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アルティロイド―究極の生命体―  作者: ユウ
使者~最後の団結~
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25,少数精鋭突破作戦

 ――雨は降り続けている。

 辺りは曇り空。太陽が隠され、どんよりと重く、そして暗い。

 この理由は天候のせい、というわけでもないのだろう。サンバナに終結した、近隣レジスタンスのリーダー連中。そこに住む、一般の人間からすれば、不安を煽られる雰囲気だろう。

 ティーダとハリスは、サンバナの町に到着すると、真っ先にハインズの下へ向かう。

 一つ、目に入ったものは、一般人からの兵士志願者を、募っていた事だ。あくまで志願者を求めているだけで、徴兵ではないものの、過去にこのような事がなかった、ハインズという人間からすれば、あまりにも珍しい事だといえる。

 恐らくだが、これからの流れによっては、強制的な徴兵もあり得るのだろう。思えば辺りを見回すと、一早くそれを悟った人が、逃げ出す準備をしていた。しかし、ここから逃げ出しても、どうしようもない事が、わかるのだろう。遠目で見ても、酷く鬱になっている。

「凄いな……どの人も、前の大戦で見た事がある人ばかりだ……」

 既に圧倒されてしまっているハリス。前回は、ソリディアの影にいれたからこそ、冷静でいられたのだろう。

 だがハリスは逃げられない。逃げるわけにはいかない。パーシオンを代表してここに来ているからだ。

「――えー……皆様、本日はお集まりいただき、誠にありがとうございます」

 挨拶に出てきたのは、いつも見る美人秘書。社交辞令をするのも、様になっているあたり、流石だと感じさせる。

 そして、社交辞令の後の本題の内容。それは中に入れるのは、組織中で最大二名まで、という事だ。当たり前の話だが、レジスタンスによっては、ここへ来るのに数人で来ているところもある。それら全ての人が、建物の中に入れるわけがない。

 元々、二人で来ていたパーシオン陣営は、対して悩む必要はないが、周りを見ると人選にかなり頭を使っている団体が、ちらほらと目につく。

(……こんな事で頭を使って、先が思いやられるな)

 段取りが悪いとは、まさにこの事なのかもしれない。事実、全団体が人選を完了するまで、数十分を要した。優秀な指揮官のいるところは、とっくに人選し、早々と建物内に入っている。

 ティーダ達も中に入ると、早速、秘書から手拭いを渡される。よく見ると、雨の影響もあり、床は泥だらけになっている。

 そしてそのまま、秘書に誘導され歩いていくと、いつもとは違う部屋に案内される。それはさながら会議室。

「凄いな、ハインズ町長は……。まさか、こんな部屋まで用意しているとはね」

 呆気に取られているハリス。だが確かに、外観からは想像もつかない、その広さは圧巻の一言だろう。

「――キョロキョロすんなや。田舎者丸出しだぜ?」

 突然の声に、振り向くとバースが立っていた。

「ば、ば、バースさんっ、あのコロセオンの!」

「おう、元気にしとったか? ソリディアんとこの若いの。今はお前がリーダーか」

 ただでさえ落ち着かなかったハリスだが、バースの出現により、更に困惑の色を強める。

「バース殿、あまり若いもんを、苛めてはいけませんよ?」

 次には後ろから、北のレジスタンスの、正に代表格。ザードリブのラックが登場する。

「おう、北の……これは苛めではなく、可愛がりってんだ」

「待たせたな、諸君」

 そして、トドメと言わんばかりに、ハインズ町長が姿を現した。

 ハインズ町長、南の代表格バース、北の代表格ラック。あまりにも強大な三人に囲まれ、ハリスの意識は無くなりかけている。

 ハリスの視界は、きっと真っ白になって、何も見えていないのだろう。

「皆様、小娘ですが、どうか宜しくお願いします!」

 最後に聞こえたのは、覚えのある声だ。その正体は、東の大地からやってきた、エスクード城のフィーネだ。

 やはりというべきか、中に入ったのは、フィーネとノリヌの二人だ。

「素晴らしい……我が南のサンバナ、北のシュネリ湖、東のエスクード城。世界は一つになりつつある。少なからず、私はこの光景を見て、そう思わずにはいられない!」

 ハインズは本当に嬉しそうにしている。そのハインズに釣られて、兵士達にも、活気がみなぎっていくのを、感じられるのだ。

 ――程なくすると、会議は始められた。まずは一部しか知らない、第二次支配解放大戦の事を話す。

 ここで全員の反応で、意外だった点は、大方予期していたのか、驚いた人間の方が少なかった事だ。最も、北の人間も合わせての、大会議となると、勘の良い人間ならば、その内容も予想がつく、といったところだろう。

 第二次大戦。この事実については、大した批判もなく、話は順調に進んでいく。これも意外な点だった。ハインズは、突然の取り決めに、もう少し反発があっても良いと、覚悟をしていたからだ。

 そして、その反発の切り札に、先日のバースとバゼットの、戦いによる結果、というものを用意していたのだ。

 反発が無かった事には、これも予想がつく。それはここに集まった人間が、レジスタンスだからという事。戦って勝たなければ、地上に勝利はない。この事実を重々承知している、これが大きな事だろう。あとは、前大戦における、ハインズへの信頼だろうか。

 続いて、大まかな日時の取り決め。前回はソリディア、バースの戦友『策略家クリム』の作戦により、半ば強引な日時取り決めになっていた。

 だが現在は、そのような事もない為、ある意味では悠長に構えていられる。勿論、そこまで気長にやってる余裕もないのだが……。

 戦力は万全を期するべきであり、ここは全員の意見を聞こう、という事になる。特に重要なのは、北との日時合わせである。その距離の違いから、一旦別れると、連絡を取るのが容易ではない。

 ここは北の代表でもある、ラックが日時提案をする。その結果、現在より四十日後と決定する。万全を期する割には、短い猶予だが、元々北の被害は、大した事はなく、いつでも大戦を起こせるように、各自で準備をしていた事が大きい。

「ありがとうございます。北に住む貴方達が、ここまで万全を尽くしていてくれたおかげです」

 ハインズは深々と、頭を下げてみせる。準備に関しては、予想よりも良い方向に進んでいて、ハインズとしても肩の荷が少し下りた感じだろう。

「さて……後は攻撃に関する具体的な作戦になりますが、私は前大戦と同じようにいきたいと思っています」

 ハインズが言う。前大戦と同じ、とは、先に戦力で勝る南のレジスタンスが、城国に攻め入り、北のレジスタンスが、それをサポートする。但し今回に至っては、戦力で勝るのは北側といっても良い。

「南は前大戦で、多くの戦力を失ったと聞いています。その先制攻撃は、我々、北のレジスタンスに任せてもらうべきではないですかな?」

 これを北側の代表、ラックが反論する。

「確かに……数という一点に関しては、今現在は南よりも北に軍配があります。しかし、私には一つの自信が……あります!」

 一息の間を開け、力強く言葉を出す。ハインズは、ほんの一瞬だが、ティーダとバースを見た後、エスクード陣営に目を向ける。

「貴方程の人が、自信がある、とハッキリ言うくらいです。信用はさせてもらいますが、一体その自信の裏側が、どのようなものなのか、それぐらいはお聞かせ願いたいですね」

 ラックの質問は、非常に納得のいくものだ。ハインズの自信の正体を知っているものは、極一握りであり、知りたいと思うのは、南も北も関係無く多いはずなのだ。

 実際、ハインズが周りを見ると、次の言葉を待つ期待の眼差しが、一点に向けられている。

「ごほん……そこまで期待されると、自信がなくなりますが、言っておきましょう。まずは話を戻して、攻め方です。城国は、城というには非常に特殊な形をしている、それはこの世界に住む誰もが知っている事と推察しますが――」

 そう、城国――シャングリラキングダムは、一般的な城の形状をしていない。それは元来、城国は天空にあるとされる、理想郷に辿り着く為に人間が建てた、いわば塔のような形状をした建物だからだ。

 それ故に、横の面積は事実上、広くはなく、高さに関するものだけが、目を見張る必要がある。攻撃できる範囲は、縦に大きい分、その一点に関して広い。

 だが城国に大雑把な攻撃を、仕掛けられない理由もある。それは城国の巨大さにある。雲の高さを越える城国が、例えば倒れようものならば、それだけで地上には大きなダメージとなる。

 それに一次大戦時に、クリムの策略により、城国を内部から爆破してみせたが、倒れる事はなかった。つまり、細身の塔のような外観の割に、その防御力と耐久性は極めて高い。内部および外部からの攻撃に耐える建造物。そうなると、人間が内部から制圧するしかなくなってくる。

 そして一次大戦時もそうだったが、城国は横に関しては非常に狭い。これが地上軍の兵士が、内部に侵入する事に手間取った、大きすぎる理由となっている。故に城国制圧の、鍵となるのは物量で攻めるのではなく、単騎で圧倒的な戦闘力を持つ兵士による、少数精鋭一点突破作戦となる。

「一点突破をする限られた兵士の有無。これが我々、南側を先行させる理由になります」

「ふぅむ……確かに。北側は今となっては、数こそ南に勝る。しかしそれは消去法に等しい。それにハインズさんの言う、一点突破を可能とする兵士の有無……これもいないというのが、正直なところ。――しかし、お言葉ですが、それは南も同一条件といっても、過言ではないでしょう。私の知るところで、バース殿とティーダ君、この二名しかいない。それに前回はソリディア殿もいた。とてもじゃないが、成功するとは思えない……」

 この反論も、ハインズには予測済みであり、この程度の事では、自信は揺らがない。

 前大戦の有力戦士は、ティーダ、ソリディア、バース、クリム。事実上、大戦の英雄による編成が大きかった。普通に見れば、三大英雄でも勝てなかったのに、戦力が半分になっては、勝てるものも勝てない。誰もがそう考える。

 だがハインズは見ている。大戦の英雄の中でも、単純な戦闘力に関して、一番だといえるバースに、わずか二十秒で勝ってみせた、騎士の存在を。不謹慎な事だが、ソリディアとクリムの抜けた穴を、補うには充分すぎる戦力だ。

「皆さんが、そう言うのは最もな話です。ですが私は目撃しているのです!」

 真相を知らない全ての人間が、露骨に「何をだ?」という顔をする。そんな中、バースだけが舌打ちをする。

「あの軍神バースを、たったの二十秒で倒す男の存在を!」

 これには、大きなどよめきが起きた。軍神バースは、東西南北を問わず、その名が知れ渡っている人間だ。その男を二十秒で倒す男、素直に驚く者もいれば、疑う者もいる。その反応はまさに様々。

「ほ、本当なのですか? 貴方ほどの方が、やられたというだけでも、信じられないものがありますが……」

 ラックは冷静に、バースに問いただす。ハインズを疑うわけではないが、やはり本人に事実確認をするべきだ、との判断だ。

 バースは、力強い大きな舌打ちの後、口を開く。

「……あぁ、間違いねぇよ。認めたくねぇが、奴は強い。いや、強すぎるくれぇだ」

 本人の認めた言葉を聞くと、どよめきは一気に歓声へと変わる。困惑していた兵士達が、一気に強気になる。本来は嬉しい事なのだが、バースはどこか気に食わなかった。

「なるほど。そこまでの兵士が、南にいるのならば、先発を任せさせていただきましょう。前大戦と同じく、我々北側は援護にまわります」

 これで第二次大戦への、大まかな取り決めが終了する。作戦の開始は、現時点より四十日後。

 急遽行われた会議だったが、各々の備えにより、それは現実的なものになった。再び、城国と戦おうと考えていたのは、ティーダやハインズだけではなかったのだ。

 地上に住む、ほとんどの人間が、城国の――王の支配時代終焉を望んでいる。


「いやぁ……息が詰まりそうだったよ……」

 外に出ると、開口一番の台詞が、ハリスから出る。余程息苦しかったのだろう。何度も深呼吸をしている。

「――よぉ、ティーダ。それにハリス兵士長殿」

 後ろからの声に振り向くと、そこにはフィーネを筆頭に、ノリヌ、オルテンシア、バゼットが立っていた。話しかけたのは、オルテンシアである。

「会議お疲れ様でした。あんなに大規模だとは思っていませんでしたから……さすがに緊張しました」

「あははは……そうですよね。急に召集したのに、あんなに集まるなんて、ハインズさんの人望は凄いですね」

 フィーネが話しかけてきたので、ハリスは口調穏やかに、当たり障りなく会話を進める。

「じゃが確かに、じゃ。第二次大戦……大戦と呼ばれるぐらいの、大きな戦争なのに、拍子抜けするぐらいにあっさりと終わってしまったのぅ。ワシは少々不安になるわぃ……」

 珍しく大人しかったが、ノリヌも作戦会議に参加している。だが頭が働く者ならば、ノリヌのように考えるのは無理のない事だ。

「地上の取り決めは、いつだって大雑把だ。そもそも遠くの人間と、連絡を取る手段も確立されていないからな」

 ティーダは城国と地上の、科学力の差を感じていた。城国内部では、当の昔に無線機などによる、遠方への連絡手段が確立されている。

 仮の話だが、地上に連絡手段となる何かが存在していたのなら、城国との戦いは少しでも有利に進められただろう。

「ハリス兵士長、ティーダさん。私達は戦いの日まで、ここで待機します。どうやら同じ考えの方々は、多いみたいですので」

「そうですか。私達、パーシオンも、決戦が近くなればサンバナに移動します」

「では、その日まで、しばらくのお別れになりますね」

 軽い挨拶と握手をして、ティーダとハリスは、フィーネ達と別れた。さすがにレジスタンスの兵士が集まっている為か、来た時よりも人が多く、騒がしく感じられる。

 それに降り続ける重苦しい雨が、更に鬱陶しさを増している。

「こう……賑やかなのは良いんだけど、サンバナに活気が出ると、否応なしに戦争への覚悟をさせられるね……」

 誰に話したわけでもない。ハリスの独り言か、あるいはティーダに向けてのものだったのか。

 ティーダも何となくだが、話したい気分でもなかった為、返事をする事はなかった。

 結局、サンバナの町に居残っても、何もする事がない二人は、とっとと戻った方が得策だと判断する。真っ直ぐに道を進み、出口に到着すると、突然、ティーダは何者かに掴まれる。

「やっぱりティーダさんだっ、こんにちは!」

「お前、ケイン!?」

 何故か、ザードリブ所属のケインがここにいる。恐らくは、ラックにくっついてきたのだろう。

「ティーダ、知り合いかい? なら僕は先に戻っているから、ゆっくり話せば良いよ」

 ハリスはティーダを残し、先にパーシオンへと帰っていく。

「……やれやれ。ケイン、お前がどうしてここにいるんだ?」

「はいっ、ラック兵士長が、勉強になるから見ておけ、と。僕も有名なサンバナの町には興味があったので、丁度良いかなっと」

(……やはりか)

 ティーダは内心、ため息をついた。

「しかし大きな町ですね、ザードリブとは大違いだ!」

「ケイン、ラックはどうしたんだ?」

「えっ? ラック兵士長なら、会議が終了した後も、大柄な人と、偉そうな人と一緒に何か喋ってましたよ」

(恐らくはバースとハインズか。細かい作戦などは、上に任せておいても、大丈夫だろうな。俺達がどうこういっても仕方がない)

 今度は本当に、ため息をつく。

「ケイン、俺はもう行くが……あまり周りに迷惑かけるなよ?」

「はいっ、了解しました!」

 とびっきり元気な敬礼で、返事をするケイン。雨でずぶ濡れだが、そんな事は元気で関係ないのだろう。


 第二次支配解放大戦。

 人々が望み望まなかったその戦争は、残り四十日というカウントダウンに入っていく。今度こそ、敗北は地上全体の死を意味するだろう。しかし待っていても、いずれは朽ちていく大地。勝たねば未来はない。

 ――大戦まで、残り四十日。

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