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第19章:ある少女の憂い - 後編 (サイド:キウィ)*

夜明けと共に、全小隊が行動を開始した。準備を整え、整列して進軍を始める。私は馬の上で先頭に立ち、他の司令官たちも騎乗して続く。


アルローズが歩きながら近づいてくる。


**(アルローズ)**

「命令は伝えた。奴らは全員始末した。私は用事があるので、ここで別れる。進軍を続け、勝利せよ」


**(キウィ)**

「必ず…アルローズ様」


彼はあたかも最初からいなかったかのように消える。速すぎて視認できなかった。これが帝国の将軍か…人格も力量もまさに怪物だ。


リンドン王都・ユークレイに向かって進む。美しい名前だが、数時間後には廃墟となるだろう。


約2時間後、城門に到着する。接近すると同時に、門上の弓兵が射撃を開始。排除命令を下す。


『リル・ローズ』を門に向け、【大爆発】を【魔力操作】で強化し放つ。門は木っ端みじんに砕け散る。


矢の雨を防ぎながら市内に突入する。敵は正面突破を予想していたようで、内部入り口にはバリケードが築かれている。


木製の柵と杭が進軍を阻む。その間も門上の弓兵と内部からの矢石が降り注ぐ。


ついに傍らの司令官の一人が業を煮やし、突撃する。


**(アートラ)**

「【雷光導撃】!!」


剣で空中に軌道を描くように放たれた雷撃が、バリケードと門上の弓兵を一掃する。


破壊されたバリケード越しに、炭化した子供の姿と、真っ二つに斬られた老婆が門から転落するのを見て、胃が捩れる。目を閉じて苦悶の表情でうつむく。


**(アートラ)**

「キウィ司令官、敵を排除しました。分散進軍の許可を?」


顔を上げ、頷く。


**(アートラ)**

「全兵士、前進! 散開して殲滅せよ! 最後の蛮族まで残すな! 最大限の暴力を許可する!」


**(アートラ)**

「キウィ司令官、お疲れのようですので、私が護衛します」


再び頷き、馬を進める。アートラと兵士十名が中心部へ向かう私に付き従う。おそらく敵の主力が集結している場所だ。


進軍中、付随する兵士たちが市民を虐殺していく。目を閉じ、死と絶望の叫びを無視する。


しばらくすると、街は血と灰と炎に包まれる。中心部近くで、短髪の少女が路地から現れ、私に矢を放ってきた。


動揺していた私は気づかず、アートラが矢を片手で受け止める。


**(アートラ)**

「卑劣な蛮族め!」


剣を抜き、馬から飛び降りて少女に突撃する。すると男が彼女の背後から現れ、アートラに向かって走りながら少女を押しのける。


**(リース)**

「クロエ、このバカ! 逃げろ!」


クロエと叫ばれた少女を押しのけ、剣を抜いてアートラに斬りかかる男。だが一瞬でアートラは男を真っ二つにし、少女に襲いかかる。


**(クロエ)**

「リーース!! やめてえええ!!」


アートラの剣が少女の胸を貫き、背後に壁に突き刺さって固定される。


**(アートラ)**

「【雷撃】」


**(キウィ)**

「やめ──」


止めようとするが、言葉を飲み込む。魔法発動と共に閃光と轟音が響き、少女は灰となった。


吐き気を堪える。


アートラは壁から剣を引き抜き、馬に戻り進軍を促す。再びうつむき、馬を進める。


中央広場に着くと、既に兵士たちが市民と交戦中だった。その中で、明らかに他とは異なるオーラを放つ男がいる。


アートラの合図で、十人の兵士が男に襲いかかる。男は剣を抜き、すべての攻撃を受け止める。


アートラは戦闘を無視し、私に話しかける。


**(アートラ)**

「本当に大丈夫ですか? 司令官はまだ一人も蛮族を殺していません。ずっとうつむいています」


無表情で非人間的な言葉に震える。顔を上げ、戦闘を見つめる。13歳から戦場にいるのだから、慣れているはずなのに…何度戦争に参加しても、これには慣れない。


約1時間半後、男は全身に傷を負い、膝をつく。まだ生きているが、その間に四人の兵士を倒した。


アートラは馬から降り、男に近づき剣を抜く。


**(アートラ)**

「貴様の首…蛮族の指導者の首さえあれば…我々の勝利は確定だ!」


男の前に立ち、剣を捧げるように跪く。


**(アートラ)**

「しかし、この栄誉は司令官に捧げましょう!」


そう言い、剣を捧げるように差し出す。息を飲み、馬から降りて剣を受け取る。頭の中で葛藤が渦巻く。


こんなことは絶対にしたくない。ただ民を守ろうとした人を殺すなんて…でも選択肢はない。


私がやらなければ、他の誰かがやる。拒否すれば、私が処罰される…いや、殺される。だから彼はこうしている。私を試しているのだ!


もううんざりだ。誰か止めて!


剣を高く掲げ…そして決断する。


剣をアートラに向けて振るう。彼は避け、後方に跳び、険しい表情で私を見る。


**(アートラ)**

「これはどういう意味だ、キウィ司令官?」


**(キウィ)**

「もう終わりよ。帝国のために血を流すのはごめんだ。この虐殺を止める!」


アートラの剣を投げ捨て、『リル・ローズ』を抜きながら、帝国の紋章が入った胸当てを引き裂き捨てる。構えを取る。


**(アートラ)**

「そうきたか。アルローズ様の予言通り…お前は躊躇い、そして裏切る。よかろう! 我、ターカのアートラが、穢れた裏切り者をお仕置きしよう!」


私は突撃する──そして斬りかかる。

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