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怨敵

「ハァ…ハァ……ハァ」


「さぁ~追い詰めたぜ!

 泥棒猫ちゃん」

 アーサニークファミリーの元に突撃し何人か敵を倒したのはいいけど、私が最も倒したい相手の元に辿り着く所か、屋敷の入り口でもう息は切れ切れ。

 もう体力も魔力も限界を迎えようとしている。

 更に周囲をアーサニークの部下に取り囲まれているから、逃げ場も完全に失った。


(……いくら何でも無謀過ぎだったなぁ)

 ルーサ・ルカ様が目の前で殺されたのを見て生まれたあまりの怒りで、我を忘れてしまった結果がこのザマ。

 だけどこんな絶望的状況でも、私の心は折れていないからまだ戦う姿勢を崩さない。

 ちょっと前の私だったら、きっと前アーサニークファミリーに追い詰められた時みたいに、心が折れてみっともなく泣き叫んでいたと思う。

 そんな私が、こんな短期間でこんな状況でも屈しないぐらい強くなれたのは、|ウィルさんや、髑髏の闇騎士ダークナイト・スカル、そしてエレンさんのお陰だった。


(あぁ……私もあの人達みたいに心だけじゃんなくて、力でも自分の正義を貫く人になりたかったな)

 今思うと、私が憧れていた人は皆自分の正義を貫く為に戦っていた人達だった。

 だからかな?

 今こんな絶望的な状況でも「最後にアーサニークに何とか一矢報えなかったのが悔しい」って感じるのわ。


「さて、今後の予定に差支えがないように、そろそろ殺っちまいますかね!」

 いよいよ私に止めを刺す為に、アーサニークの部下達が動き出したので、私は意を決して最後の抵抗を試みる。

 そう、憎い相手に一矢報いてやるために!


「ったくお前ら、コソ泥一匹相手始末するのにどんだけ手こずってんだよ?

 後は俺がやるからお前らは大人しく見とけ」


「「「「「あ、アーサニークさん!!」」」」」

 突如大声をあげて、私に止めを刺そうとしたファミリーの人間を止めたのは、私の怨敵アーサニークで、部下達も何の前触れもなく登場したボスに驚いている。


「どうしてココに?」


「もしかしてもう出発時間ですか?

 でしたら、このコソ泥を今すぐ始末しますんで少しお待ちくだせぇ」


「まだそんな時間じゃねぇよ。

 それより後は俺がヤルって言ったの分かんなかったのか!

 なぁ?」

 アーサニークがそう言うと、私を取り囲んでいるファミリーの人間達は、不思議そうな表情を浮かつつも困惑している様子を見せるけど、私に対する警戒は解いていないので、未だに私がピンチなのは変わらないんだけどね。

 そしてアーサニークは部下達の間を通って、私の近くまで来ると


「よう、コソ泥。

 じゃなくて銀青の(シーヴィング)泥棒猫(・コラット)って呼ばれてるんだったか?」

 私の最も憎むヤツが、意気揚々と話しかけて来る。

 それも明らかに私を見下しながら!


「おうおう、そんな睨むなって!

 まぁ、正直お前が俺等に何の恨みがあって俺達の金をコソコソ盗んでいるのか知らねぇけど、たった一人で俺等の本拠地に殴りこんで来た根性だけは大したもんだ。

 そんなお前の勇気を称えてやるよ」


「お前なんかに称えられたって、嬉しくも何ともない!」


「まだそんな減らず口が叩けるなら問題なさそうだな。

 おい、コソ泥!

 今から俺とお前、サシでやろうじゃねーか」

 そうにこやかに答えるアーサニークの姿は、私には不気味に映った。

 

(…何なのよコイツ!? 一体何が狙いなの?)

 どうしてこんな事を言うの?

 アーサニークが何を考えているの全く分からないので、私はさっきより激しくアーサニークを睨みつつ、警戒を強める。


「おいおい、人が褒めてやった挙句に俺とサシでやれる提案までしてやってんのに、更に睨み効かせてくるとかあんまりだろ?」


「……」


「今度はだんまりかよ?

 それとも『俺の言ってる事の意味が良く分かんなかった』てか?

 だったらもっと分かりやすく言ってやる。

 俺とお前で一対一の勝負をしようって話だ!」

 態々言い直さなくても最初からアーサニークが言っている事は分かったけど、アーサニークが態々私と一対一の勝負をする必要が分からない。

 だけど今の状況だと結局は八方塞の状態だから、私の答えは一つしかなかった。


「……分かった」


「お、いい判断じゃねぇか。

 おいお前ら! 今から俺とこのコソ泥がサシでやり合う。

 だからお前ら下がれ!

 そして絶対手を出すなよ!」

 アーサニークが私の判断が良いとは口では言うが、その顔は憎たらしいぐらいニヤついている。


(人の事をどこまで馬鹿にすれば気が済むの!)

 正直今すぐあのムカつくニヤけ面に、渾身の一撃をお見舞いしてやりたい。

 だけどまだ私の周囲には多くの部下がいるので、今手を出しても直ぐに取り押さえられるのがオチだと分かっているから、湧き上がる怒りを私は必死に抑える。


 そしてアーサニークの言葉に従い、アーサニークの部下達は私とアーサニークから少し離れた位置に移動し終えると


「おい、どうした?

 早くかかって来いよ!」

 アーサニークは両手を広げながら首を傾げる仕草を見せて来る。

 その余裕ブッコいてる姿を見た時、私はもう怒りを抑える事が出来なかった。

 だから今持てる力全てを使って、私はアーサニークに突撃する。

最後まで読んで頂きありがとうございます。

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