第25章:旅の始まり
リンドンからすでに数時間が経っていた。ちょうどバートラーら三人を倒した地点を通り過ぎ、森の中へと入ったところだ。
時折振り返り、キウィの状態を確認する。念のため、回復魔法もかけておく。
ライスとアイアンに教えられた道を進むのが最善だろう。街に着けばキウィを置き、それぞれ別れるつもりだ。
「……だが、それまでに彼女は目を覚ますか?」
まあ、心配しても仕方ない。旅は三日ほどかかる。その間に覚めるはずだ。
森を進むうち、木々の生い茂る葉の隙間から漏れる陽光が次第に弱まっていく。太陽そのものは見えないが、光の加減で時間がわかる。
「……ここで野営するか」
道端に倒れた大木がある。これを背にすれば不意打ちを防げる。【メタ】がある今、襲われる心配は少ないが……。
馬を止め、荷から外して休ませる。夜の森は暗く、冷え込むに違いない。現代のように街灯もない真っ暗闇は初めてだ。
「火を起こそう」
キウィを馬車から降ろし、倒木のそばに寝かせる。近くの枝を集め、焚き火の準備をする。彼女が風邪を引かないよう、体の近くに配置。火魔法で点火し、干し肉を齧りながら彼女の傍に座る。
食事をしながら、ステータスを確認する。
「レベル15の時点でかなり強かったはずだ。アルローズとの戦いを思い返せば、ある程度互角に戦えた。なら、今は30近くあるか……?」
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【名前:カイド・ウゼン】
【レベル:20】
【スキル:[テナチ]、[インファイター]、[エイドン]、[痛覚耐性Max]、[メタ]、[集中]、[魔力制御Lv3]、[ラース]、[レイジフィスト]、[オーラバースト]】
【魔法:土操作、火球、土移動、氷結、炎加速、魔導砲、レイジカノン、最大治療】
【装備:―】
【称号:異世界侵攻者、邪神の玩具、生存者、憤怒の統治者Lv3、無能者、七つの大罪】
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「思ったより伸びてないが……それでもかなり強くなったな。それでもキウィには及ばないが」
いくつかの項目に不気味な名称が並ぶ。
「……『統治者』とか『大罪』って、あの時の声に関係あるのか?」
まずは最も禍々しい称号を確認する。
**【憤怒の統治者Lv3】**
この称号を有する者は「罪と混沌の統治者」の一角となる。憤怒のシステムに対する絶対的支配権を獲得し、物理・魔法攻撃力が異常上昇。さらに成長速度に多大な影響を与える。レベルアップ時は憤怒系スキルを付与。
「……チートか!? アルローズに立ち向かえた理由がわかった」
レベル以上の力を発揮できるわけだ。[インファイター]や[異世界侵攻者]と同じく、成長補正もついている。スキル追加も魅力的だが――「罪のシステム」とは何か?
【エイドン】は説明不能とのこと。
「……まあ、いずれわかるだろう」
新規スキルのうち3つは「憤怒」または「炎」に関連している。[憤怒の統治者]の影響か?
**【ラース】**
使用者の物理・魔法攻撃力を絶大に強化する代償に、狂乱状態に陥れ、敵味方の区別を不能にする。
「……これは封印だ。使い物にならん」
**【オーラバースト】**
炎のオーラで自身を包み、攻撃力・魔法力を強化。火属性魔法の威力も上昇。
「バフ魔法ばかりか? 攻撃魔法が欲しかったが……」
**【レイジフィスト】**
腕と拳を炎で覆い、物理攻撃を極限まで増幅。[加速拳]を吸収し、連続攻撃が可能に。
「こいつは使える。複数の攻撃方法もありそうだ」
【メタ】が【魔法感知】を吸収したようだが、問題ない。さらに変わった魔法も一つ。
**【レイジカノン】**
憤怒の統治者専用魔法。魔力を複数倍に増幅し、対象に壊滅的ダメージを与える。
「……まあ、これで戦える」
他には【氷結】を訓練中に習得した。触れた物体の温度を急激に下げ、凍結させる能力だ。
ステータス確認を終える頃には、辺りは真っ暗だった。焚き火を作って正解だ。キウィも寒そうではない。
次の行動を考える。
「あのクソ野郎を殺すのは確定だ。だが……今の俺にできるか?」
同時に、この世界をもっと知りたい。異世界に転移した以上、探索する価値はある。
「……わかった」
旅をしながら鍛え、強力な仲間も得る。
「決めた。俺は旅に出て強くなり――あの帝国を必ず滅ぼす!」
(次の章へ続く)