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指南役とお妃教育  作者: 甘寧


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書類整理とは?

 次の日の早朝、部屋の扉をノックする音で目を覚ました。窓の外はまだ朝日が街を照らし始めた頃だ。


「誰?こんな早く……」


 目を擦りながら扉を開けると、そこには身支度を整えたグィードが立っていた。


 驚いて一歩後退ったロゼに、グィードは一言


「仕事ですよ」


 それだけ言うと、身支度を整えるように伝え外へ出て行った。


 訳も分からず身支度を整え、外で待つグィードの元へ急いだ。


「お待たせ致しました」

「では行きましょう」


 息を整える間もなく、歩き出したグィードの後を追った。急いでいる様で、歩く速度も速い。付いて行くのがやっとの状況の中、グィードは森の中へ入って行く。


 いくら早朝とは言え、木々に囲まれた森の中は薄暗く不気味。更にヒールのある靴では歩きずらく、グィードとの距離が徐々に開き始めた。


「ちょ、ちょっと待った!!」


 慌てて呼び止め、グィードの足を止めさせた。


「ん?どうしました?」

「どうしましたじゃないわよ。何で早朝にこんな森に来なきゃならないの!?」

「?おかしな事言いますね。昨日、私の仕事を手伝って貰うと伝えましたが?」

「……書類整理って話じゃありませんでした?」

「イレギュラーにも迅速に対応出来なければ、妃は務まりませんよ?」


 上手いことを言って誤魔化そうとしている事は何となく分かった。


(こんな事なら歩きやすい服装で来るべきだった)


 歩き慣れていない靴に歩きずらい道で、靴擦れが出来てしまったらしく痛みで顔が歪む。


「……見せてご覧なさい」

「え!?」


 私の様子に気が付いたグィードが、靴を脱がそうと手を伸ばしてきたが、流石に素足を晒すのは躊躇われる。


「いやいや、大丈夫です!」

「いいから見せなさい」


 必死に抵抗して見せるが、凄みを利かせた声に大人しくなった。


「……これ以上は無理ですね」


 傷口を見てすぐに、歩くのは無理だと判断された。


「まったく、こんなヒールのある靴で来る者がありますか」

「私だって、森に来るって判ってたらこんなんじゃ来ないわよ!」


 流石にムッとして言い返した。


「このままではどうしようもありませんね……」


 私の言葉なんて聞こえていない様な素振りに、苛立ちも最高潮。


「あんたね──!!」


 怒鳴りつけてやろうとした時、グィードが背中を向けてしゃがみ込んだ。


「ん?」と首を傾げる私に「何してるんです。早くなさい」と急かしてくる。


 もしかして、これは背中に乗れと言う合図?そんな言葉が脳裏を掠めた。


(この人が?まっさかぁ~)


 なんて心の中で嘲てみるが、背中を向けたままのグィードに信憑性が増す。


「え、本当に?」

「なに訳の分からないこと言ってるんです。置いて行っていいのならそうしますが?」


 睨みつけるように言われ、おずおずと背中に手を置いた。


「しっかり掴まって下さい」


 勢い良く立ち上がったので、体勢を崩しそうになり慌ててグィードの背中にしがみついた。


 ひょろっとした見た目に反して、大きくて逞しい背中。鍛えているのか、程よい筋肉で引き締まっている。


「……あまり触らないでくれますか?」

「え!?」


 あまりも意外だったので、無意識にベタベタと触っていた。グィードに指摘された事で我に返り、恥ずかしいやら申し訳ないやら……


「男の身体に興味が?」

「ち、違います!」

「ふふっ、慌てる所を見ると図星ですか?折角なのでお見せしましょうか?」

「ッ!」


 揶揄われているのは分かっているのに、言い返す言葉が見つからない。


 これじゃ本当に身体が見たいって言っているようなものじゃない!


 火照る顔を隠すように手で覆っていると、グィードの楽しげな笑い声が聞こえてきた。


(くそ~)


 悔しいが、顔を覆う事しか出来ない。


(ん?)


 ふと、森の中に目をやると、白い人影が見えた気がした。ゾワッという毛の逆立つ感覚に、ロゼは一瞬時が止まったようだった。


 すぐにグィードの肩を掴むと、上下に力一杯振って異常を伝える。


「ちょ、ちょ、な、なんです!?」

「お、お化け!!」

「はぁ?」


 その場にロゼを下ろすと、乱れた髪を整え辺りに目を配る。


「……どこに?」

「そっち!さっき、白い影がボワァって!」

「……ふ~ん……」


 奇異の目を向けられたが、場所を指摘すると顎に手を当て考え込む素振りを見せた。


「……少々、この場でお待ちください」


 その言葉を残し、白い影の見えた茂みの方へ。


「───!」

「…………」


 しばらくすると遠くで人の声の様なものが聞こえ、ガサガサと茂みをかき分ける音が聞こえた。


「お待たせ致しました」


 疲れた表現で戻って来たグィードの隣には、サラサラの黒髪で顔を隠した侯爵令嬢のキーカ・バルテンだった。


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