第34章:鍛冶職人ガリア、小さなドワーフ?
俺たちはもう1時間近く馬車で走っている。ガブリエルに手綱を任せたからてっきりガリアの所へ向かっていると思っていたが、どうやら違うようだ。彼の顔を見るだけで、完全に道に迷ってるのがわかる。
ウゼン「ガブリエル、お前迷ったのか?」
彼は小さくビクッとして、後ろを振り返って怒ったように言う。「おい、俺のせいじゃないって!」
キウイ「無理もないよ。この街は巨大だし、前に来たことがあるっていっても道を正確に覚えてるとは限らないし。誰かに聞いた方がいいんじゃない?」
ウゼン「そうだな、君の言う通りだ。鍛冶屋なら冒険者に聞くのがいいかもな。」
二人はうなずき、それからしばらく探し回った後、冒険者らしき人物を見つけた。でもその人、がっかりしたような、落ち込んでるような顔をしている。大丈夫かこの人?
ウゼン「すみません、お嬢さん。ガリアという鍛冶職人の工房がどこにあるかご存知ですか?」
彼女は疲れきった顔で俺を見つめる。
冒険者「はぁ、あの男を探してるの?この道をまっすぐ行って、小道に入ると、彼の工房が見えるわ。でも忠告するけど、あいつはやめといた方がいい。他の鍛冶屋を探しなさいよ。じゃないと、あのケチはあんたたちの金を根こそぎ持ってくわよ。」
そう言って彼女は背を向けて立ち去った。ガリアさん、いったい何をやってるの?みんなに嫌われてるじゃん!
でも正直、無愛想なドワーフの鍛冶屋なんてファンタジーの典型的なテンプレだよな。でもアイロン先生がわざわざ推薦したんだし、信じるしかない。
ガブリエル「見たか?迷ってたんじゃなくて、距離感がなかっただけなんだ!」
こいつ、俺の言ったことそんなに気にしてたのか?
ウゼン「前に会ったって言ってたけど、どうだった?」
ガブリエル「正直、超ムカつくやつだったけど、間違いなく最高の鍛冶屋だ。俺が武器を作ってもらおうと思って訪ねたんだけど、素材にすごくうるさくて、俺の戦い方には防御が足りないって言って、盾を作れって言われたんだよ。」
ガブリエル「結局、強力な武器を作るために貯めてた金は、全部小さくて使いにくい盾に消えた。まあ望んでたものではなかったけど、その盾はかなり頑丈でさ。俺より弱い魔法攻撃なら全部吸収して反射してくれるんだ。」
うーん、確かに強いけど、もっと強い敵には通用しなさそうだ。とにかく、俺はそんな目に遭いたくないな。
ガブリエル「ま、とにかく覚悟しとけ。交渉も会話も一方的で大変だぞ。それにたぶん、会ったらびっくりするだろうな。」
それ聞いてますます不安と緊張が増すんだけど…。
数分後、目的地に到着した。俺はこの文字を見たことがないけど、「異世界からの侵入者」の称号のおかげで、内容は読める。
驚いたことに、外から見るとただの武器屋に見える。でも少し高さがある。ショーウィンドウもドアも大きくて、ドアノブなんて俺の胸の高さにあるぞ。
ここ違うんじゃないか?こんなドア、ドワーフが開けられるわけない。でも看板には確かに「職人ガリアの鍛冶屋」って書いてあるし、とりあえず中を見てみよう。
俺は馬車から降りて、キウイを背負う。
キウイ「重くない?」
ウゼン「全然。俺のことは気にしなくていいよ。」
ガブリエルが先に行ってドアを開ける。中に入って俺はアホ面になる。天井がめちゃくちゃ高い。4メートルくらい?これ、もはやホールか倉庫じゃん。なんなんだよコレ…。
キウイ「本当にここで合ってるの?なんか怖い…。」
彼女の冷や汗が背中越しに伝わってくる。大丈夫、俺もまったく同じ気持ちだ。
ガブリエル「おーーーーい!!誰かいませんかー!」
キウイ「ガビ、本当にそんな大声で叫んで大丈夫なの?」
…いつの間にそんなあだ名で呼ぶようになったんだ!?
???「女の声だとおおおおお!?誰だてめぇらはぁあああ!!」
突然、ものすごく低くて響く声が響き渡り、カウンターの奥のドアから毛むくじゃらの巨大な腕が現れた。
???「んん!?てめぇらガキどもは誰だ?」
バカみたいにデカい男がドアから出てきた。屈まないと通れないぐらいで、たぶん3メートル半くらい?
30代くらいのおっさんに見える。ちょっと長めの髪に、濃いヒゲ、暗い色のサングラスっぽいメガネをかけてる。上半身は革のエプロン一枚、下はゆるいズボンとゴツいブーツ。
キウイ「きゃあああああああああああ!!!」 ウゼン「うわああああああああああ!!」
キウイの叫び声にびっくりして、俺まで叫んでしまった。
???「うるせええええ!!!お前ら誰だってんだよ!!!」
ガブリエル「久しぶりだな、ガリア。俺のこと覚えてるか?」
ガリア「ああ、お前は7年前の生意気ガキか。俺の盾、ちゃんと役立ってんのか?」
ウゼン「えええ!?今なんて?ガリアってドワーフじゃなかったのか!?」
ガブリエル「あー、そうだったな。紹介しよう。こいつが鍛冶職人のガリアだ。」
何を普通に言ってるんだよ!?お前正気か!?
キウイ「これのどこがドワーフよ!!ガビ、目でも悪くなったの!?」
まったく同じこと考えてた。
ガリア「てめぇらほんと無礼なガキどもだな。俺は“ハーフ”だよ。二つの種族のハイブリッドってやつだ。母親が巨人で、父親がドワーフだ。で、俺はドワーフ寄りだからドワーフってわけ。」
ガリア「で?てめぇら、俺に何の用だ?」
ウゼン「あ、無礼をお詫びします。あまりにも驚いてしまって…。俺の名前はカイドウ・ウゼン。師匠からの手紙を届けに来たのと、武器を作ってもらいたくて来ました。」
俺の真似をして、キウイも背中で頭を下げる。
ガリア「ほう?で、その師匠ってのは誰だ?」
ウゼン「アイロンという名の方です。これがその手紙です。」
俺はキウイを近くの椅子に座らせ、リュックから巻物を取り出して彼に手渡す。……てか、なんで手紙がこんなにでかい巻物なんだよ。
彼はそれを受け取って、黙って1分ほど読み、それから俺に向き直る。
ガリア「よし、中で話そうか。」