第14章:初めての魔法
**(アイアン)**
「これから魔法を教える。ただし俺も魔法は得意じゃないから、説明が下手でも文句言うな」
**(ウゼン)**
「了解です、師匠!」
食事を終え、訓練場に戻る。重苦しい空気は残っているが、今はそれに引きずられていられない。
**(アイアン)**
「まずは魔法の理論からだ。第一に、魔法は当然ながら『魔力』で構成される」
**(アイアン)**
「魔力は生まれながらに体内に宿るエネルギーで、死後も肉体に残る」
**(アイアン)**
「生まれ持った魔力の量は決まっているが、訓練で増やすことは可能だ」
**(アイアン)**
「このエネルギーは、使い手の思考や想像力で形や性質を変える。つまり魔法とは、願いによって形作られる超常的なエネルギー塊なのだ」
**(アイアン)**
「冷たい風を吹かせたければ、正確にイメージしながら魔力を放出すればいい。そうすれば風が起こる」
**(アイアン)**
「魔法を学ぶには、魔法書で詠唱文を覚える必要がある。詠唱によって正確なイメージが可能になる」
(なるほど。なら詠唱は不要だ。彼らには無詠唱で新しい魔法を使うのは不可能かもしれないが、異世界から来た俺には問題ない)
(元の世界には動画やアニメがあった。炎の泡が爆発する様子や、氷が奇妙な形を作る過程も知っている)
(現代人の想像力があれば、簡単に魔法を使えるはずだ。問題は魔力の制御方法か)
**(アイアン)**
「詠唱で魔法を覚えたら、魔法の形と生成ルーンを完全に記憶する」
**(アイアン)**
「その後は魔法名を唱えるだけで、記憶が呼び起こされ発動する」
(それなら、覚えた魔法に限定されず、独自の魔法も作れるはずだ。だがそんなに簡単なら、魔法使いはもっと強くてユニークな魔法を持っているはず。何か制約があるに違いない)
**(ウゼン)**
「理論は理解できたと思います。あとは魔力を制御して魔法の形を想像すればいいんですよね?」
**(アイアン)**
「ああ、その通りだ。まず魔法を使う前に、二つのことを済ませよう。識別プレートの作成と、属性適性の検査だ」
そう言うと、彼は廃墟の街の中心へと案内する。かつて宿よりも大きな建物があったらしい場所に着く。周囲は他の建物同様、ひどく破壊されている。
(何が起きたんだ? 竜巻か?)
**(アイアン)**
「ここは冒険者ギルドの本部だった。向かい側は傭兵ギルドだ。冒険者や傭兵も標的になったから、破壊の理由はわかるだろう」
(なるほど…リンドン王国の兵士より強い冒険者たちが反撃し、大きな被害が出たんだな)
**(アイアン)**
「両ギルドで識別プレートを作成する。スキルやレベルが確認できるようになる。生存していた職員を呼んでおいた。登録と同時に、特例でランクも上げておく」
**(アイアン)**
「通常はFランクから始まり、Eランクまで2~3ヶ月かかる。だがお前は既にEランク相当の実力がある。ギルド規則的には完全な違法行為だがな」
崩れた建物の中のカウンターらしき場所へ向かう。そこで何かを探す女性がいた。
**(アイアン)**
「よう、シーシャ。頼んでおいたものは準備できたか?」
アイアンの声に、シーシャと名乗る女性はびくっとした。
**(シーシャ)**
「あ、アイアン様! ご無事で何よりです。ご依頼の品は全て揃えました」
彼女はカウンターに三つのアイテムを並べた:青く光る水晶が埋め込まれた機械、鎖の付いた長方形の鋼板、魔法陣が刻まれた水晶の立方体だ。
**(シーシャ)**
「こちらがお話になっていた方ですね? では始めます。この機械に手の平をかざしてください。ステータスをプレートに刻印します。特別措置も済ませてあります」
指示通りに手をかざすと、青水晶が輝き、手の平に謎の文字が浮かぶ。
鋼板の上に白青色のレーザーが走り、文字が刻まれ始めた:
**名前:海道ウゼン
レベル:14
スキル:【不屈】【近接戦闘者】【英眼】【加速拳】【痛覚耐性Lv2】【感覚潜入Lv2】【集中】
装備:石製大剣 ランク1(一般)
ランク:E**
(面白い…【英眼】があるから必要ないが、"識別プレート"と言うからには重要だろう。持ち歩こう)
**(シーシャ)**
「これで正式に冒険者登録が完了しました。アイアン様のご要望で、傭兵登録も済ませてあります」
**(シーシャ)**
「次は魔法適性の検査です」
紙切れを机に広げ、その上に水晶を置く。
**(シーシャ)**
「水晶に手を当ててください」
再び指示に従うと、水晶が輝き始めた。1分後、手を離すと、彼女は紙を取り上げ、内容を確認してアイアンに渡す。
**(シーシャ)**
「結果は…とてつもない魔力保有量です。完全に規格外ですね。さらに『土』属性に強い適性があり、『火』属性にも多少適性があります」
**(アイアン)**
「これは驚きだ。適性値は標準範囲内だが、魔力の量が尋常じゃない。純粋な戦士としては異常な数値だ!」
褒められすぎて調子に乗りそうになる。
**(アイアン)**
「これで魔法の指導を始められる。訓練場に戻ろう。シーシャ、ありがとう。またな」
**(シーシャ)**
「あ、もうお帰りに? もう少し…」
彼女は何か呟きながら唇を尖らせた。淑女の心を覗き見するのは良くないだろう。
訓練場に戻ると、アイアンが最後の指示をくれた:
**(アイアン)**
「魔法を使うには二つのスキルが必要だ:【魔力感知】と【魔力制御】…これで自身の魔力を感じ、形作れるようになる」
**(アイアン)**
「習得方法は単純だ:瞑想するだけ。目を閉じろ」
【集中】を発動し、言われた通りにする。
**(アイアン)**
「心を無にし、体の隅々まで感じろ――頭、腕、脚。肌に触れる服の感触、顔を撫でる風、衣服の温もりと冷たい空気を」
指示に従うほど、体が軽くなっていく感覚があった。一瞬、浮遊しているような錯覚に陥る。
**(アイアン)**
「この平静状態になったら、感覚を体外へ拡張させろ。魂に触れるのだ。その中の混沌と、エネルギーを制御する嵐を感じろ」
言葉が終わる頃、体が痺れるような感覚に襲われ、エネルギーの波が全身を包んだ。『フゥッ』という音と共に、透明な白煙が体から噴き出した。
(これが…たぶんマナ(魔力)だ)
エネルギーは濃縮し、『ドカン』という音と共に、周囲の地面が割れ、小さな炎が噴き上がる。
頭に衝撃が走り、瞑想を中断して目を開ける。周囲にはより濃密な白煙が立ち込めていた。驚いて手の平を見つめ、アイアンを見上げる。
彼は満足げに頷き、笑みを浮かべて言った:
**(アイアン)**
「それがお前の魔力だ。これで魔法が使えるようになった」
首にかけたプレートを見ると、新しいスキルが刻まれていた:【魔力感知】と【魔力制御】。
(アイアンの教えが正しければ、これで魔法が使えるはず…)
地面に手を当て、イメージする。【魔力感知】でマナを感じ、【魔力制御】で体外へ導き、土を操る。
五本の巨大な土の棘が、信じられない速さで周囲の地面から突き出た。
立ち上がり、驚きながらアイアンの声を聞く:
**(アイアン)**
「信じられん! 習いたてで即座に魔法を行使できただと?」
【英眼】でステータスを確認すると、魔法欄に【土操作】が追加されていた。
(これが魔法か…すごいな。もっと派手なことをやってみたい)