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私と英雄

 私のやった事が憎き相手に一泡吹かせてやれてる事を知り、自分のやってる事に少しずつ自信が持てるようになった私は、もっとアイツ等に大きなダメージを与えてやろうと思った。

 だから私は、アーサニークファミリーが大規模取引を行う現場を狙い、奴らにもっと大きなダメージを与えてやろうと思った。

 そう思い立って行動したまでは良かったんだけど、今まで私がアーサニーク・ファミリーから狙って来たのは、警戒の穴を見つけられるような警戒体制の場所ばかり。

 そんな逃げ道が見える場所から少額の資金を奪って逃げるのと、大規模な取引の為に敷かれた厳重な警戒態勢かつ、全く隙が見当たらない警備体制。

 だけどこの時の私は意固地かつ「今までより大きな仕返しをアーサニークに出来る」と躍起になっていたから、どうしてもこの盗みは成功させたかった。


 だからこの状況下で何度も頭の中で盗みのシュミレーションしても”この厳重な体勢からからお金を奪って逃げ切れるイメージが一切思い浮かばない……”

 そう思えるぐらいこの日私が盗みのターゲットとして定めた場所は、警備から警戒のレベルが今までと違い過ぎる場所だった。


 だけど今まで盗みをやって例え金品を奪う事は出来なくても、何とか逃げ切っていたから「例え盗みが成功しなくても、アイツ等から逃げ切れる」自信はあった。

 でも、この時のは私は”今まで捕まった事がないから”もの凄く増長していたんだと思う。

 それにママが私を逃がす際に渡してくれた銀青に輝くこのウィッグ。

 このウィッグは見る者の認識を大きく変える効果のある特別な魔道具だった。

 そして私は今までウィッグの力ががあったから、モーリス家の屋敷から逃げ出してからも私がモーリス家の人間だと知られる事なく生き延びてこれた。

 流石にあの時から八年も経ったら私の印象も大きく変わったし、元々薄いブルーだった髪を黒に染めているからウィッグを外した私も見たモーリス・タウンの人達も、私が「モーリス家の小さなお嬢様」であることに誰も気が付いていない。


 それにママがくれたこのウィッグは、盗みを働く際に自分の身を隠す為の道具の一つとして、今でも役立ていてくれるし、このウィッグを見ていると、あの時私から

 モーリス家を、キャサリンを、親しくしていた町の人達を、私から「全てを奪ったあの日の出来事」が鮮明に浮かんで来る!

 その出来事が頭に思い浮かび続ける限り、私はその時感じた自分の無力さを復讐の為に突き動かす原動力に変えると同時に、今の私の活動を称えてくれる人達も居ると言う事を大忘れさせないアイテムでもある。


 こうして私は、復讐心に駆られてしまっている事もあって、無謀だと分かっている状況に足を踏み込むのだけど、その際私は手痛いしっぺ返しを食らってしまった。

 まず大規模な取引の警戒体制に配置する悪党となると、これまで私が相手にしてきた悪党と比べて、あまりにレベルが違う実力の悪党が配置されていた。

 なんせ今回の取引に参加していた悪党達は、私の存在をスグに感知したかと思ったら、私の事をファミリーに仇名す存在として認知している事もあって、私に対する攻撃手段は、非常に苛烈かつ、一切の容赦がなかった!

 私はこの状況から、なんとか逃げ切ってやろうと、全力でファミリーの追手から、必死の逃走劇を繰り広げようとしたのだけど、この時自分の力を過信し過ぎていた私など、本当に何人もの人を追い詰めて抹殺している悪党達からすれば、いとも簡単に追い詰める事が出来る、大した事のない存在だった。

 そして悪党達は、その事を実証するように、私もいたぶる様に傷付けながら、私を逃げ場のない場所に追い込む。


 こうして私は、死の瀬戸際に立たされてしまったのだけど、そんな私を颯爽と現れて救ってくれたヒーローがいた。

 その人こそ、サナッタ・シティの裏で人知れず悪を打ち倒し続け、か弱き人間を守るこの街の闇の守護者、ダークナイト・スカルだった!

 でも正直言って、この街の悪を成敗して回っているダークナイト・スカルの姿を目にした時は


(……私も終わりだ)

 そう思ってしまった……だって私も、裏で悪逆非道の限りを尽くしているアーサニークファミリーが相手とはいえ、やってる事は窃盗に違いない。

 だから。この街を守っている騎士達の目が届いていない隠れた悪行を成敗して回っている人に、見つかってしまったんだから、私もアーサニークファミリーと一緒に、ダークナイト・スカルに成敗されるんだと思った。

 だけど、この後私がダークナイト・スカルから「どんな目に合わされるか?」

 その事を想像すると、死の淵に立たされて震えていた体は、より一層震えて、私は”ガタガタ”と音を立ていても可笑しくないぐらい体を震わせているのが、自分でも分かるぐらいだった。

 そんな私の姿は、きっとシーヴィング・コラットなんかじゃなくて、只の年相応の恐怖で震える少女だったからかな?

 あの人は私には一切目もくれず、私を追い詰めた奴らを一瞬して片づた後、怪我を追っている事と、恐怖で体が震えてロクに動けない私の手当を始めると同時に、恐怖で震える私の手に優しく握ってくれた。


(ああ……私が怖いと思った時に、家族以外の誰かが、こんな事して私を安心させてくれたのって、お兄ちゃんと、お姉ちゃんが最後だったかも……)

 そんな、懐かしいあの頃の思い出が思い浮かぶと同時に、目の前に居る人は、素顔が一切分からないし、得体のしれない人だというのに、何故か握られた手に安心感を感じてしまった。


 こうして私の手当が終わった後、私を安全な場所まで運んでくれたダークナイト・スカルは、私の体の震えも収まった事を確認すると、そのまま何も言わないので、その場を去ろうとした。


「……裏で『悪党』を裁いている人間が『小悪党』は助けるなんて、笑えない冗談ですね」

 なんて、まだ内心恐怖で怯えている事を悟られないように、必死に強がって皮肉めいた一言を言ってしまった。

 今思うと、命の恩人に対して、とんでもない事を言っちゃった……って思うし、深く反省してる。

 だけど、そこは私達のヒーロー、ダークナイト・スカル!

 そんな私の一言なんて、気にする様子も見せない所か


「君がやってる事は、法の上では悪なんだろうが、君は罪が無い人間に対して、危害を加えた事はないだろ?

 そんな正しい事を行っている人間に対して、鉄蹄を下すなんて、あまりも馬鹿げた話だと思わないか?

 それに法の上では悪党で、今となってはやり遂げた所で、何も帰ってこないと分かっていても、復讐心に駆られて悪党に挑んでいるのは、こっちだって同じだ」

 そう言い残して、その場からあの人は姿を消した……

 だけど私にとってその言葉は凄く嬉しかった。

 だって私がやっている事を、ほんの少しでも理解してくれて、私のやってきた事を本当に認めてくれて、推定してくれた人が居る!

 たったそれだけの事かもしれないけど、私にとっては、私のやってきた事が、本当に報われた気がした。

 だから今まで何をやっても、塞がらなかった心の穴が、ほんの少しだけど、あの人のお陰で塞がって、自分が満たされたように思えたのも、初めての経験だった。


 この日を境に私の活動に変化が現れた。

 まず狙うターゲットを盗む事が出来るのか? そしてその事を小冷静に見極め、無理だと思ったらスグに引き返すようにする事で、私の安全性は大きく上がったと思う。

 そして新たな目的の一つとして、私を救ってくれたあの人(ダークナイト・スカル)に、「恩を返そう」と考えるようになった私は、ダークナイト・スカルの後をとにかく追うようになった。

 そして、あの人を追って情報を集めている内に、ダークナイト・スカルが出現するタイミングが、”聖騎士隊が定めた標的を、聖騎士隊が捕まえる手助けをするかのように現れている”という事に気が付いたし、あの人や聖騎士隊が悪党と争ってる隙を狙えば、私一人じゃ盗みが成功しない局面であっても、私の盗みの成功率が跳ね上がる事に気が付いた。

 だから私は、あの人の行動に関りのあると睨んでる聖騎士隊が”通い詰めているバーがある”という情報を知り、このバーに辿り着いた。


 そして聖騎士隊の今後の動向を探り、私が出来るだけ盗みを成功させやすい状況を把握するのと、あの人に、命を救ってもらった恩を報いる事が出来る日が来た時に、あの人に提供できそうな情報を、少しでも得たいがと思ったから、このバーのマスターにこのバー働けないか頼みこもうと店に入った。

 するとそこには、私が出来るだけ顔を合わせたくないと思う人が、姿を現した。


 その相手こそ、この街の現領主でありながらこのバーを経営しているウィルさんだった。

 だけど「顔を合わせたくないと」表面上は考えていても、本心は違った事を、この時私は知る。

 だってウィルさんに久しぶりに会った時に、最初に思ったのが

(どうして……どうしてウィルさんは、私を見ても何の反応も示してくれないんですか?)

最後までこの話を読んで頂き、ありがとうございます。




もし、この作品を読んで何か気になる事や、分からなかったことがあれば、遠慮なくどうぞ。

そして、この作品が面白いと思ったり、続きが気になったら、良いねや、ブクマ等で応援して頂けると、作品を作るう上でのモチベ向上に繋がりますので、更新速度が上がるかもしれません(笑)

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