンの気迫に圧されたわけではない。

「――やれないのか? そうか……少しは安心したぜ」

 いつまで経っても斬ろうとしない黒騎士を見て、カルマンは体勢を戻した。体勢を戻した後も、黒騎士は断罪の剣を抜く気配もない。これには言い出したカルマンも、内心安堵していた。

 罪人を裁くと言いながら、それを実行しない黒騎士。この行動が、黒騎士=無差別殺人鬼、という図式を、少しは緩和していたのだ。少なからずカルマンにはそう思えた。

「さて……少しはお前に、人間の心が残っているようで良かった。なぁ、クロディアン――いや、元ティーダ、と呼ぶべきか?」

 言った人間、言われた人間、それを見守る人間、三者の間の時間は、一瞬でも止まったかのように見えた。

 ただ黙って動かなかった黒騎士も、この言葉に僅かながらの動きを見せる。それは常人ならば、気が付かないくらいのものだ。しかし、その点にかけては目が肥えているカルマンにとって、その反応を見破るのは造作もない事である。

「図星か、どうなんだ、ティー……――」

「――我はティーダではない。我はクロディアン、断罪人なのだ」

 カルマンの言葉を遮るように、今までの口調とは違う、やや激しい口調で黒騎士は言う。明らかに困惑していた。

 そしてそれとは対称的に、カルマンは極めて冷静だった。

「どうしてそんなに声を荒げる? 仮にクロディアン殿がティーダだとしても、お前が違うというのならば、今まで通りに黙秘を続けていれば良かっただけの事じゃないのか」

 黒騎士は再び黙り込んでしまう。何を考えているかまでは、その黒き仮面のせいでわからない。ただ少し俯き加減の顔は、明らかに何かに迷っているのだ。

 その決断を鈍らせないように、カルマンもそんな黒騎士の動向を、静かに見守り続けた。

 ――数分後、黒騎士の手はゆっくりと、自身の仮面へと向かっていく。そしてゆっくりと、本当にゆっくりと仮面をはずしにかかる。少しずつでも見えてくるのは、仮面の中に収納されていたであろう、外部に見える以外の髪の毛。当然、外部の髪と同じように黒髪である。そして、ついに仮面は全てはずされた。

 そこにあった顔は、歳月の経過により多少の老化はあるものの、確かにカルマンの知っている顔だ。

「……やっぱりお前か、ティーダ」

 カルマンの目の前にいる黒騎士――クロディアンの正体。それは紛れもなく、かつて共に過ごし、共に戦った男の姿(ティーダ)だった。

「何故、わかったんだ?」

 声もノイズ混じりの声ではなく、確かにティーダの声である。

 ティーダの問いを聞き、カルマンは鼻で笑う。

「俺がお前に気が付かないとでも思ったか? 一見すると完璧に偽装してはいるが、お前の行動には決定的なものがある」

 反論する事もなく、ティーダは先ほどと同じように、ただ黙っている。

「その決定的なものっていうのが――いや、ここで話すのはよそう。ティーダ、せっかく会ったんだ、少しは付き合えよ?」

 ティーダは目を瞑り、少し考えた素振りを見せてから、

「……良いだろう」

 と、淡々と答える。

 カルマンが向かおうとした先は、前日にシンラと酒を酌み交わした酒場である。誰にも邪魔される事のない場所で、カルマンはティーダと話がしたかったのだ。

 そして何よりも少女(ティオ)の眠るこの場所で、物騒な話はしたくなかった。

 カルマンが横目で墓を見ると、ティオの魂という幻影が、オロオロしながら二人を見ているようでもある。カルマンは左の人差し指で、軽く頭を掻いた。

(大丈夫だよ、ティオ。何も喧嘩しに行くわけじゃない。ちょっと昔のダチと思い出話するだけだ。だから心配するな、ティーダは俺に任せてティオはあの子を見守っててくれ)

 それが伝わったのかはわからない。だが伝わったと思いたい。生者と死者は会話はできないが、思いだけは繋がっていると思いたい。

 そしてカルマンとティーダは、サンバナの町へと向かっていく。

「あの世の役者達」


デュ「どうも皆様、おはようございます、こんにちは、こんばんは。久々に登場しましたデュアリスです。以降の略称は『デュ』になります」


ロビ「オレ ロビン」


ティ「私はティオ――って、略称がティアナのティと被ってないですか?」


ソリ「ちなみにソリディアだ。ふむ……まさか久々の登場が、死者の会合とは……」


ティ「一応言っておくけど、私は第二部のラスボスのティアナだからね! ちょっとティオ、略称が被るから変えなさいよ!」


テオ「えっ、ちょっ、……あー、変えられてるよぉ……」


デュ「でもテオって、どこかの某狩りゲーに出てくるモンスターの名前みたいでかっこいいですね」


ソリ「ほぅ、デュアリス君は某狩りゲーやっているのかね? それは奇遇だ、今度一緒にやらないかね?」


デュ「えぇ、是非! 某狩りゲーだけじゃなくて、某神喰いゲーとか、某PSシリーズとかもやっていますよ」


ロビ「デュアリス ゲーマー」


ティ「まさかおとなしい感じのデュアリスが、ゲーマーとはね……一般的にいう女オタク、腐○子ってやつ?」


テオ「ティアナ、ちょっと言い過ぎ……」


ソリ「むっ、ティアナ君、オタクとゲーマーは違うぞ!」


デュ「そうですっ、オタクとゲーマーは違います!」


テオ「えぇ!? 何でみんな熱くなってるの!? 収拾がつかないので、強制終了お願いします!」

評価をするにはログインしてください。
この作品をシェア
Twitter LINEで送る
ブックマークに追加
ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
+注意+

特に記載なき場合、掲載されている作品はすべてフィクションであり実在の人物・団体等とは一切関係ありません。
特に記載なき場合、掲載されている作品の著作権は作者にあります(一部作品除く)。
作者以外の方による作品の引用を超える無断転載は禁止しており、行った場合、著作権法の違反となります。

この作品はリンクフリーです。ご自由にリンク(紹介)してください。
この作品はスマートフォン対応です。スマートフォンかパソコンかを自動で判別し、適切なページを表示します。

↑ページトップへ