第18章:苦悩の夜明け
荷馬車から降り、大剣を構える。地面に足をつけた瞬間、高速で彼らの頭上を飛び越える。
彼らは私の動きについていけず、混乱している…しかし巻き毛の男と巨漢だけは上を見上げ、私を認識した。
バートラーも彼らに続いて上方を見る。大剣を振りかぶり、地面に手を押し当てる。
彼らの足元の地面が歪む。バートラーと巨漢は間一髪で跳躍。巻き毛の男は状況を理解できず、その場に留まる。
無数の岩の棘が地面から突き出す。バートラーと巨漢は回避したが、巻き毛の男は腕と太ももを貫かれた。
逃げ切ったと思った瞬間、二人の眼前に私が現れる。
空中に浮かんだ三人に回避も反撃もできない。バートラーの胸に飛び蹴りを食らわせ、巨漢には大剣を振り下ろす。巨漢は斧の柄で防ごうとするが、衝撃を吸収できず、吹き飛ばされる――バートラーも同様だ。
巻き毛の男に向かって落下し、斬りかかるが、白い斬撃が飛来する。空中では回避不能。
大剣で斬撃を打ち払うと、それは粒子に分解された。突然、半径2.5メートルほどの水の球体が私を包む――閉じ込められた。
くそ…バートラーの囮で一瞬隙が生まれ、巻き毛の男に反撃を許した。彼は岩の棘の届かない位置まで後退している。
魔法の水球は筋力だけでは破れまい…ならば、魔法を上書きして支配してやる。
水に意志を浸透させる。温度が急降下し、液体の球体は徐々に結晶化。数秒で青白い氷の球となる。腕力で圧力をかけ、魔法の牢獄を容易く粉砕し、地面に着地する。
こいつらは思ったより弱い。群れで戦っているから持ちこたえているだけだ。
>【バートラー・オジ:レベル5】
【イヴォン・アグリー:レベル7】
【ゴリス:レベル7】
巨漢のゴリスが最も強そうだが、技術はなさそうだ。変な髪型のイヴォンはそこそこ強いが、最初の攻撃を回避できなかった時点で評価は低い。
バートラーは予想より強い。レベル3かと思ったが5だ。
魔法訓練後、スキルを魔力で強化できるとわかった。【集中】と【英眼】を魔力増幅させれば、敵のレベルが見える。
彼らは攻撃を躊躇っている。実力差を理解したようだ。ゴリスは反対側で怒りに満ちた視線を送ってくる。
決めた。振り向きざまにゴリスへ超高速で突進する。彼は慌てて正面から斬りかかる。私は身をかがめ、その腹を貫こうとする。彼は叫んだ:
**(ゴリス)**
「舐めるなよクソガキ!【衝撃波】!」
圧縮空気の爆発で吹き飛ばされる。二人はその隙をついて剣を構え突進してくる。
空中で回転し、投げるような動作で腕を振るう。無数の火球が現れ、彼らに向かって飛ぶ。慌てて防御魔法を唱えようとするが――
遅すぎた。15の爆発火球が直撃し、二人は相反する方向に吹き飛ぶ。【癒やし】を唱え始める。
着地と同時に地面に触れる。彼らの飛んだ方向に岩の棘が突き出す。ゴリスが巨大斧を振り回し接近してくる。全ての攻撃を回避し、全力で反撃する。
彼は斧の柄で防ごうとするが、衝撃で柄がV字に曲がる。防御手段を失った彼に、大剣を上から――
腰から肩まで、真っ二つに斬り裂く。
彼は白目を向いて地面に倒れる。
残る二人を見る。再集結していたが、純粋な恐怖で後退している。
**(ウゼン)**
「【閃火加速】」
距離を一瞬で詰め、眼前に現れる。イヴォンを蹴り飛ばし、森の方へ吹き飛ばす。
地面から土の槍を作り、投擲する。左腹に突き刺さり、加速した彼は木に激突し、ぶら下がる。力なく腕が垂れる。
バートラーはそれを見て、絶望的な表情で私を見つめる。
**(バートラー)**
「お前は何者だ!? 離れろ! 近寄るな! あああああ!」
逃げようとするが、【加速拳】で腹部を打ち抜く。不自然な姿勢で地面に叩きつけられる。脊髄を折っただろう。
手の平を見つめる。また三人殺した…そして後悔も罪悪感もない。ただ安堵だけ。
私も人間ではなくなったのか?
振り向き、放棄した王都を見る。爆発は幾分収まっている。だが、あるものが目に入る。
四つの流星のような光条が王都上空を通過する。そのうち一つが分離し、降下を始める。
光が消え、都市に向かって降り立つ竜の輪郭が現れる。
凍りつく。意思とは裏腹に、体が動き出す。王都へ向かって走り出す。行くべきではない…行けば死ぬとわかっている。
それでも…彼らを見捨てられない。
馬車の横を通り過ぎると、馬は向きを変え私を追いかける。
**(ウゼン)**
「悪いが…走った方が早い。【閃火加速】」
足底が爆炎を噴き出し、全力で突き進む。馬で6時間の距離…全力なら20~30分で着くだろう。
幸い、竜はまだ高高度をゆっくり降下中だ。
待っていろ。
たとえ死んでも、俺は助けに行く。