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指南役とお妃教育  作者: 甘寧


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18/18

後悔は先に立たず

(えっと……)


 部屋に戻って来たロゼだが、部屋に入った瞬間からグィードに抱きしめられてどうしていいのか悩んでいた。


(てっきり怒鳴られると思って身構えていたけど……)


 ここに来るまでも黙ったままで、今もだんまりを通している。怒鳴られるのには慣れているが、こういう状況には慣れておらず、心臓の音がヤバいのだが?


(いやいや、本当どうした!?)


「こんなの柄じゃないでしょ!?」っと、いつものように軽口が聞けたらどんなに良かったことか……軽口すら聞けない程の雰囲気。一応、場の空気は汲んでおこうとしたが……これは、間違えた?


(ぶち壊すのが正解だったか?)


「ふぅ」と困ったように小さく息を吐いた。


 雰囲気的に怒ってるのとは違う。この感じを言葉にするのなら……『拗ねてる』


『大切な人なら──』


 ジルヴェスターの言葉が頭をよぎる。


(まさか、ね……)


 心臓の音が頭に響いてうるさい。


 ロゼは意を決して口を開いた。


「あの、違うとは思うんですけど……もしかしてですけど、拗ねてます?」


 ピクッと反応があり、そっと顔を上げてみた。


「はぁ?誰が?誰に?」なんて、いつもの毒舌を期待していたのに、期待に反してグィードは顔を染めて顔を逸らしている。


(おっとぉ?)


 これは予想外の展開。グィードのこんな顔見た事ない。ロゼは悪戯心に火がつきニヤッと口元を上げた。


「あれあれあれぇ?どうしたんですかぁ?お顔が真っ赤ですけどぉ?」


 この人にマウントを取れるなんて、人生で一度あるかないか。ここは、日頃の憂さ晴らし……もとい、()()をさせて頂こう。


「もしかして、私の事が気になっちゃう感じですかぁ?あれだけ馬鹿にしてた女を?」


 ニマニマと嘲るように更に煽ってやる。


 こんなに煽って大丈夫かって?


 あとの事を今更考えたって遅い。そんなの、その時になったら考えればいい。


「あ!あれか、気になる子は虐めたくなるってやつです?意外と子供(ガキ)──……むっ!」


 嬉々としてツラツラと出てくる言葉を遮る様に、顔を掴まれた。


「随分とお喋りな口ですね」


 剣呑な光を灯し見下ろす姿に「ヒュッ」と喉が鳴る。


「私が子供(ガキ)だと?そう仰りたいんですね?」

「ひや、えっほ……」


 顔を掴まれているので上手く喋れず、よく分からない言葉になってしまった。


 あとの事は考えればいいとか言ったけど、無理です。調子に乗りすぎた私も悪い。それは、自覚してる。


(だって、面白かったんだもん!)


 反省はするけど後悔はない。


(誰か骨ぐらいは拾ってくれるかな……)


 胸に手を当て、屍になる自分を思い浮かべた。


「……そうですよ」

「へ?」


 自分の耳を疑った。


「私は貴女の事が気になって仕方ない」

「!?」


 初めて聞かされるグィードの気持ち。


 物語では甘く蕩けるような空気に包まれ、胸が高鳴るシーン……ロゼも少なからず、そんなシーンを夢見ていた。


 だが、今感じているのは肌がピリつく空気と、獲物を仕留めようとする猟犬の様な眼差し。胸は高鳴っているが、これは甘いときめきではなく、捕食されるかもという警告音。


「貴女が私の気持ちに気付くまで待っていようと思っていたんですが、あろう事か殿下なんかに仄めかせられて……阿呆にもほどがある」


 愛の告白を受けているのか、卑しめられているのか分からなくなってきた。


「鈍感で愚直で阿呆な貴女に、気付かせようとした私も馬鹿でした」


「そこで──」と、グィードの唇が大きく弧を描いた。うなじがゾッと粟立つような笑み。


「賭けをしましょう」

「賭け?」

「ええ、そうです」


 嫌な予感しか浮かばないが、ここで拒絶したところで逃がしてはくれないだろうし、賭けということは勝てばいいってこと。


 しかし、相手が相手なだけにここは慎重な姿勢を崩さない。


「内容は簡単です。妃教育が終えるまでに、貴女が私に『好き』と口にしたら私の勝ち。逆に、言わせることが出来なければ貴女の勝ちとしましょう」

「え?そんな事でいいの?」

「ええ」


 てっきり、無理難題が来るかと思っていたけど……


(なぁんだ、好きって言わなきゃいいだけでしょ?)


 そんなの絶対言わないし、言うはずない。こんなの勝ったも同然だと、あまりにも簡単すぎて拍子抜け。


  「分かったわ。その賭け、受けて立ってやろうじゃない!」


 自信に満ちた目で応えると、グィードは更に自慢げにロゼを抱き寄せた。


「悪いですが、私も本気でいかせてもらいますよ?覚悟しておいて下さい」


 スーとロゼの唇を指でなぞると、なぞった指を自分の唇に当てながら微笑んだ。




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