第39章:アンデッド
現場は大混乱だ。あいつらは完全に俺たちを不意打ちしてきた。[メタ]を使っていても、攻撃されるまで全く気づかなかった。
俺たちは他のグループから少し離れていて、事実上分断されている。遠くから前衛の戦いが見えるが、あのモンスターたちに苦戦しているようだ。
だが、あいつらが互角の力を持っているなら、こっちは圧倒的に数で不利だ!
俺は治癒魔法を使っているレットの前に立っている。だから、他を助けに行くわけにはいかない。レットが無防備な状態で危険にさらされてしまうからだ。
すると、4体のモンスターが俺を見つけ、ゆっくりと近づいてくる。俺は構えを取りながら、そのモンスターたちを観察する。
黒く光る骨の身体に、紫とピンクのクリスタルが全身、特に手にかけて生えている。それがまるでクリスタルの籠手のように見える。不気味すぎて、さすがに俺も冷や汗をかいた。
レットは怪我をしているから、ここは俺一人で何とかするしかない。長引かせたら数で負ける。だから、できるだけ早く4体を倒さないと。
1体が跳びかかり、爪で引っ掻こうとしてきたが、俺は剣の平らな部分で受け止め、力いっぱい押し返す。
ウゼン「ラァァァ!!」
俺は、巨大で重い剣を全力で振り、骨の怪物を真っ二つに斬り裂く。
残りの3体が一斉に俺に襲いかかってくる。三方向からの攻撃は厄介だ。左のやつは一旦無視して、他の2体を先に倒す。
2体の攻撃をギリギリでかわすが、左のやつのパンチが俺の肋骨にヒットする。だが、右のスケルトンを刺し貫き、もう一体には拳を叩き込むと、その場で粉々に砕けた。
さっき殴ってきた左のスケルトンが、自分の拳を見て困惑している。拳が凍っているのに気づいたようだ。俺はニヤリと笑って、刺したままの剣でそいつを叩きつけ、2体まとめて粉砕した。
ウゼン「はぁ……(ため息)」
剣を見つめて、ヒビが入っていないことに安堵する。これまで作った剣はすぐに壊れたが、今回は莫大な魔力を注ぎ込んで作った俺の最高傑作だ。
重くて大きいが、簡単には壊れない。
剣を見て油断していたその時、影からもう1体のスケルトンが現れ、死角から攻撃してきた。気配を感じたのは、ほんの直前だった。俺は目を閉じて、覚悟を決める。
だが突然、槍が飛んできて、その頭を貫く。スケルトンはそのまま崩れ落ちた。
レット「遅れてごめん! それと、守ってくれてありがとう、新入り!」
俺は思わず笑ってしまう。なんて迷惑なやつだ。
ウゼン「気にするな。さあ、他の連中を助けに行くぞ!」
彼は頷いて、ものすごいスピードで仲間たちが戦っている方へと駆け出した。
2体のスケルトンを一気に串刺しにし、そのまま横に投げ飛ばす。
???「レット!どこ行ってたんだよ!?」
男が叫んでくるが、今は口論してる場合じゃない。俺は空高く跳び上がり、地面に手を伸ばす。すると、複数の石の槍が地中から突き出て、スケルトンたちを貫いた。
そのまま空中で周囲を確認する。
冒険者たちは苦戦しているようだ。1体倒すのに2撃以上必要で、その間に別のスケルトンが邪魔をしてくる。
結果として2対1の不利な戦いになっている。だが、今見たいのはそれじゃない。戦闘になった以上、イアオンも戦っているはずだ。
俺たちがオロギスと戦う可能性があるなら、今ここでイアオンの戦闘力を見極めておきたい。
そして彼を見つけた時、俺は絶句した。
仲間から少し離れた場所で、スケルトンを素手で卵のように潰している。
彼の足元にはすでに大量の骨の残骸が転がっていた。
その時、彼の背後の壁が崩れ始め、12体のスケルトンが上から降ってきた。
ウゼン「後ろだ!!」
彼は振り向き、背中から斧を取り出し、スケルトンに向かって振るう。
イアオン「《クラスターアッシュ》!!」
斧が青白く光り始め、そして一気に爆発、全てのスケルトンを吹き飛ばし、洞窟全体が少し揺れる。
こいつバカか!? こんな狭い場所であんな大技を!? 俺たちを押し潰す気か!?
幸いにも、揺れはすぐに収まった。よし、こいつの戦力は確認できた。次は残りのスケルトンを片付けよう!
その後の戦闘は特に語る価値もない。大したことはなかったし、20分ほどで片付いた。
問題だったのは、スケルトンたちが異常に硬かったことと、数が多かったことだけだ。こいつら、*魔獣*クラスのはずなのにな。
あ、そうだ。今思えば、[エイドン]を使って種族を調べればよかった。まだ死体は残ってるから、今からでも遅くはない。
俺は死骸に意識を集中し、スキルを発動させた。
[エイドン]「『クリスタル・アンデッド』。強い魔力を吸収した死体が、モンスターとして蘇ったもの。生前が強ければ強いほど、蘇った時の種族も上位になる。」
……ってことは、こいつらって、このダンジョンで死んだ冒険者たちなのか?
以前リーエスが言ってた。死体を焼かないか、聖属性の魔法を使わなければ、アンデッドかファントムになるって。
さらに、強い魔力が死体に染み込んでいれば、その魔力の性質に応じたアンデッドになる。これは重要な情報だ。
辺りを見渡すと、負傷していない冒険者たちが、骨を調べて小さな光る石を取り出していた。
ウゼン「レット、あいつら何してるんだ?」
レット「マジで知らないの? それでよく冒険者名乗れるな?」
レット「あれは魔力核を回収してるんだよ。モンスターのエネルギー源だ。冒険者たちはモンスターを倒した後、あれを回収してギルドに売る。ちょっとしたボーナスみたいなもんさ。」
なるほど。ギルドの依頼をこなせば報酬が出て、さらにモンスターの残骸を売れば追加で金が手に入るってことか。
……これは問題だな。ガリアが言ってたけど、オロギスの「エーテル結晶」は魔力核だ。
つまり、もしオロギスを倒したら、戦利品を分け合うことになる。その中でも、エーテル結晶は絶対に誰かが狙う。
……となると、俺は誰にも気づかれずに先に取るか、後で盗むしかない。
まあ、今悩んでも仕方ない。勝った後に考えればいい。
回収が終わり、負傷者の治療も済んで、俺たちは再びダンジョンの奥へと進んでいった。
――そこで、俺たちは思いもよらない 最悪の存在 に出くわすことになるのだった。