第15章:新たな脅威
魔法の実験に費やした午後の時間で、いくつかの発見があった。アイアンの監視のもと、まず分かったのは──スキルに魔力を注入することで強化できるということだ。【加速拳】に魔力を込めてみた結果、標的の犬を粉砕してしまった。
ただし耐性は強化されなかったため、腕を骨折する羽目に。【不屈】で治すはめになった。もっと慎重にならないと。
この失敗の後、今度は魔力で肉体の耐久性を向上させることに成功した。いろいろ試したが、現在の俺にできることには限界がある。独自の魔法を作れるかと思ったが、それはあまりに難しい。
想像力で使えた魔法は既存のものばかりで、キウィの【大爆発】のような複雑な術式はまだ手に負えない。
結局、今のところは基本魔法を魔力で強化する程度が関の山だ。とはいえ、これらの実験で現在の能力を把握できたし、いくつかの魔法をステータスに登録することもできた。
今日は実りある一日だった。まず剣術を学び、次に魔法を習得した。そういえば、新しい大剣も作った。土属性をより濃厚に込めたため、色は黒みがかり、可能な限り刃を鋭くした。
伝統的な刀剣ほど鋭利ではないが、少なくとも斬撃が可能になった。ただ、重量が増したため扱いが難しい。もう少し練習が必要だ。
夕食はアイアンとリースと共にとった。食事中、アイアンがいくつかのことを教えてくれた。
**(アイアン)**
「識別プレートを見る限り、お前はレベル14らしい。師として、あと少しで追いつかれるとは感慨深い」
**(アイアン)**
「俺はレベル16だ。これに剣技と洗練された魔法が加わって、現在の実力となる。明日は真剣勝負だ。魔法も剣もありの全力で、一日の終わりには俺に追いついてみせろ!」
彼の言葉に興奮し、俺は急いでスープを飲み干すと、部屋に戻った。ベッドに倒れ込む。一日中魔法を使ったが、魔力が尽きた感じはしない。おそらく肉体的な疲労だけだろう。ドアに鍵をかけ、再び横になると、すぐに眠りに落ちた。
翌日、訓練場でアイアンと数時間にわたって戦った。見応えのある戦いだったが、ほぼ互角だったので詳細は省く。
昼食後、魔法の鍛錬に集中していた時、異変が起きた。【感覚潜入】が狂ったように警報を鳴らし始めたのだ。目を開け、周囲を見渡すが、訓練中の人々以外に異常はない。
しかし警戒を解かない。依然として極度の危機を感じていた。そこで城壁の向こうに目を向けると、巨大な鳥が信じられない速度でこちらに向かっているのを見つけた。
警告を発しようとした瞬間、アイアンが叫んだ。
**(アイアン)**
「敵襲だ!! 全員、戦闘準備を!」
その声を聞き、訓練場はパニックに陥った。皆が武器を探し回る中、俺は背中の大剣を引き抜く。
鳥は城壁を軽々と飛び越え、訓練場に舞い降りた。羽を広げると、全長約4.5メートル、翼幅は10メートル近くある。白鳥の体に鳩の頭という奇妙な組み合わせだ。
しかし最も異様なのは、鳥の背中に鎧姿の男が乗っていることだった。
身長約180センチ。金と白の鎧に、顔を隠す兜、そして巨大な黄金の翼が両側に広がっている。鳥から不格好に飛び降りると、地面に着地した。
本能が叫ぶ。巨大な怪物よりも、この男に対する【感覚潜入】の反応が激烈だ。
アイアンが男に向かって歩み出ると、正面に立ちはだかり、口を開いた。
**(アイアン)**
「帝国の将軍が何の用だ?」
その言葉に俺は驚く。
(将軍? これはまずい。アイアンの話では、森で戦った騎士はレベル5前後、キウィ司令官は20以上のはず。だとすればこの男のレベルはさらに桁違いだ!)
**(アルローズ)**
「我はラザロス帝国将軍、アルローズ・ヴィンセント! 蛮族どもに最後通告を伝えに来た」
**(アルローズ)**
「武器を捨て投降するなら、命は保証しよう。殲滅部隊到着時までに武装を解かなければ、敵と見做し殲滅する」
その宣告に身が凍る。アイアンは怒りに震えながら答える。
**(アイアン)**
「警告感謝する…だが我々は引かない。リンドンの誇りを踏みにじる者は、誰であろうと殺す!」
アイアンに続き、周囲の全員が決意の叫びを上げる。耳が痛いほどだ。
**(アルローズ)**
「ではこれが貴様らの選択か。よかろう。望み通りの死を与えてやる」
鳥に乗り移ると、最後に一言残した。
**(アルローズ)**
「残り24時間の命、存分に楽しむがいい」
信じられない速度で飛び去っていく。アイアンは振り返り、街に向かって叫んだ。
**(アイアン)**
「今日の訓練は中止! 全員、戦争準備だ!」
皆が頷き、それぞれ散っていく。俺はうつむき、拳を握りしめる。
その夜、皆は静かに食事をとった。俺はアイアンに近寄り、話しかける。
**(ウゼン)**
「何を言っても、決心は変わらないんだろ?」
**(アイアン)**
「ああ。仮に望んだとしても、アルローズの言葉の後では、戦って死ぬのが最善の選択だ」
その言葉に震える。
**(ウゼン)**
「なぜだ!?」
**(アイアン)**
「投降すれば、奴隷にされ拷問される。帝国の常套手段だ」
複雑な表情を浮かべる。
**(ウゼン)**
「それなら、伝えておくことがある。森で戦った騎士が、逃亡する前にいくつか情報を漏らした」
**(ウゼン)**
「敵の兵力だ。20個小隊、各小隊に聖騎士10名と司令官1名。総勢約220名らしい」
**(アイアン)**
「ありがたい情報だ。お前は明朝すぐに出発しろ。馬を準備しておく」
抗議しようとすると、彼は言った。
**(アイアン)**
「師として、リンドン指揮官として、これが命令だ」
涙が一粒、頬を伝う。
**(ウゼン)**
「わかりました…師匠!」
部屋に戻り眠ろうとするが、まぶたを閉じることはできなかった。