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指南役とお妃教育  作者: 甘寧


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16/18

心配のやり方

 まずは、誤魔化すように「んん゛っ」と咳払いして、気持ちを落ち着かせた。

 ジルヴェスターは黙ってこちらの応えを待っているし、言葉を濁したら濁したで余計な好奇心が生まれてしまう。


「……なにか誤解があるようですが、()()()()()()()しているだけで、私もその意思を尊重しているだけです」


 間違ったことは言っていないが、ジルヴェスターは首を傾げている。


「そうなった要因は?もし良かったら聞かせてくれないか?」

「別にいいですけど……大した話じゃないですよ?」

「構わない」


 そこまで言われたらこちらも話さない訳にはいかなず、ロゼはカルラ毒物事件の詳細を話して聞かせた。


 アネットの誤解を解くために疑惑のクッキーを口にしたこと。無事に誤解は解けたが、グィードの機嫌が悪くなり今に至ることを……


「そもそも、私は元からアネットさんを疑ってはいなかったんです。だから躊躇いもなく口にしたのに……結果的に無事だったんだから、結果オーライで円満に終える所じゃないですか!?」


 いつの間にか話す方にも力が入り、力説するロゼにジルヴェスターは「ん~…」と苦い顔をしている。


「まあ、君の言ってることも分かる」

「でしょ!?」

「だが、グィードの気持ちもよく分かる」


 ロゼは「えぇ?」と納得いかないと言った表情を浮かべている。


()()大切な人が同じ事をしたら、グィード同様に叱りつけるだろうな」

「殿下も?」

「ああ、今回は無事であったが、もし違えば一大事になっていた所だ。大切な人が目の前で倒れてみろ。私なら、一生悔やんでも悔やみきれない。きっとアイツも同じ気持ちだと思うぞ」


 諭す様に一段と柔らかい口調で語りかけてくる。


「……あの人にとって、私は大切な人じゃないですよ?」

「それは君が決めることじゃない」


 決めることじゃないが、決めつけることでもない。


「君はまだ知らないと思うが、アイツは誰よりも臆病で面倒な男だ」

「臆病?」


 思わず顔が歪む。


「ふふっ、臆病だよ。その癖、素直になれない。……な?面倒だろ?」


 臆病の概念が全く機能していないのだが?あの男を臆病だとすると、世の中臆病者で溢れてしまうが?


(面倒という点は否定しませんけど)


「はっ」と鼻で笑うロゼに、ジルヴェスターは暖かい視線を向けている。


()()()()それでいい。気付いた時には手遅れかもしれないけどな」


 この人はまた、不安を煽るような言葉を投げつけてくる……


 仏頂面で睨みつけると「ふはっ」とジルヴェスターが吹き出した。


「本当に君は面白い子だ。アイツが気に入るのも頷ける」


「くくくっ」と笑う姿は新しい玩具を見つけた子供のように無邪気で、こんな表情(かお)もするのかと思わず魅入ってしまった。


「あ」


 突如、ジルヴェスターが何かに気が付き声を上げ、ロゼの肩を指さした。


「君の肩に毛虫」

「えっ!?」


 この世で虫と名の付くものが大嫌いなロゼは「取って取って!」の軽いパニックに陥っている。


「落ち着け、大丈夫だ。ゆっくり息を吐いて、目を瞑れ」


 言われるがまま、深呼吸して目を閉じた。


「そう、いい子だ」


 目を閉じているせいか、殿下の声が凄く近くに聞こえる。気持ちを落ち着かせようとすればするほど、殿下を近くに感じてしまって、全然落ち着かない。


「ヒャッ!」

「ああ、すまない。手が触れてしまったか?」

「あ、だ、大丈夫……」


 視界を失った身体は、神経が剥き出しになっているんじゃないかと思うほど敏感で、頬に指が触れただけでドキドキしてしまう。


(早く…早く取ってぇ!)


 これ以上は心臓が持たない!


 そんな気持ちを知ってか知らずか、ジルヴェスターは頬に指を滑らすように触れてくれる。


「……君は柔らかいな」

「や、そんな、触らな……んッ」


 焦らすような触り方に声が漏れるが、ジルヴェスターは止めてくれない。

 それどころか、()()()()()()()()顔を近付けている。




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