第2話: 処刑と転移
前回は少年「海堂右善」の過去と悲劇的な運命が描かれました。今回はその続きをお届けします。
**（カルマディオス）**
「俺は邪神カルマディオスだ。よろしく、ウゼン君。君のことはずっと観察してたんだ」
**（ウゼン）**
「カルマディオス？ 神だと？ 一体何が起こってるんだ？」
**（カルマディオス）**
「うーん、ちょっと違うかな。俺は君のことを長い間知ってるけど、君にとっては初めてだもんね。変な感じがするなら、『カルマ』って呼んでくれてもいいよ」
**（内心のウゼン）**
*"こいつは何を言ってるんだ？ 何が起こってる？ ここはどこだ？"*
必死に周囲を見回す私。そんなパニック状態の私を、カルマと名乗る男はバカみたいな笑顔で眺めていた。
**（カルマ）**
「まあまあ、そんなに慌てなくてもいいよ。心配するな、ちゃんと全部説明してあげるから」
そう言うと、カルマは岩から飛び降り、私に向かって歩いてくる。すぐ目の前まで来ると、指を私の額に近づけた。
**（カルマ）**
「さっきも言ったけど、君、海堂ウゼンは襲撃を受けて処刑され、死亡した。普通の死後の過程の中で、俺が君の意識と魂を回収して、再結合させた。それから、君を世界の狭間『境界』で少し休ませて、安定したところで体を再構築し、魂を戻した。で、俺の神域に連れてきたってわけ」
信じられないことを次々と口にするカルマ。まるでそれが当たり前だと言わんばかりに。
**（ウゼン）**
「俺が死ぬ前から観察してたってのか？」
**（カルマ）**
「ああ、その通り」
**（ウゼン）**
「じゃあ、お前は俺が拷問されてるのをただ見てただけで、その後で復活させたってことか？ なんだ、罪悪感か？」
**（カルマ）**
「うーん？ そうじゃないな。君の魂は珍しいんだ。個人的な興味と仕事の都合で、今は君を死なせたくない。でも、元の世界に復活させるのはルール違反なんだ。だから、提案がある！」
最初は楽しそうに話していたカルマの声が、急に真剣なトーンに変わった。
**（ウゼン）**
「提案？」
**（カルマ）**
「簡単だ。元の世界には戻せないから、代わりに別の世界に送る。どうだい？」
**（ウゼン）**
「別の世界？ 異世界転移とか、最近流行りのあれか？」
**（カルマ）**
「まあそんな感じだな……とにかく、どうする？ 10年以上奪われていた平穏を、そこで取り戻せる。いい取引だろ？ 君は生き続けられるし、母親との約束も果たせる」
その言葉に、私は胸を締めつけられるような感覚に襲われた。母親のことを思い出す。彼女の死は間接的に私の責任だった。せめて、彼女の分まで生きるべきだったのに、結局私も死んでしまった。
**（ウゼン）**
「俺は死んで、世界の狭間にいたんだよな？ 他の死者とも会えたのか？ 母親に会うことは……できたのか？」
**（カルマ）**
「残念だけど、無理だ。君がそのままの意識でいられたのは、俺が『肉体』『魂』『意識』の三つを保持したからだ。普通は死んだら、意識と肉体は消え、魂はリセットされて転生の輪に戻される。その過程は１日もかからない。君の母親はもういない」
**（ウゼン）**
「……そうか」
悲しみと後悔のこもった声で呟く。
*"どうすればいい？ わからない。でも、母親は俺が生きてくれたら喜ぶだろう。この自称神の提案を受け入れよう"*
**（ウゼン）**
「わかった、ありがとう。でも、提案を受ける前に、もう少し質問が……」
**（カルマ）**
「悪いけど、もう時間がない。じゃあ、始めるぞ！」
**（ウゼン）**
「待て──！」
突然、カルマが近づき、私の胸を押した。次の瞬間、私は猛烈なスピードでどこかに放り投げられた。先ほどと同じ転移の感覚──だが、今回はそれほど苦しくはない。
飛ばされながら、私は考えた。
*"嫌な予感がする。何かがおかしい。あいつは友好的で親しみやすかったが……なぜ『邪神』と名乗ったんだ？"*
数分後、着地した。眼下に広がるのは緑の平原。吸い込む空気は清々しく、澄んでいる。地面に近づくにつれ、本能的に着地の体勢を取る。
**ドカ──ン！**
衝撃と共に地面に叩きつけられたが、なぜか無傷だ。どうやら、光の力が守ってくれたらしい。周囲を見渡す。背後には高さ30メートルほどの岩壁、目の前には鬱蒼とした森が広がっている。
**（ウゼン）**
「これが……新しい世界か。今度は、もっと長く生きてみせる」
ここまで読んでくださり、ありがとうございます。異世界の物語がついに始まります。右善の行く末を、ぜひ見守ってください！
