表示調整
閉じる
挿絵表示切替ボタン
▼配色
▼行間
▼文字サイズ
▼メニューバー
×閉じる

ブックマークに追加しました

設定
0/400
設定を保存しました
エラーが発生しました
※文字以内
ブックマークを解除しました。

エラーが発生しました。

エラーの原因がわからない場合はヘルプセンターをご確認ください。

ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
指南役とお妃教育  作者: 甘寧


この作品ページにはなろうチアーズプログラム参加に伴う広告が設置されています。詳細はこちら

5/18

意地とプライドの結果

 四日後──……


 グィードに課された分厚い問題集は、睡眠時間を削りに削って何とか終わらせた。


 何度か挫けようになったが、その度にほくそ笑みながら馬鹿にするグィードが脳裏に浮かび、意地とプライドでここまでやって来れた。


 一生分の頭を使い果たした感で完全燃焼しかけたが、肝心なテストが終わっていない。


「おやまあ、酷い顔ですね」

「誰のせいでしょうね?」


 窪んだ目を向けながら恨み言を言っても、グィードは素知らぬ顔。


「それでは、お手並み拝見と参りましょうか?」


 そう言いながら用意してきたテスト用紙を目の前に置いてきた。

 少しだけ……本当に少しだけ労いの言葉が掛けられるんじゃないかと、期待していた自分を殴りつけてやりたい。


「……ねぇ、合格点が取れなかったらペナルティって言ってたわよね?」


 ジッと答案用紙を見つめながら呟いた。


「それだと私にメリットがないわ。ちゃんと公平に決めてちょうだい」


 睨みつけながら言えば、面食らったような顔をされた。グィードにだけ都合のいい賭けなんて冗談じゃない。こちらにもそれなりの見返りが欲しい。


「ふふっ、貴女の言う通りですね。すみません、フェアじゃありませんでした」


 あっさりと要求が通り、これにはロゼが驚いた。


「そうですねぇ」と首を捻りながら考えていたかと思えば、ポンッと手を叩いた。


「では、こうしましょう。()()貴女が合格点を取れたら一つだけ願いを聞きます。どうです?」

「いいですよ」


()()』を強調する時点で、自分の勝ちを確信しているんだろう。本当に腹立たしい……


 だが、こちらだって三日間死ぬ気で頑張ったんだ。負ける訳にはいかない。


 そう意気込み、挑んだ。



 ***



「まあ、貴女にしては頑張った方ですね」


 眼鏡を外しながら答案用紙を返された。返された用紙を見て手が震える。


 結果は……不合格。僅かに一点足りなかった。


「な、な、なんでぇぇぇ!?あんなに頑張ったのにぃぃ!!」


 クシャクシャの答案用紙を握りしめ、机に突っ伏すロゼをグィードは黙って見下ろしている。


 正直、見返りとかどうだって良かった。この男にやれば出来るって所を見せつけてやりたかった。


 生まれて初めて感じる悔しさと敗北感。


「うぅぅぅ~……」


 突っ伏したまま唸り声をあげるロゼに、グィードは「やれやれ」と息を吐き、未だに上がることの無い頭に手を置いた。


「言ったでしょう?貴女にしては頑張った方だと。私の予想より遥かにいい点数でしたよ」


 褒められているのか貶されているのか分からないが、慰めてくれているという事は分かった。


「まあ、()()もう少し頑張りましょうね」

「次!?」


 思わず顔を上げて聞き返した。


「えぇ。まさか、今回限りとでも思いましたか?学ぶことはまだまだありますよ」


 散らかる机の上を片しながら、粛々とした態度で言い返してくるグィードに愕然とする。


「ともあれ、今回は残念な結果となりましたので、約束通りペナルティを課しましょうか」


 溢れんばかりの笑顔を向けられているはずなのに、その笑顔が怖い。何を考えているか分からないから余計に怖いと言うのもある。


「い、命だけは……」


 顔を青ざめ、涙目になりながら命乞いをする。


「ふはっ、命なんて取りませんよ。もっとも、貴女の命にそれほど価値があるとも思えませんしね」

「ンな!!」


 あまりの言い草に、溢れかけた涙も引っ込んだ。


「貴女には一ヶ月の間、妃教育の合間に私の仕事を手伝って頂きましょう」

「なんで!?」

「こう見えて私は多忙なんですよ。いくら馬鹿でも書類整理ぐらいは出来ますでしょう?」

「ばっ──」


 馬鹿ってはっきり言った!そこはもう少しオブラートに包むべきじゃないの!?


 ムゥと頬を膨らませて目を吊り上げていると「クスクス」と子気味いい声が聞こえた。


「期待してますよ」


 グシャと優しく頭を撫でられ、一瞬息が止まった。


「ハッ」と我に返った時には、既にグィードの姿はなかった。


 ドキドキと激しく脈打つ音が耳につく。不意打ちの優しさは心臓に悪い!


「なんだよ、もぉ~……」


 熱くなる顔を誤魔化すように顔を伏せた。

評価をするにはログインしてください。
ブックマークに追加
ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
ツギクルバナー
― 新着の感想 ―
このエピソードに感想はまだ書かれていません。
感想一覧
+注意+

特に記載なき場合、掲載されている作品はすべてフィクションであり実在の人物・団体等とは一切関係ありません。
特に記載なき場合、掲載されている作品の著作権は作者にあります(一部作品除く)。
作者以外の方による作品の引用を超える無断転載は禁止しており、行った場合、著作権法の違反となります。

この作品はリンクフリーです。ご自由にリンク(紹介)してください。
この作品はスマートフォン対応です。スマートフォンかパソコンかを自動で判別し、適切なページを表示します。

↑ページトップへ