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アルティロイド―究極の生命体―  作者: ユウ
再会~止まったままの時間~
52/97

13,初恋にさようなら

名前 ティーダ

種族 アルティロイド

性別 男

年齢 17

階級 火の騎士

戦闘 2900/業火 3200

装備

E炎帝・ヴェルデフレイン

Eティーダ専用戦闘防護服

Eクマンバのマント

E火の聖獣エンドラ


名前 カルマン

種族 ヒューマン

性別 男

年齢 17

階級 パーシオン副兵士長

戦闘 900

装備

E鋼の剣

E戦闘用防護服


名前 ティオ

種族 ヒューマン

性別 女

年齢 16

階級 一般

戦闘 100

装備

E赤いゴム紐

Eデュアリスのピアス(水氷のピアス)

Eワセシアの花飾り


※実はティーダ達の年齢が、「理想郷」の頃より一歳成長しました。

――新生パーシオンに、ティーダが帰還してから数日が経つ。洞穴での生活だが、カルマンの言う通り慣れるとそれなりに住み心地が良いと、不覚ながらティーダは思う。

 この日は、ハリス兵士長に呼び出される。とある事をやってほしいというものだ。集められたのは、ティーダ、カルマン、ティオの三人である。

「忙しいだろうに悪いね、三人共」

「いえ……」

「気にすんなよ、ハリス副……じゃなくて兵士長!」

 ティーダだけは無言で頷く。この三者三様の反応を、ハリスは軽く一笑すると、呼び出した理由を話し始める。

「さて……今回呼び出させてもらったのは、君達に旧パーシオンに赴き、そこにある貴重品などの回収をしてきてほしいんだ」

「それだけですか? その程度のものだったら、普通にやれた事ですよ?」

「うん、そうなんだけどね。――気になる事があるんだよ」

 その言葉に、三人はハリスの言葉を待った。

「とにかく、今更ながらこれを頼んだのには、ティーダの戦力の復活だ」

「……俺の?」

 ここまで言われてティーダは、ハリスが何を警戒しているのかがわかる。恐らくはアルティロイドの存在だろう。かつてのサンバナ攻防戦時、そして兵士長になりあらゆる噂を聞くようになり、その存在を認識し始めたのだ。事実、現時点でハリスはアルティロイドの明確な存在こそ知らないが、うっすらと化け物じみた強さを持った存在がいる事は知っていたのだ。

「ティオちゃんは貴重品の回収、ティーダは護衛、カルマンはその両方を重点として行ってほしい。……それでティオちゃん、その間、ここの守りが薄くなってしまうから、ロビンを機動してほしいんだが?」

「わかりました」

「うむ。では、宜しく頼むぞ、三人共!」

  それぞれがそれぞれの準備をする。ティーダは特に装備しなおすものなどはない為、一人早々に出入口へ移動する。カルマンは、副兵士長になった影響からか、熱心に持ち物整理へ。

 そしてティオは――。

「力を貸してね……」

 ティオはロビンのスイッチを入れる。

「タダイママイクノテストチュウ!」

 ロビンの目が光る。電源が入ったという事だ。重々しい金属音と共に立ち上がる。

「――ワガマスターティオ。ドウシタナニカヘンダ」

「……えっ? ううん、そんな事ないよ」

「ソウカナライイ」

「うん。――ロビンにお願いね。私は用があって少しここから離れるから、その間にここの人達を守ってあげてね」

「リョウカイシタ。マスターノメイレイマモル」

 少しだけ困ったように笑うティオ。だがその反応は、よく気にしなければわからないような、微弱な反応だ。

「マスターじゃないよ、ティオ。それに命令じゃなくて、お願い」

「オネガイ」

「そう、お願い」

「リョウカイ。オネガイノメイレイオネガイサレタ」

 ティオは、その冷たい装甲を優しく撫でながら、

「うん、お願いね」

「――よぉ、ロビン! 目が覚めたか」

 ティオの言葉が消えてしまいそうな程に大きな声で、カルマンがロビンに話しかけた。

「カルマンワタシノトモダチ」

「おう! ちょっとこれから出かけてくるから、留守番を頼んだぜ?」

「カルマンイッテコイ」

 カルマンが勢い良く、ロビンの装甲を叩くと、鈍い音が響く。

 続いてロビンも真似してカルマンを叩こうとするが、

「お、おい、お前はやめろって! そんな馬鹿力で叩かれたら死んじまうよ!」

 と、必死に止めた。

「――さて。ティオ、準備は良いのか?」

「……うん」

「よし、じゃあ行こう」

 カルマンとティオも、準備を済ませ出入口へ急ぐ。

 三人が揃うと、いよいよ旧パーシオンへと向かう。

「ハリス兵士長には言ってあるから。勝手に行ってくれだそうだぜ。あの人も色々とやる事があるからな」

 と、カルマンが適当な解説をする。

「――ティーダ」

「うん?」

 いまいち一歩が踏み出せないといった感じで、ティオがティーダに話しかける。

「どうした?」

「あ……いや、何でもない」

 それっきり何も話さなくなるティオ。

 この空気に挟まれて、肩身の狭くなったカルマンは、そんな空気を払拭するように叫ぶ。

「ほらっ、行くぞ行くぞ!」

 カルマンに付いていくように、二人は歩いていく。旧パーシオンまでは、作戦を立てたわけではないが、前衛にカルマン、後衛にティーダが付き、その真ん中にティオがいるという陣形になった。

(あいつ……)

 その中でもティーダは、カルマンの動き方に、目を奪われた。

(かつての面影がどこにもない。全く隙の無い歩き方だ。――あいつはあいつで、何かを失い、何かを得た、という事か)

 かつては、どう甘く見ても足手まといな印象が高かった。しかし今のカルマンは、ベテラン以上のモノを持っていると、ティーダは評価する。

(まだまだだが、ソリディアと歩いていた頃の感覚が思い出せるな)


 程なく歩いていくと、かつて暮らしていたレジスタンスベースのパーシオンが見えてくる。

 ティオも、カルマンも、ここに足を踏み入れるのは数ヶ月ぶりの事になる。改めて見るその悲惨な場所は、二人からあらゆる言葉を出させなかった。

 ティーダはティオの表情を伺う。無表情でその光景を見つめているようだが、何故かティーダには、はっきりとわかった。無表情という殻の中の感情は、確かに泣いている。

「さて……さっさと用件を済ませよう」

「あ、ああ、そうだな」

 ティオとカルマンは、お互いに散らばり、それぞれに回収していく。ティーダも、辺りの気配を気にしながら、惨劇の場をを見ていく。

 数日前に立ち寄った時は、少ししか見ていなかったが、改めて見直すと、城国軍の徹底した報復攻撃の痕が見れる。

 無意識に歩いて行くと、とある場所にたどり着く。そこはティオが好きな場所と言っていた、かつては美しかった土手になっている川だ。

『――あ、ここにいたんだ』

 そう言って、ここで話してきたティオ。記憶の中の、幻想の彼女を思い出す。

「――覚えてる、ここで話した事?」

 そしてそこにいるのは、現在の、現実のティオだ。かつてこの場所で話した顔は、今はそこに無い。

「うっすら、とだけどな」

「……ティーダ、らしいね。ここで初めて話した時、私は自己紹介しようって言ったんだよ」

「そうだっけ……?」

「そうだよ。忘れたの?」

 ティーダは必死に思い出そうとするが、全く思い出せないでいた。何故か嘘をついた。

「いや、覚えてるよ」

「嘘つき。……あはは」

 あまりにも小さかった。あまりにも小さすぎる笑い声だった。だがティーダはそれを聞き取り、はっとティオに振り向いた。

 ――そこには、本当に小さなものだったが、笑ったティオがいる。しかし、その表情はすぐに消えてしまう。まるで自分で感情というものを、押し込めているように。

「――ティオ!」

 ティーダは、その名を呼ぶ。

「ホタル……だったっけ。見れなかったな」

「なんだ――覚えててくれたんだ、やっぱり」

「やっぱり? いや、そんな事よりも……ティオ。俺を見てくれ!」

 今まで真っ直ぐに目を合わせようとしなかったティオは、ゆっくりとだが振り向き、ティーダの姿を見る。

 振り向いたのを確認すると、ティーダは右手小指を突き立て言う。

「ここでは見れなかった。でも、いつか見よう!」

「……いつか、なんて……約束できないよ。だって……仕方がないのは、わかってるけど、ティーダも私の前から消えちゃうんでしょ?」

「何だって?」

「――みんなそうだよ。私の前から、みんな消えちゃうんだ。みんな……。そんな約束、したくないよ。……今だって、私の目の前にいるティーダは、私が作り上げた幻だって思ってるんだからっ!」

 まるで癇癪を起こしたように、わめき散らすティオ。現在のティオの精神は、とても不安定なのである。

「……ティオ。――ティオ、俺を見ろ!」

 泣いているわけでもないが、顔をくしゃくしゃにしながら、ティオは言われた通りにティーダを見る。

「お前の、瞳の中に俺はいるかっ!」

「いる、けど……だって、幻かもしれないよっ、夢かもしれないよっ、もう……人が死ぬのを見たくないんだよぉ!」

「――っ、このっ、馬鹿野郎!」

 ティーダは一気に土手を駆け上がり、そこにいるティオに近付いていく。

「――う、ぁ!?」

 何も考えずに、ティーダは目の前の少女を抱き締めていた。

「俺は……幻でも、夢でも、ましてや偽物でもない。俺は、戻ってきたんだ。ここにっ!」

 ティオは、ティーダの抱き締めてくる力、その温もりを感じていた。感情を閉じ込めていた壁が、その暖かさにより、ほんの少しずつだが溶けていく。

「……ティーダ……っ!」

 今まで溜め込んだ涙が、一気に溢れ出した。ティオの目からは、止めどなく涙という、悲しい記憶が流れていく。

「ごめん……でも、俺はもうどこにも行かない。戦いに出ても、きっと帰ってくる」

「――はい!」

 泣きながら、しかし努めて明るく、ティオは小指を突き出す。

「何だ、それは?」

「指切り、だよ?」

「いや、だから何で?」

「きっと帰ってくるんでしょ? ……なら約束、して」

 ティーダは視線を一度逸らし、もう一度視線をティオに向ける。

「いや、それはしない」

 その答えに、ティオの表情が曇る。

「お前もさっき俺が出した指切りを、受けてくれなかったから」

「……ケチ」

「ケチで結構」

 ティーダの態度に、ティオは「じゃあ――」と切り出すと、

「私の部品収集、きっちり手伝ってね」

「それは……その……」


 そんな様子を離れた位置から見ていたカルマンは、色々な感情が入り交じった溜息を漏らしていた。

「良かったな……ティオ」

 それは好きな人間が多少なりとも元気になってくれたという、安堵の溜息。

 そして――。

「じゃあな、初恋!」

 言葉と同時に、ふっと力強く噴き出す溜息。カルマンは一人、言葉と溜息と共に、天空(そら)に返した。

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