華麗にやり返しました
10/5一話目
「ふふっ、上手く行きましたわ。ヒューゴ先輩、褒めてください」
結果として二週間後には、すっかり彼らは学園から姿を消していた。というのも私の傍にゾッタリーはいた。私に手を出そうとしたら、ゾッタリーの方にも迷惑が掛かるのは当然のことだ。
ゾッタリーは自身が「公爵家と親戚」であることを隠してはいない。ただし知らない人は知らない。
今回はゾッタリーの方に手を出してもらって、「ビダーソン公爵令嬢の昔から仲良くしている親戚の令嬢」に言いがかりをつけたという理由で処罰をすることに出来た。ちなみにゾッタリーはノリノリだった。
――ウィローラお嬢様の敵は排除します!!
そう意気揚々としていた。……結果として上手く行っているので良しとしよう。
ちなみにだけど何度か謹慎処分後も、反省してなかったので彼らはそれぞれ罰を受けているそうだ。普通に考えて、私の家のことを知っていたら、ゾッタリーが
公爵家の親戚筋だと知れば、手を出そうとしないのが当たり前だ。それなのに凝りもせずに行動を起こすのってなんなのだろうか? 自分が一番偉いとか、そんな風に思っていたりするとか?
「びっくりするぐらい簡単に解決したな。凄い」
「ですよね? お母様から面倒なことはさっさと解決するのが一番だとそう言われていたので、さっさとやったのです。やっぱりこういう時は時間をかけずに行うのが一番ですから」
にっこりと微笑んでそう告げると、ヒューゴ先輩も笑ってくれる。
お母様の教えをきちんと実行出来たことに私はほっとしている。私はお母様からいつも言われていたことがあるの。
自分にとっての敵には容赦をしないこと。大切な物を守るためには大変なことでも頑張るべき。そういったことをひたすら言われ続けていた。
特にお母様は愛を大切にする『愛の女王』だからこそ、好きな人のことを慈しむべきだって散々そう言われていたもの! それはお兄様達や弟達も同様に言われていることだわ。
もし私も含む子供達が恋愛関係で、恋人を蔑ろにでもしようものなら説教を食らうことだろう。それもあって兄弟達は見た目が良くて、沢山の女性たちに囲まれているらしいけれどそういった問題は一切起こしていない。
お母様もお父様達も、怒ったら怖いものね。
「それもそうだが、自分が『愛の女王』の娘だと知られずに解決できるのは素晴らしいことだ」
「だってもし私の血筋のことを知られたら、周りの人たちが騒がしくなるのだもの。思ったよりもずっとお母様は有名人だったから。あ、でも卒業する時にはばらしてもいいけれど」
私はそんな言葉を口にしながら、未来のことを考えると少しワクワクしてくる。
これから先もずっと、ヒューゴ先輩と一緒に居られるんだなと思うとそれだけでとても幸せなことだ。
正直、お母様の娘だからという理由でどうのこうの言われることは好きじゃない。もちろん、お母様のことを賞賛する言葉をかけてくれる人たちの話は幾らでも聞きたいけれど。
だって私はお母様のことが大好きだもの。
「……卒業後か。ウィローラはどうしたいんだ? 俺は魔術や魔法陣の研究はし続けたいとは思っているが、そのぐらいだな」
「そうですね。私はビダーソン公爵領で研究は続けたいとは思いますよ。お母様たちも私達に期待して、支援はしてくれそうですし。とはいえ、全てお母様たちに任せっぱなしは嫌だから誰かから依頼を受ける形にしたり、お店をやったりするのもありだなと思ってますよ。ヒューゴ先輩的には、どうしたいですか? 王宮魔術師になりたいとかあります? それだったら騒がしいのは嫌だけれど、王都生活を覚悟しますけれど」
卒業後もヒューゴ先輩と私が一緒にいるのは、確定。少なくとも私から離れるなんてことはあり得ないの。
こうして将来も一緒にいるのが当たり前、というのを示し続けた方が押し切れそうな気もするもの。
「どれも楽しそうだ。でもウィローラが嫌がることはしたくないし、問題ないならビダーソン公爵家で過ごす方がいいとは思うが。それにお店などをするのも、いいな。それでひそかに人気とかになるのもいいことだと思う」
「ふふ、ですよねぇ。会員制みたいな感じで、限られた人だけが来られるようにするとか。お店の準備もぼちぼち在学中に進めておくと楽かもですね。立地の場所とか、どんな商品を売りに出すとか……そういうの先につめとくと将来楽かもです」
卒業後のことを考えながら、出来る事ならさっさと行動しておいた方が良さそうだなと思っている。
だって卒業してすぐに事業を進められる方がきっと楽だわ。お母様たちは私のことを可愛がってくださっているけれど、ただ甘やかすだけでもないから。
私がだらだらと過ごしていたら咎められたりはすると思う。お母様やお父様達に何かあった時に何かがあった時に一人でも生きていけるようにって教育はされているから。
「そうだな。それも俺が卒業するまでに考えるか……。俺の方が先に卒業するからな、その間の一年も。先にビダーソン公爵領に向かってもいいが」
「え、嫌ですよー。ヒューゴ先輩と一年離れている状態って悲しいですし」
「ならちゃんと考えないといけないな」
ヒューゴ先輩はそう言って笑ってくれた。
ヒューゴ先輩との明るい未来のために、色々考えないと!