第13章:弱点
アイアンがこちらの方を向き、重要な話を始める。
**(アイアン)**
「リースから聞いたところでは、お前はこの世界のことをあまり理解していないようだな」
**(アイアン)**
「リンドンが帝国に敗れた理由がわかるか?」
**(ウゼン)**
「敵の兵力が多かったから?」
**(アイアン)**
「それもあるが、最大の理由は帝国軍の圧倒的な強さだ。皇帝は弱兵を軍に置くことを決して許さない」
**(アイアン)**
「帝国軍の最低条件は、レベル4以上、攻撃スキルを3つ持ち、魔獣級のモンスターを単独で討伐できることだ。その強さが想像できよう」
**(アイアン)**
「数十万の兵士がこの基準を満たし、さらに実力主義の階級制度がある。戦功で地位が決まる世界だ」
**(アイアン)**
「リースの話では、お前たちは『司令官』クラスの敵と遭遇したとか。あのクラスですら、帝国では珍しくない。さらに、あの軍には規格外の怪物たちがいる」
**(アイアン)**
「そしてこれは世界の常識だ。努力を続ければ誰でも到達できる領域で、お前なら数日で追いつける」
**(アイアン)**
「これが我々の敗因だ。リンドンは文化的な国家で、軍事力に重きを置かなかった。強者が少なすぎた」
**(アイアン)**
「私は王国最強クラスだったが、帝国の司令官クラスにも満足に歯が立たない。帝国が敵となった時点で、滅亡は決まっていた」
この話を聞きながら、俺は寂しげにスプーンを置く。
**(ウゼン)**
「だったら、報復なんてやめるべきじゃないですか! 皆さん死んじゃうでしょう!」
(森の中では、たった10人の兵士で50人以上を殺した。数の問題じゃない。千年経っても勝てない。こんな温かい人たちが無駄死にするなんて耐えられない)
**(ウゼン)**
「師匠……お願いです」
**(アイアン)**
「気持ちはわかる。だが、もう止められない。これが我々の運命だ。二つの強国に囲まれながら、ここまで耐えられたのは奇跡に近い」
**(アイアン)**
「聞け、敵は帝国だけではない。我々の衰退を待ち構えていた連中がいる」
**(アイアン)**
「帝国は『七大国家』の一角だ。世界最強の国々で、もう一国が長年リンドンを狙っている」
**(ウゼン)**
「……そんな……こんな形で皆さんが死ぬなんて、受け入れられません」
**(アイアン)**
「我々に帝国へ攻め込む力はない。できるのは、敵が来るのを待つだけだ。だから、お前はやりたいことを済ませたら、ここを離れろ。巻き込むつもりはない」
**(ウゼン)**
「でも──」
言葉を途中で飲み込む。助けたい。彼らが俺を助けてくれたように。だが、それは彼らの意思を踏みにじる行為だ。そして何より──俺はまだ死ねない。果たすべき使命がある。
あの怪物を殺さなければ。もしかしたら、この世界の争いの全ての黒幕かもしれない。だから、たとえ心が引き裂かれても、感情を捨てて冷静に行動しなければ。
**(ウゼン)**
「……わかりました、師匠。それがあなたの望みなら……」
(唇を噛みしめる)
**(アイアン)**
「理解してくれて感謝する……さあ、訓練に戻ろう」