エピローグ
10/5二話目
「ここが私達のお店! 準備した甲斐ありましたね」
さて、今、私達が居るのはビダーソン公爵領の一角。つい先日、私は学園の卒業式を迎えた。
というわけで、在学中から準備していた魔術や魔法陣関連の店舗に来ている。お母様たちが張り切って、良い立地の場所を選んでくれたの。もちろん、店舗購入のお金は自分たちで稼いだの。在学中から色々準備していたから、問題なく手に入ったわ。
あとは先にヒューゴさんの方が卒業したから、一年間は王都で働いてくれていたの。
父様の一人が宰相補佐をしているので、一年だけという取り決めで文官として働いてもらったの。王城には家族がちらほらいるから、それを理由に会いにいったりしたわ。本来の私の姿で向かって、それから場所を作ってもらってヒューゴさんと会ってたの!
卒業してから先輩呼びをやめたのだけど、なんだかこうして呼び方を変えられるだけでもただ幸せな気持ちになるわね。
「そうだな。こんな素敵な店舗を用意してもらえるとは、本当に嬉しいな」
「ええ。そうですよね。ふふっ、お母様たちも依頼をしてくれると言ってましたし、これから頑張りましょうね。それに結婚式ももう少ししたらありますし」
在学中からウエディングドレスについてとか、結婚式をどこで行うかとかそう言うのも全て手配済み。やっぱり早めに結婚したいのだもの。
「学園の友人達も呼ぶんだろう?」
「ええ。そうですわ。卒業式のパーティーは楽しかったですね」
「そうだな。……凄い騒ぎだった」
「まさか私がビダーソン公爵家の娘だとは皆さん、思っていなかったようですもの。驚き、固まり、時には青ざめる人たちも多くて……びっくりでしたわ。それにお母様たちも私の卒業をお祝いしに来てくれましたし」
そう、卒業パーティーの際に私は自分の身分を伝えた。
というのもこれから先、本来の身分で生活をすることを考えると秘密を明かした方が動きやすそうだとそう思ったから。
もちろん、ヒューゴさんにエスコートしてもらったわ。
ヒューゴさんは卒業パーティーの際に、多くの人達に囲まれていた。これまで地味で子爵令嬢しかない恋人しかいない……などとヒューゴさんを下に見ていた方もいたのだけど、特に青ざめていたわね。
そんなヒューゴさんが王城勤めしていたのも気に食わない人もいたみたい。ただヒューゴさんは頭の良い人だから、文官としてとても有能な働きを見せたらしいわ。辞職する頃には「辞めないでほしい」と言われたりもしたらしいけれど、元々一年だけという話で働いていたので断ったと聞いているの。
私はヒューゴさんが文官を本当にやり続けたいというのならば、王都暮らしも頑張ろうと思っていたけれどね。
でもヒューゴさんが「ビダーソン公爵領でウィローラとのんびり過ごしたい」と言ってくれた。それに素顔をさらした私の周りに異性が沢山集まるのも嫌だからって。そんな心配をしなくても私にとってはヒューゴさんだけなのになぁ。
「『愛の女王』とその伴侶や子供達が全員集まっていたもんな……」
「だって私の卒業式に皆参加したいと言っていたのだもの。それにしても領地に帰るまでの間に、沢山の人からお茶会やパーティーのお誘いが来てびっくりしたけれど……ヒューゴさんを沢山自慢出来たのは良かったわ」
ビダーソン公爵領に帰るまでの間、参加出来るだけのお茶会やパーティーに赴いた。ヒューゴさんより他の人の方がいいのでは? とそんなことを言ってくる人たちも多くいた。とはいえ、そう言う相手にはヒューゴさんがどれだけ素敵なのかを思う存分語ったけれど。
「俺は少し恥ずかしかったがな……」
「ふふっ、照れたヒューゴさんは可愛かったですわ。これから先、私の家のことで過ごし騒がしくはなるかもしれないですけれど、私がヒューゴさんのことを守りますからね」
「ははっ、俺もウィローラに何かあったら全力で守るよ」
「とても心強いです! これから先のことが楽しみですね」
私がそう言って微笑むと、ヒューゴさんは笑ってくれた。
これから先の未来、私が『愛の女王』の娘であることで何かしらの問題は起こるかもしれない。それにどんなことが起こるかというのは分からない。
――だけれどもきっと、ヒューゴさんと一緒なら大丈夫なはず。これから先のことを考えると私は楽しみで仕方がない。
私の愛は、ヒューゴさんのもの。
多分、ヒューゴさんが嫌がってもなかなか手放せないだろうけれど、そのあたりは私の傍にずっといてくれるように行動すればいいだけだものね。
これで終わりです。
設定だけ思いついており、書きたいなと思って書いた短めのお話でした。楽しんでいただけたら嬉しいです。