第22章:覚醒
私は全力で加速している。現在は【閃火加速】という、足が地面に触れるたびに爆発を起こす魔法を使っている。
王都まであと少しで、城門が完全に破壊されているのが見える。上を見上げると、計算が狂っていた。ドラゴンはもう広場の真上にいる…さらに加速する。
その時、思いついた。【感覚潜入】が届く範囲内かもしれない。ドラゴンの強さを測るために使ってみよう。
スキルを発動すると、感覚が拡張しドラゴンに届く。接触した瞬間、激しい頭痛に襲われ、よろめいて地面に倒れる。
「二つの存在」を感じたが、完全に理解不能だった。ううっ…!
【感覚潜入】に異常発生。スキル破損確認。対処開始──
奇妙な声が頭に響く。カルマディオスや【英眼】とは全く違う声だ。これは何だ?
「異常対処不可能。第二対策開始、スキル消去。対象に『罪の支配者』クラスの権威保護を確認──」
何を言っている?罪の支配者?どういう意味だ!?
「プログラムエラー排除のため第三対策開始。スキル上書き──」
【英眼】:スキル【感覚潜入】が最大レベルに上昇
【英眼】:スキル【存在感知Lv.Max】を習得
【英眼】:条件を満たしました。【感覚潜入Lv.Max】と【存在感知Lv.Max】が吸収され、スキル【超感覚】に進化します
【英眼】:スキル【超感覚】の習得に成功
「異常排除完了」
頭の中で何かが起きているが、痛みで思考がまとまらない。
【超感覚】:全ての感知スキルの最終進化形。第六感とも呼ばれる。
頭痛が収まり、説明が浮かぶ。そうか…これか?
試す価値はある。
意識を拡張すると、周囲の全てが感じ取れる。ドラゴンに集中すると、視界がかすむ。
感じ取れるのは、空に浮かぶ「虚無」だ。まるで空虚で暗い穴のよう。
その真下で、アイアンとキウィの魔力を感知する。不吉な予感がして、さらに加速する。冷汗が頬を伝い、城壁に到達する。
城壁を飛び越えながら【超感覚】を使うと、数千の存在が次々と消えていく。殺されているのだ。くそっ。
歯軋りしながら…キウィの強力な魔法がドラゴンに向かい、アイアンがキウィに魔法をかけているのを感知する。
顔が青ざめる。ドラゴンの口に強大な魔力が集まり、炎の柱となってキウィたちのいる地点を襲う。
「アイアアアアーン!!!」
叫ぶが、遅すぎた。アイアンの気配が消え、炎は水のように広がり、王国全体を飲み込む。
衝撃波で吹き飛ばされ、数百メートル先に落下する。王都から放たれる異常な熱を感じながら、意識が遠のく。
数分後、飛び起きる…城壁を見上げると、一部は溶け、一部は爆発で破壊されている。
巨大な白煙が王都全体から立ち上っている。炎は既に消えたようだ。スキルによる攻撃だったからだろう。
城壁を飛び越え、内部に入る。目の前には灰の砂漠が広がっている。冗談だろう…?悪夢に違いない。ありえない。完全に狂っている。
アルローズの気配をドラゴンの上に感じる。あいつが全てを破壊したのか?味方まで殺したのか?
かつての広場と訓練場に向かう。当然のように、そこも灰の砂漠と化している。しかし、一つだけ違うものがある。
訓練場の中央に、白い長マントと金色の鎧、翼のついた兜を被った男が立っている。
アルローズだ。間違いない。
血が沸騰する。彼はこちらの方に振り向く。
「おや、生き残りがいたか?あの攻撃で蛮族も兵士も全滅したと思ったが…この服装とオーラ…蛮族ではないな?」
「陛下は蛮族だけを殺せと命じた。お前には関係ない。生かしておこう」
「このクソ野郎がァァァァ!!!!」
我を忘れて跳びかかる。上から踵落としを放つ。
彼は片腕で防ぎ、周囲の地面が割れる。衝撃で灰が舞い上がる。
「殺すつもりも戦う気もないと言ったのに、何が問題だ?」
足首を掴まれ、ぬいぐるみのように投げ飛ばされる。彼は凍った手を見て、再びこちらの方を見る。
「ああああああああああ!!」
天に向かって叫ぶ。周囲の空気が重くなり、魔力が漏れ出す。もう考えるのはやめた。ただ殺したい!!
【英眼】:条件を満たしました。スキル【憤怒】を習得。所持者の精神状態により、【憤怒】に異常発生
「継承運命を確認。『憤怒の支配者』権威取得を許可。<確認済み> 海道ウゼン、新たなる憤怒の支配者となる」
うるさい。頭の中が騒がしい。黙って死ね!!
「ああああああ!!」
二度目の叫びと共に、炎のようなオーラが全身を包み、爆発的な力が沸き上がる。
どうでもいい…あいつを殺せれば!!