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私の本来の姿と、これからの話

「ウィローラ・ビダーソン……」

「はい。そうですよ」



 私はそう言って、にっこりと笑いかける。



 ヒューゴ先輩の反応が少しだけ怖かったりするけれど、私は結婚の約束などをするのならばちゃんと私のことを知って欲しかったから。




「……ウィローラ。俺は、君を他の男と共有するのは嫌だ」

「あれ、もしかして私がお母様みたいに複数人夫を持つかもと思ってました? そんなことはないので安心してください。お母様は確かに『愛の女王』と呼ばれてますし、お父様達と仲良しで、それを見ているだけで幸せな気持ちにはなるわ。だけれど、私は相手は一人がいいです。だから、私のたった一人の夫になって欲しいのです」



 お母様が『愛の女王』と呼ばれているからこそ、こうして私も同じような結婚をするのではないかと誤解されてしまうことが多々あるわ。



 だからちゃんと説明をしないといけないの。

 誰よりもヒューゴ先輩に誤解されるのが嫌だわ。





「そ、そうか。ならよかった」

「それで他に聞きたいことあります?」

「聞きたいこと……俺で、いいのか?」

「もちろんですよ。私はヒューゴ先輩の描く美しい魔術や魔法陣が大好きなんですよ。見ていて惚れ惚れします。ただそれだけではないですけれどね。ヒューゴ先輩の雰囲気とか話し方も好きです。一歳しか変わらないのに落ち着いた雰囲気があって、好きだなってそう思ったんですよ。ヒューゴ先輩的には、私の見た目どうですか? 姿を偽っていたわけですけれど、可愛いって思ってくれます?」




 ヒューゴ先輩が好きだと思ってくれたのは、あくまで変装して、姿を偽っている私である。

 私の素顔は一般的に可愛いと言われているけれど……ヒューゴ先輩にとってはどうなんだろう?

 この桃色の髪も、黒い瞳もヒューゴ先輩にとっては可愛いと思ってくれるものだといいなとそればかり考えている。




「……可愛いと思っている」

「本当ですか?」

「ああ。見た目を抜きにしても、俺に笑顔をいつも向けてくれてて、魔術や魔法陣に夢中になっている姿とか可愛いと思っていた。それににお……」



 そこまで言ってはっとした様子で口を閉じるヒューゴ先輩。

 もしかして今、匂いって言ったのかしら。知らないうちに匂いをかがれてた? と驚くものの、別に好きな人相手なら構わない。




「私の匂い好きなんです? 嗅ぎます?」

「ぶっ、な、何を言っているんだ」

「私は好きな人から匂いをかがれるのは問題ないので。他の相手なら問答無用で拒否しますが。ヒューゴ先輩は家族以外で唯一、私に幾らでも触っていい人ですからね?」



 私は常に領地では魔術や魔法陣の研究ばかり行っていて、接する人も限られていた。両親や兄弟達は私に近づく人間には結構警戒していたし。私自身はそういう家族の対応を嫌だとは思っていなかった。

 もちろん、私が仲良くしたい相手を近づけさせないようにすることをされたら怒ったけれど。皆、そんなことはしないし。



「……」



 私の言葉を聞いて、顔を赤くして固まっているヒューゴ先輩。




「ヒューゴ先輩?」

「……あまり煽らないでくれ。我慢できなくなるだろう」

「ふふっ、我慢は要りませんよ? お母様は好きな人を逃さないように婚前交渉しても構わないと言われてますし」

「そうか。……でも俺はウィローラを大切にしたいから、そういうのはちゃんと順序を踏んでからな」

「なら、その時のことを楽しみにしてますね?」




 私がそう言って笑うと、ヒューゴ先輩は呆れた顔をしながら笑っている。



「ところで、ヒューゴ先輩。私はお母様の再来とか言われているあの令嬢のこと、あんまり好きじゃありません。ですからヒューゴ先輩も近づかないようにしてほしいのです。私と結婚してくださるのでしたら、他の女性と接近するのはやめていただきたいの。私は……あなたが他の人と近づいているのは嫌だから」

「もちろんだ。今後は抱き着かれるような真似はしないようにする」

「そうしてください。あの人、お母様の再来なんて周りが好き勝手言っているけれどそんなことないんですよ。お母様はあんなに見境なくないですし、婚約者がいる状況の男性と恋仲になったりなんかしないです。それにあの方は周りの男性に頼ってばかりで、どうやら養われる気らしいですもん! 成績も徐々に悪くなってますし、あの子のためにって周りの男性達がサボり癖がついたり、異様に貢いだり……あれが『愛の女王』とその夫たちと同じだと誤認されるのが許せません。だって私のお母様とお父様達は……あんな風ではありません」



 本当に複数人を恋人にすることに関しては、勝手にすればいいとは思っている。ただどうしてそこにお母様とお父様達のことを絡めることだけは本当に嫌だ。




「ウィローラは家族の事が好きなんだな」

「とても大好きですわ。私の自慢の家族なんです! 今度、ご紹介しますね?」


 私がそう言ったら、ヒューゴ先輩は頷いてくれた。




「君の家族に紹介してもらえるなんて楽しみだ。……ただ、我が家は騒がしくなるかもしれない」

「というと?」

「俺が君の婚約者に相応しくないと。寧ろ兄達の方と結ぶべきだと進めてくる可能性はある」

「あら、もしそんなことをほざくようでしたらありとあらゆるものを使って断りますからね? 私を敵に回したことを後悔させるので」



 私がそう言って笑えば、ヒューゴ先輩は笑ってくれた。


 ああ、好き!! その笑顔をずっと見ていられるとか、私は幸せ過ぎる。


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