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アルティロイド―究極の生命体―  作者: ユウ
アルティロイドⅢ~星屑の光のように~
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第三部――プロローグ

 一年前に起きた――第一次支配開放大戦――。

 一ヶ月前に起きた――第二次支配開放大戦――。

 城国に支配される、地上の人々が、自由を勝ち取る為に行った戦争の名前である。

 結果は、二つの戦争とも地上レジスタンス軍の敗北に終わる。この二つの大戦の敗北の影響により、地上人口は、大戦前に比べ七割の人口を死に至らしめるという結果になった。

 城国に逆らう勢力は、事実上消滅し、レジスタンスという反城国勢力は壊滅。人々は、城国に弾圧されながらも、残る余生を蹂躙(じゅうりん)されながら送っていく事しかできない。


 ――大戦から三ヶ月後のパーシオン。

「そうか……行くのか、カルマン?」

「はい、申し訳ないですけど、ね……」

 カザンタ山岳地帯の洞穴を、基地として数十人が暮らしていたパーシオンというレジスタンス。

 そこにいたのは、ハリス兵士長という両眼に包帯をした男と、カルマン元副兵士長という、右腕に巨大な機械腕を備える男がいる。

 ハリスは、三ヶ月前の第二次支配開放大戦時、『ティアナの悪夢』が発生した近くにいた。ティアナという、悪魔の放った黒桃の光は、彼の眼から光を奪っていった。

「仕方がない、さ……事実上、パーシオンも壊滅だ。どこか大きなレジスタンスや町に移動して、あとはひっそりと暮らしていくしかないさ。……悔しいけど、もうどうしようもないしね」

「――それでも、それでも俺は、どうしても諦めたくないんです。ティオが託したこの子を、ティオが誰よりも望んだ未来を……俺は諦めたくないんだ」

「ふふふ……そういえば、カルマンはティオちゃんの事が好……ごめん、失言だった」

 ハリスはカルマンに頭を下げて謝った。

 カルマンは、ふと振り向く。その視界に映るものは、パーシオンの出入口である。カルマンにとっては、みんなと過ごした思い出の場所だ。そして、その思いを振り切るように、強く眼を瞑る。

「じゃあ、俺、行きます。今まで……ありがとうございました!」

「達者でな、あまり無理はしないように。辛かったら……いつでもやめれば良いんだからな?」

 カルマンは、そう言ってくれるハリスに、深く頭を下げた。

 そこから少し歩いていくと、数十はあるだろう墓が見えてくる。その内の一つの前で立ち止まると、背中に背負っていた、まだ赤ん坊と呼べる子供を見せる。

「ほら、ティアナ。この人がお前の母さんの、育ての親だぞ。そして俺の尊敬する師匠だ」

「あー……うー……」

 ソリディアの墓。

 それを見た、ティアナと呼ばれた赤ん坊は、何を喋っているのかはわからないが、小さな動きを見せた。

「はっはっは! 悪い悪い、ちょっと難しかったな? ……さて」

 カルマンは赤ん坊を再び背負い、ソリディアに向かって敬礼をした。

「ソリディア兵士長……いや、ソリディアさん。行ってきます! 出来損ないな弟子かもしれませんが、精一杯にやってみます。どうか……どうか見守っていてください!」

 そして意を決したように、カルマンと赤ん坊は、カザンタ山岳地帯から下山していく。


 ――そして十五年の歳月が流れ、物語が再誕する。


 アルティロイドⅢ~星屑の光のように~

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