表示調整
閉じる
挿絵表示切替ボタン
▼配色
▼行間
▼文字サイズ
▼メニューバー
×閉じる

ブックマークに追加しました

設定
0/400
設定を保存しました
エラーが発生しました
※文字以内
ブックマークを解除しました。

エラーが発生しました。

エラーの原因がわからない場合はヘルプセンターをご確認ください。

ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
アルティロイド―究極の生命体―  作者: ユウ
サンバナの町~爆炎の暴れ馬~
13/97

12,爆炎の騎士ラティオ

~レジスタンス連合~


名前 ソリディア

種族 ヒューマン

性別 男

年齢 45

階級 パーシオン兵士長

戦闘 1000

装備

E鋼の剣

E戦闘用防護服

E鋼の肩当て


名前 バース

種族 ヒューマン

性別 男

年齢 42

階級 コロセオン兵士団長

戦闘 1200

装備

E鋼鉄大剣・剛力丸

E鋼鉄の鎧


名前 タムサン

種族 ヒューマン

性別 男

年齢 21

階級 パーシオン兵士

戦闘 500

装備

E鋼の剣

E戦闘用防護服

最初の爆音は、サンバナの町から遠く離れた位置からのものだ。早朝であり辺りも薄暗く、視界が悪い。現在の時点で敵の位置を判断する材料は、その轟く爆音のみである。

 城国軍の兵士は、サンバナの町の南側と東側から、集中的に攻めてきている。特に爆音が大きく聞こえてくるのは東側であり、南側でも爆発はしているようだが、東側のそれは比にならない。サンバナ護衛兵及び、雇われたレジスタンス達は、各自の行動で城国軍を迎え撃つ構えである。

「いかんな……、敵は城国軍だぞ、一致団結しなければ勝てる戦も勝てなくなるぞ!」

 かつて大戦を経験したソリディアは、今の防衛網では負けると判断する。しかし兵士達の行動は、ソリディアの言う通り、滅茶苦茶に移動しているだけである。東と南、どちらが兵士が多いのかもわからない。

「ソリディア、これだけの数の兵士達だ。まして他のレジスタンス達が、言う通りに動いてくれるとも思えない。仕方がない話だが、俺達は俺達の作戦で動いた方が良い」

「うむ……。ティーダ、私はお前に、敵軍のアルティロイドの相手をしてもらいたいと思っている。正直に言って勝てる見込みはあるのか?」

「確実……、とは言い難いが、真っ向勝負すればまず勝てるだろうな。俺は最強のアルティロイドだ」

 軍力に勝る城国軍。いくらレジスタンス連合を用いても、城国軍に勝てる確証はどこにもない。いや、むしろこれだけの戦力を整えても、負ける可能性の方が高い。それに戦力が集中した場所で、運悪く敵のアルティロイドと遭遇してしまい、一気に戦力を奪われたら、それこそ敗北の道を辿るのみである。だからこそ、同じアルティロイドであるティーダと敵のアルティロイドを、早期にぶつけて被害を最小限に抑えなければいけないのだ。当然の話だが、あわよくば敵アルティロイドを倒す事ができれば、今後の城国軍との戦いを、少しは優勢に進める事ができるであろう。

「どうするソリディア。俺はどちらに行く?」

 東か、南か、ティーダの初期配置により、戦況は大きく変わると言っても過言ではない。

「うぅむ、みな――」

 その時、東側から慌ただしさと共に、兵士がやってくる。見るとその兵士の防護服は、どんなやられ方をしたのか、と問いただしたい程に、ボロボロになっている。さらにその兵士の、左腕は無惨にも吹き飛ばされている。

「お、おい、お前、大丈夫なのか!?」

「お、俺の事は良いっ、相棒を、相棒を助けてやってくれ!」

 話している男は、兵士の指差す方を見ると、一気に落胆の表情へと変わる。

「は、早く、この兵士を手当てしてやってくれ……」

「何でだよ、早く相棒を助けてやってくれよ、俺の事は後で良いよっ!」

 衛生兵らしき男がやってくる。あまりに殺伐とした前線で、困惑しているのか、その行動にはどこか落ち着きがない。

「い、良いんですか、この方が先で……?」

 衛生兵は、兵士の言う相棒を見ると、こう問いただしていた。

「良いんだよっ、早く飛んじまった腕の止血をしてやれ!」

「は、はい……!」

「……ったく。あんなミンチになっちまった人間を、どうやって手当てしようってんだよ……」

 片腕を吹き飛ばされた兵士は、衛生兵だけでは抑える事ができず、数人の屈強な男達が運んでいく。

「あのバケモノめ、……なんであんな奴が東側にいるんだよ、ちくちょう……」

 ソリディアもティーダも、その兵士の言葉を聞き逃さなかった。

「ティーダ!」

「あぁ、俺は東側に向かう」

「うむ。私達は南側の敵戦力を削る。辛い戦いになるかもしれんが、武運を祈るぞ」

 ソリディアとティーダは、お互いの拳と拳をぶつけ合う。そしてティーダは、全速力で東側にいるであろう、敵軍アルティロイド討伐へと向かう。そんな中、タムサン達パーシオンの兵士は、先ほどの死体を見て完全に畏縮してしまっている。

「へ、兵士長……。あれが、人の死に方なのですか……?」

「タムサン……。いや、あれは人の死に方ではない。あんな風に人は死んではいけないのだ」

「……でも、どうやったら人は人を、あんな風に殺せるのですかっ!?」

 タムサンの悲痛な叫びが、戦場となったサンバナの町に響いた。タムサンの後ろにいる兵士達も、同じ心境なのだろう。明らかに士気が下がっている。

「私は私なりの答えで、それを知っている。だが、それをお前達に教える事はできん。……今言える事は、あのような人達を、これ以上出さないようにする為に、少しでも早く支配戦争を終わらせなければいけない。その為に兵士達(われわれ)の力が必要なのだ」

 ソリディアの言葉と、自分の心の中で恐怖と戦っている。その二つの葛藤が、タムサン達をただ沈黙させた。

「――へっ、だから貴様達は雑兵だって言ってんだ!」

 突然の大声に、その声の主を見る。大柄な体を揺らし、その声の主は近づいてくる。

「バース!? まだ出陣していなかったのか?」

「何、今から出陣しようと思ったら、こんな戦場の前線で泣き言ほざいてる雑兵がいるじゃねぇか。他の兵士の士気を下げかねんから、喝を入れに来たんだよ」

 軍神と呼ばれるだけあり、鎧に身を包んだバースの姿は、否応無しに兵士の士気を高めていく。そんな戦友の姿に、ソリディア自身の士気も高まっていくのを感じる。

「貴様等、いちいち御託はいらんのよっ! 俺達兵士は、戦う気があるのか、無いのか、ただそれだけだ! 俺達兵士に、正義も悪も必要無ぇ。己の信じる道を進むまでよ、どうだ、貴様等は何を信じる!?」

 軍神バースのその叫びに、パーシオンの兵士はただ、がむしゃらに言葉を返す。

「じ、自分は、キャンプにいる家族を守りたいっ!」

「安っぽいかもしれない、好きな女を守りたいんだよ!」

「早く戦いの無い世界を作る為に、俺は兵士に志願したんだ!」

「……守るんだ、絶対にっ!」

 バースは、恥も外聞も捨てた兵士達を見て笑った。決して馬鹿にしているわけでもないのは、明確な事実である。バースもまた兵士達の必至の声に、己の士気の高ぶりを感じたのだ。

「よぅしっ、ならば迷うな! 貴様等のその思いの丈をぶつけてやるんだ!」


「――ウオオオオオォォォォォォォ!!」


 バースの一声で、パーシオンだけでなく、それを聞いていた全ての兵士が雄叫びをあげる。城国軍の爆撃さえもちっぽけに聞こえる程の、大きな雄叫びは燃え盛る空にこだまする。

「さすがだな、バース。私も年甲斐もなく熱くなってしまったよ」

「へっ、鬼神のソリディアが、そんな弱腰でどうするんだよ! それじゃあタムサン(あいつら)が可哀想ってもんだっ!」

「……そうだな。ならばその非礼を詫び、この戦いに私の全身全霊を注ぎ込んでやる!」

「それでこそ、鬼神のソリディアだ。……よっしゃ、行くぜ!」

 若い兵士達の後を追うように、ソリディアとバースも、戦火吹き荒れる戦場へ走る。



 ――その戦場の凄惨さは酷いものだった。まだ普通に死体が転がっているのなら、戦場故に仕方がないものがあるが、問題はその死に方である。まるで至近距離で高火力の武器を当てられたように、その死体は上半身が、あるいは下半身が吹き飛び、特に凄いものは、体のほとんどが吹き飛び、肉塊と鮮血が至る所に飛び散っている。

 地獄より酷い地獄。間違いなく、真っ当な人間がこの光景を見たら、そう答えられるだろう。

(間違いない……、単騎でこれだけの事をやってのけられるのは、アルティロイドしかいない。そして死体から推測するに、これをやったのは爆炎の騎士。……もしも奴なら、この地獄は更なる地獄を見る事になるだろうな)

 その光景をみたティーダは、率直な感想を思う。しかしこの惨劇を作り上げた張本人の事を、知っているからこそ思える事なのだ。

(……しかし、爆炎の騎士である事。その戦法とかは思い出せるが、どうしてか名前が浮かんでこないな)

 移動しながら、そんな事を考える。しかし出かかっている事が、思い出せないティーダにとっては、何ともむず痒い事である。

 ――直後、そう遠く離れていない場所で、再び爆発が起きる。恐らく爆発した場所では、また数人の兵士の命が失われたのであろう。ティーダは爆発した場所へ急ぐ。

 その場所まで、わずか数秒。だが予想通り、そこには爆炎の騎士にやられたのであろう。既に無惨な肉塊と化した人の死体が転がる。即死かどうかを判断する必要もない。むしろこんな姿になっても、まだ生きているというのなら、そちらの方が地獄である。

「……うぅ!」

 しかし、そこにいたのは死体だけではなかった。運良く直撃を避け、何とか生き延びた人もいる。

「生存者か。……おい、大丈夫か?」

 ティーダが話しかけた兵士も、生きてはいるものの無事とはいえず、左腕左脚といった左半身に、ダメージを負っている。吹き飛ばされた腕と脚では、残念ながら兵士としての活動は、断念せざるを得ないであろう。

「……ち、く、しょう……! 城国軍め……、あんな、化け、物、を……」

「喋るな、容態は酷いが、おとなしくしていれば、しばらくは死ぬ事はない!」

 兵士は余程悔しかったのだろう。目には涙をため、残った右拳は固く握られている。

「――やっと見つけたぜ、兄貴!」

 後ろからの自分を呼ぶ声に、ティーダはそっと振り向き、その姿を確認する。そこにいたのは爆炎の騎士。

「お前……」

「久々だな、兄貴。地上に降りてからも、元気でやってたか?」

「……そこそこにな。お前こそ何をしている?」

「王の命令だ。兄貴も知っているだろう? 地上にいる人間は、大地をただ食い潰すゴミだって、だからこの地上から完全に消し去らないといけないんだって。王は俺達アルティロイドに……、いや城の人間達にそう教えてくれたはずだ」

「まだ……、そんな王の言葉に狂わされているのか?」

 めずらしくティーダの言葉には、怒気が入り交じっている。鋭い眼光で、爆炎の騎士を睨み付ける。

「狂うとか狂わないとか、そんな事はどうでも良いんだ。……兄貴、今からでも遅くはない、城に帰ってこいよ!」

「……断る。それに王は俺を見捨てたのだろう? 今更俺が戻ってどうなるわけでもない」

「俺も一緒に王に頼んでみるさっ、ジューク兄貴も、デュアリス姉も、兄貴の帰りを待ってるはずさ!」

 ほんの一瞬だが、沈黙の間を作った後、ティーダは口を開く。

「断る」

「……兄貴、どうしても戻って来ないんだな。……なら、ならっ、俺が兄貴をぶっ飛ばしてでも連れ帰ってやるっ!」

 ティーダの返答に、業を煮やしたのか、爆炎の騎士は一気に力を開放する。力の開放と共に、辺り一帯が小規模な爆発に見舞われる。恐らくは並の人間達は、この力の開放だけで為す術無く殺されていったのだろう。アルティロイドの力は、敵意を以て放てば、人間程度を殺すには造作もなくできてしまう。

「唸れっ、陽黄(ようこう)の鉄拳! ――ダイナアクス!」

 ダイナアクスと呼ばれる、ラティオの両拳に装備されたオリハルコン製のメタルナックル。いや、オリハルコンナックルにより用いて、拳と拳を叩く。

 ――突風爆破。そんな言葉が似合う程の、風と共に唸る爆音の嵐。ラティオが力を開放していく毎に、その爆発は更に激しさを増していく。

(……チッ!)

 凄まじいとしか例えようの無い、その力の開放に、ティーダも同じく能力を開放していく。ラティオの爆発と、ティーダの烈火が、全てを飲み込んでしまわんばかりに、大地を覆い尽くす。

「叫んでるんだよ、俺の中で! 爆炎の幻獣ヴァルサスがよぉ!」

「……俺の中の、火の聖獣エンドラも言っているぜ。お前を倒せとな!」

 一瞬、お互いの心臓部が光る。ティーダは赤い光、ラティオは黄色の光。それは生命の核を融合させられた、ティーダとエンドラの、ラティオとヴァルサスの色である。命が光る。

「爆炎の騎士ラティオ! 正々堂々、真っ向勝負で兄貴を連れ帰ってやるぜぇっ!」

「連れ帰られるつもりは毛頭無い。天空の攻防戦(あの時)同様、また退いてもらうぞ、ラティオ!」

 ティーダはヴェルデフレインを、鞘から出し、ラティオ迎撃の体制を取る。対するラティオは、真っ向勝負の言葉通り、小細工無しに、一直線にティーダめがけて突進する。先制攻撃は、駆け引きも何も無く、ラティオの拳が先に出る。当然、小細工の何も無い攻撃を、ティーダが当たるはずもなく、受け止める事もせずに、単調な攻撃を避ける。

「まだまだ行くぜ! オラオラオラオラオラオラオラオラオラァ!」

 目にも止まらぬ高速パンチの連打。まるで石でも投げられているのではないかという、錯覚さえ起きるその攻撃の鋭さ。ただタチが悪いのは、石ならまだしも、投げてくるのはオリハルコンの拳をいう事だ。剣でも拳でも、当たれば致命打なのは変わりがない。既に武器の種類による、攻撃力の差などという領域ではないのだ。

(――まるでカルマンだな。いやカルマンがラティオか!? だが実力の方は、カルマンとは比較にならないな)

 天空攻防戦の時とは、比較にならない程の、拳のキレを以て攻撃を仕掛けてくる。ラティオは足を踏ん張り、力一杯に攻撃する癖を持っている為、足の踏ん張れない天空戦では、実力の半分も出せていなかったといっても過言ではない。つまり地上で戦うラティオは、実力を全開で戦う事ができる。

「どうした兄貴! 攻撃しなけりゃ、俺を退ける事はできないぜ!?」

 細かくも鋭い高速拳を牽制打に、一気に大振りの右拳を出しにかかる。その攻撃を避けきれないと、判断したティーダは、ヴェルデフレインでダイナアクスを受け止める。それでもラティオの攻撃を止めきれず、衝撃は背後へと突き抜けていく。

「……くっ!?」

 ティーダの意志とは関係なく、後方へと吹き飛ばされる。ティーダを突き抜けた遥か後方に、その衝撃の余波が出る。そしてその衝撃は、爆発という形で現れる。

 アルティロイド最強の戦闘力を持っているのは、ティーダなのは事実だが、アルティロイド最強の攻撃力を持っているのは、事実上ラティオである。更に得意地形での戦いというのも相まって、現在の総合能力は、ラティオがティーダを超えているといっても過言ではないのだ。

「兄貴、まだだ。兄貴は俺が連れ帰るが、その前に俺は兄貴と本気(マジ)な真剣勝負がしたかった!」

「……興味は無いな」

「さすがクールな兄貴は違うな。でも俺は、兄貴と戦うと考えると、うんっと燃えるんだよ!」

 気迫はラティオが上回っている。わずかこれだけの攻防だが、アルティロイド同士の戦い、そして力の開放をした戦いは、地上を破壊するのは十分すぎる威力を秘めていた。

 火の騎士ティーダ。爆炎の騎士ラティオ。二人のアルティロイドの戦いは、命懸けの攻防戦となる。

評価をするにはログインしてください。
この作品をシェア
Twitter LINEで送る
ブックマークに追加
ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
+注意+

特に記載なき場合、掲載されている作品はすべてフィクションであり実在の人物・団体等とは一切関係ありません。
特に記載なき場合、掲載されている作品の著作権は作者にあります(一部作品除く)。
作者以外の方による作品の引用を超える無断転載は禁止しており、行った場合、著作権法の違反となります。

この作品はリンクフリーです。ご自由にリンク(紹介)してください。
この作品はスマートフォン対応です。スマートフォンかパソコンかを自動で判別し、適切なページを表示します。

↑ページトップへ