第21章:ある少女の陥落(サイド:キウィ)
私たちは勝ったのだろうか?私はアートラの遺体の横に座り込み、深いため息をつく。
あの指導者の助けがなければ、私はすぐに殺されていただろう。
立ち上がり、彼に近づく。他の兵士たちは怯えた目で私を見つめるだけだ。私に襲いかかっても無駄死にするだけだと悟ったのだろう。
指導者の真前に立ち、【アトロヒール】――通常のヒールより強力な回復魔法をかける。
**(キウィ)**
「ありがとう、おじさん。あなたなしでは勝てませんでした。さあ、行きましょう。まだ倒すべき敵がいて、この街を守らなければ」
手を差し伸べると、彼は微笑み、手を握り返して立ち上がる。
**(アイアン)**
「ああ、行くぞ――」
**(アルローズ)**
「なんて面白いことを言うんだ、司令官?」
魂まで凍りつくような声が頭上から響く。顔を上げると、恐ろしい光景が広がっていた。
**(アルローズ)**
「お前が部隊を率いてこの街を攻撃し、数千人を殺しておいて、今さら残りを救うと言うのか?実に滑稽だ」
**(アルローズ)**
「哀れなアートラめ…虐殺の罪人を止めようとして命を落とした…誠に残念なことだ」
その声の主は帝国最強の一人で、冷酷な策士だ。だが最も恐ろしいのは彼ではない!
彼が乗っている、ゆっくりと降りてくるドラゴンの方だ。頭部には仮面のような黒い鱗、全身には鋭い赤い鱗が輝く。二足歩行で腕はなく、巨大な翼が風を巻き起こす。
私はこのドラゴンを知っている。"災厄の竜"バハムートの四子の一つで、皇帝の寵愛を受ける"流星"の一柱――カリスト!!
**(キウィ)**
「アルローズ!なぜここに?あなたは去ったはずでは?」
**(アルローズ)**
「それはお前へのテストの一部だった。見事に失敗するとは、実に失望させてくれた」
**(キウィ)**
「アルローズ、お願いだ!この虐殺を止めて!あなたがどれほどの惨劇を引き起こしているか分からないのか?」
**(アルローズ)**
「はあ…無知とは実に幸せなものだ。皇帝が言うように、何も知らぬ者は楽に生きられる」
何を言っているのだ?今は考える時ではない。この最悪の状況から脱する策を練らなければ。帝国最強の兵器と、その背に乗る最強の戦士が、私たちを殲滅しようとしている。早く考えろ、何か方法があるはずだ!
**(アルローズ)**
「お前には理解できまい。この争いも、これらの死も必要不可欠なのだ」
彼の言葉に怒りがこみ上げる。すぐにでも彼の喉笛に飛びかかりたいが、それはできない。くそっ。
**(アルローズ)**
「もう話しすぎたようだ。そろそろ終わりにしよう」
彼が手を上げると、底知れぬ殺気が降り注ぐ。
**(アイアン)**
「待て!一つ聞かせてくれ。皇帝とは何者だ?なぜあいつに従う?」
アルローズは指導者の言葉に一瞬止まり、攻撃を躊躇う。
**(アイアン)**
「どうした?運命が決まった者からの質問が怖いのか?」
挑発に乗り、アルローズは手を下ろして彼を見下ろす。
**(アルローズ)**
「確かに。死ぬ前に知っておく権利はある。どうせここから出る情報ではない」
**(アルローズ)**
「皇帝は全てを知り、全てを行う者だ。その好奇心と快楽を止めるものはない。世界で最も強力でわがままな子供のようだ」
**(アルローズ)**
「彼は世界の均衡を保つ存在だからこそ、これらの行為を行う。全ての争いには目的がある。私は彼が唯一の友人で、私を信じてくれたからこそ、地獄へでも付いていく」
**(キウィ)**
「目的だと?ふざけるな!もし正当な理由があるなら、皇帝が自ら人を殺せばいい!汚れ仕事を他人に押し付けるな!結局あいつもこの世から消えるべきゴミなんだ!!」
私は怒りに震えて叫ぶ。生き延びるためには冷静であるべきだが、こんな主張を聞き流せるか!
**(アイアン)**
「待て、少女!」
私は前方に躍り出て、【ファイアボール】を強化して放つ。しかしアルローズは手で軽々と受け止め、握り潰す。
**(アルローズ)**
「正しい。だがお前は何も理解していない、愚かな娘よ。偉大な皇帝を裏切り、義務を放棄し、敵を助け、味方を殺した!」
背筋が凍る。ドラゴンが動き出し、口前に火の玉が現れる。
**(アルローズ)**
「今朝言ったことを覚えているか?失敗した場合、お前の周囲の者たちまで罰せられると」
彼の言葉で血が沸騰する。集中力が途切れる。ここで彼を倒さなければ、無関係な者まで巻き込まれる。
**(キウィ)**
「くたばれ!【魔力操作】【流動制御】【大爆発】!!」
全魔力を注ぎ込んだ魔法をドラゴンに向けて放つ。
**(アイアン)**
「これはまずい、逃げろ少女!!」
**(アルローズ)**
「やれ、カリスト。この地を無に帰せ!!」
悪寒が走り、【聖なる障壁】を展開。アートラの剣とレイピアを構える。
指導者が叫ぶが、もう遅い!彼は土の魔法で分厚い半円形の障壁を作る。その瞬間、カリストが地獄の柱のような炎を吐き出す。
炎の範囲は広大だ。兵士たちを見て心の中で謝罪する。私が彼らの死を招いた。
私の魔法は爆発し、ドラゴンの攻撃の一部を防ぐが、ほとんど意味がない…体の内側から燃え上がる感覚と共に、意識が遠のいていく。
鎧は溶け、肌に張り付く。レイピアも同様だ。そして私は気を失う。
これが私の最期か?
巨大な火柱が街を飲み込み、炎の海と化す。
ついに、炎は街全体を焼き尽くした。