第11章:強化
リースと一緒に宿に向かっている。すでに日は暮れかけ、今日の一日はあまり生産的じゃなかった。
今日起こったことをまとめると、要するにアイアンにぶん殴られ、地面に叩きつけられた。起き上がると、またぶん殴られ、地面に叩きつけられるの繰り返しだった。
俺は何一つできなかった。彼に傷一つ負わせられず、これでどうやって強くなれるのか見当もつかない。【不屈】の自己回復がなければ、今頃体中ボロボロだっただろう。
アイアンは「今日学んだことを練習しろ」と言って、剣を持って帰らせた。だから今、肩に担いでいるが、正直何を練習すればいいのかわからない。今日は何も学んでいないからだ。
**(ウゼン)**
「ねえ、ついでに俺も付いていって飯もらってもいい? 昨夜から何も食ってなくてさ」
**(リース)**
「ああ、俺もそろそろ腹減ってきたし」
リースは宿とは別の方向へと俺を案内する。到着した場所は、かつてのギャラリーだったらしい。だが天井は崩れ落ち、壁は焼け焦げている。ここにはかなりの人数が集まっていた。
昨日のあのジャガイモのスープが配られているようだ。しばらく並んで待ち、食べ物を受け取り、隅に座る。
食事をしながら、リースが話し始めた。
**(リース)**
「アイアンのことを誤解しないでくれ。彼はリンドン騎士団の最後の生存者だ。経験も豊富で、多くの兵士を訓練してきた。彼の方法は確かで、一人一人に最適なものだ」
**(ウゼン)**
「でも、あまり学べた気がしないんだけど……本当に効率的な方法なのか?」
**(リース)**
「彼を信じていい。きっと君のために何か考えているはずだ。今日は他の訓練も全部キャンセルして、君とだけ向き合っていたんだぞ」
**(ウゼン)**
「そうか……まあ、最終的に結果が出ればいいんだけど。そういえば、一つ気になってることがあって……騎士団は全滅したって聞いたけど、アイアンはどうやって生き残ったんだ?」
**(リース)**
「……彼はそれを誇ってはいないが、要するに逃げたんだ。だからこそ、次の戦いに全てを懸けている。生き残った者としての責任だ」
**(リース)**
「彼は精鋭部隊『王宮親衛隊』の一員で、王国随一の戦力だった。だが、君も目の当たりにした通り、我々の最強戦力ですら、帝国の一般将校レベルに過ぎない。だから、彼が逃げた判断は正しかった」
**(リース)**
「彼にはそのための優れたスキル、【存在感知】と【潜伏】がある。勝てない敵を察知し、自身の気配を消し、勝てる相手だけを選んで戦った」
**(ウゼン)**
「なるほど……生き残るためには正しい選択だったんだ。でも、戦士としてそれは……いや、何でもない」
リースは苦い表情を浮かべたが、話を続ける。
**(リース)**
「……帝国軍が去り、状況が落ち着いた後、彼は市民たちを集め、指導者として動いた」
**(リース)**
「おそらく、リンドンの安定と市民の平穏を取り戻すつもりだったんだろう。だが、市民たちは死んでも復讐を望んだ」
**(リース)**
「それ以来、彼は誇り高きリンドンの民の願いを叶えるため、俺たちを導いている」
「……重い話だ。でも、あいつがああいう性格な理由がわかる気がする」
食事を終え、宿へ向かう。歩きながら、リースの話を整理する。そして、宿の前に着いた。
「リースの言う通りだ。アイアンの教えに無駄なわけがない。あの狂った訓練には意味があるはずだ」
長剣を手に取り、持ち上げてみる。【不屈】が発動していない状態でも、少しだけ楽に感じる。そこで、自分のステータスを確認する。
レベルが6に上がり、【痛覚耐性】が2になっていた。つまり、ほんの少しだが確実に強くなっていた。考えてみれば、俺には成長を加速させるスキルや称号がある。
そして、嫌でもこの馬鹿でかい剣の扱いには少し慣れた気がする。
**(ウゼン)**
「リースさん、ここまでありがとう。だが、もう少し外で練習してく」
彼は子供のような笑顔で答えた。
**(リース)**
「何か掴めたみたいだな。じゃあ、怪我しないように。また明日。お休み」
俺は手を振り、今日学んだことを反復練習し始める。まずは剣の素振りから。この異常な重さに慣れ、思い通りに動かせるようにならなければ、技術なんて覚えられない。
その後、空に向かって戦いの練習をし、体に覚えこませる。何時間も没頭した後、明日の訓練を楽しみにしながら眠りについた。