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力の差

「ハァ…ハァ……」


「おいおい、いつまでも逃げ回ってばかりじゃ勝負にならねぇぞ?

 コソ泥!」


(そんな……こんなに実力の差があるなんて)

 アーサニークと一対一の対決が始まってから、まだ私はアーサニークに一度もダメージを与えられていない。


”ボッ、ボッ、ボッ!”


「う、風の盾(ウィンド・シールド)

 アーサニークが三つの火の玉を放って来たので、風魔法で消し飛ばそうとするけど


”ボォォォォ!!”


(やっぱりダメ)

 私は先程より火の勢いが増した火の玉を、なんとか直撃寸前で躱す。


「はぁぁぁぁ!」

 躱した勢いを殺さぬままアーサニークの元まで一気に駆け寄り、渾身の蹴りをヤツにお見舞いしようとする。


”ガッ!”


「そんな蹴り喰らうかよ!」

 そう言ってアーサニークは私の蹴りをいとも簡単に片手で受け止めると、私を宙に放り投げた。


「そーら、これならどうだ?」

 余裕の表情を見せながらアーサニークは、宙に放り出された私目掛けて当たれば間違いなく獄炎の炎の身を包まれる炎を放ってきたが、風の移動魔法を咄嗟に放ってコレも何とか紙一重で回避する。


「逃げ足だけは大したもんだが、それじゃあ何時まで経っても俺には勝てねぇぞ?」

 アーサニークは相変わらず余裕のニヤケ面私に向けてそう言い放った。


(どうしよう……ここまで来て何もできないなんて)

 私とアーサニークの実力差は、思った以上に開いていた。

 まず私の風魔法ではアーサニークの火魔法を風で吹き消すどころか、逆に日に風を送って火の勢いが増してしまう。

 コレは魔法の練度が拮抗していれば例え相反する属性じゃなくても、魔法は打ち消し合ったり相手の魔法を打ち破れるのだけど、練度の差があまり大きい場合は”逆に自分の魔法が相手の魔法の威力を上げる手助けになってしまう事もある”って聞いた事はあった。

 実際にその現象を目の当たりにすると、こんなに悔しいと思える状況は無かった。

 そして直接戦闘に関しても経験の差が明らかに出ている。

 私の攻撃は全て見切られ、完全に塞がれた後に反撃を受ける。

 しかも明らかに手加減して私に攻撃を加えて来るのも私にとっては屈辱だった。


「もう『打つ手ナシ』って顔してんな。

 まぁこれがお前と俺の差!ってヤツだ。

 そろそろ降参するか?

 降参したら殺しはしないでやるよ」


「……お前みたいな非道なヤツ相手に降参なんかしない」

 

「そうかよ、だったら……そろそろ終わらせるか!」


”ボッボッボッボッボッッボッボッボッボッボッボッ”

 アーサニークは大量の火球を作り出し、私目掛けて一斉に飛ばして来た。

 この火球を避け切る事は無理だと瞬時に悟った私は、一か八かで範囲を可能な限り絞った風の盾を形成しつつ、風魔法で動きを速めて全力で大量の火球を躱すように動く。


「甘めぇよ」

 しかし今度アーサニークが放った火球は、追尾機能が付いている為私の動きに合わせて大量の火球も軌道が変わって私に迫ってくるので、完全回避は出来そうにない。


”ボン、ボンボン!”


「っつぅ」

 躱す事が出来ない火球は、当たる直前で致命傷にならにように、範囲を絞った分だけ防御力を高めた風の盾をぶつける事で、私に直撃する前に火球を爆発させて威力を殺してはいるけど、完全に防ぎ切れていない、

 だから当たればそれだけ私の動きは鈍っていけば、火球に避けられなくなり当たる数も増える。

 遂には風の盾で威力を殺す事が出来なかった火球が、次々と私に直撃するようになった。


「あぁぁぁぁぁぁ!」

 火球を防ぎ切れなかった私は、複数の火球が直撃した威力で吹き飛ばされ”ドサッ”という音と共に地面に叩きつけられた。


「うぅぅぅぅぅ……」

 無数の火球を受けた私の体に、無数の火傷と衝撃から来る強烈な痛みが走り私のその場で蹲って痛みに耐えるけど、耐えるので精一杯で立ち上がる事は出来なかった。


「勝負アリだな、コソ泥」


「私は……お前を倒す為に来たのに……」

 もうロクに動けない私の口から咄嗟に出た言葉は、現状に対する悔しさだけだった。

 だけど()()()にだけは絶対に屈したくない私は、心だけでも抵抗する姿勢を見せようと、未だにアーサニークを睨みに続けた。


「勢いと恨みだけは一丁前の奴が俺を倒す?

 ハッ、どうして世の中にはお前みたいな身の程知らずが多いんだかな?

 なぁコソ泥、お前人を殺した事あるか?」


「……」


「まぁ答えなくても殺した事ないって顔してるから分かるけどな」


「……だから何なの?」

 私はアーサニークの質問の意図が分からなかったし、相変わらず私を見下し続ける事に苛立ちを感じていたから、強い口調でアーサニークに怒りを込めて質問の意味を答えるように問う。


「なに、簡単な事だ。

『本気で命の遣り取りを経験してないような奴に、俺が負けるわけがねぇ』って話しだ。

 お前どうせ俺がファミリーの誰かに家族や住家何かを奪われから、俺に復讐しようって魂胆なんだろ?

 そんなくだらない理由で俺を殺そうとして奴って、結局お前みたいに全員返り討ちあうんだよな。

 ハッハッハッハ!」


「……くだらないって、ふざけないで!

 どうせ大切な物を何も失った事が無いくせに!!

 全部奪われて一人残される苦しみも知らないくせに!!!

 お前みたいな奴は地獄に落ちればいいんだ!!!!」

 勝負に負けても”私の大切な物を奪った張本人”に好き勝手言われるのだけはどうしても許せなかった私は、声を荒げてアーサニークに恨みをぶつける。

 だけどアーサニークは私の言葉を聞いても、特に表情を変える事なかった。


「相変わらずお前みたいな奴は、口だけは五月蠅い。

 ちょっと黙ってろよ!」


”ドゴォ”


「カッッはぁっ」

 アーサニーク思い切り腹を蹴られ、息を強制的に吐き出された私は声にならない声を出した後意思を失った。


「コソ泥、一個教えておいてやる。

 俺は、いや、この”世界”はとっくに地獄に落ちてんだよ!

 って聞こえてねぇか」

 アーサニークは自分の蹴りでマリリンが気を失った事に気が付くが、アーサニークはそんな事より別の事に興味があった。


「さて、態々コイツの面拝ためにサシでやり合ったんだからな。

 勝った権利としてその面拝ませてもらおうか」

 そう言ってアーサニークのはマリリンの髪を鷲掴みにすると


「んん?

 こりゃウィッグ……いや、魔導具か!」

 マリリンが身に着けている魔道具であり、母から最期に貰った魔道具をアーサニークはマリリンから剥ぎ取った。

 そして魔道具の効果が消え、ハッキリとマリリンの顔を認識したアーサニークはニヤリと笑う。


「コイツ誰かに……ああ、もしやあの時のガキかぁ?」

 マリリンの素顔をしばらく眺めていたアーサニークは、マリリンの正体を察したようだ。


「へへ、こりゃ楽しい余興に使えそうなモン拾ったな」

 そう言いながらアーサニークはニヤリと笑うのであった。

最後まで読んで頂きありがとうございました。

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