守るべきモノ
ガンッ、ガンッッ、ガキィィィィィィーン!!!
エレンと僕の得物が激しくぶつかり合う音が町中に響く。
(くっそ!
こんな事してる場合じゃ!!)
僕はエレンの剣戟を必死に捌きつつ、今すぐこの場から離脱すべく様々な方法を使ってエレンから逃げようとしているのだが、こんな時に限ってエレンは僕の逃避に繋がる行動を確実に潰して来る。
「今日こそは逃がさないって言ったわよね!
髑髏の闇騎士!!」
エレンは鬼気迫る勢いで僕に更に激しい斬撃を次々と打ち込んでくる。
僕はエレンの攻撃をひたすら捌いて防御に徹しているが、こんな事を続けてもお互い無駄な体力と時間を消費するだけなのは目に見えているし、お互いの目的は同じなのだから今すぐこの無駄な戦いを僕は今すぐ終わらせたい。
(…仕方がないか)
僕はこの状況を一刻も早く収める為にも、今までこの姿であえてしなかった方法でエレンを説得する決心をした。
「……もう無駄な戦いは止めよう」
僕はこの姿で、初めてエレンの耳に届くように声を出した。
「何ですって!?」
”ガヂーン!!”
エレンと僕の武器が衝突し、お互いの動きが止まる。
エレンは僕が話しかけてきた事に、ほんの僅かだけど興味を示すと同時に、僅かに動揺をしているのが刃先から伝わってくるという事は、声を変える魔道具を使っていても、僕の声を聴いて”何かを”感じ取ってしまったのかもしれない。
「無駄な戦いは止めるべきだと言った!」
だがコレはこの状況を収めるチャンスだと感じた僕は、力強くエレンに戦いを止めるように訴えると、
エレンの剣から更なる動揺を感じた僕は、鍔迫り合い状態のエレンの剣に、更に強い力を加えてエレンを弾き飛ばし、エレンとの距離を強引開けた。
「……初めてまともに口を開いたから驚いて話を聞いてやれば、いきなり戦いを止めようだなんて
笑わせないで!」
エレンは僕に対して怒りの声を上げるけど、どうやら僕の言葉にエレンも否定できないと感じているみたいだ。
その証拠に彼女の形相は怒りにを見せても、一端攻撃の手を止めている。
「一体今更どうゆう風の吹き回しかしら?
今までこっちの問い掛けには何一つ答える事はなかったクセに、今日に限って『戦いを止めよう』ですって?
本気でその意思を示したいなら今すぐ投降して、牢屋で事情聴取でもさせてくれないかしら?」
「それは無理だ」
「そう……せっかくまともにお前と話せるのかと思ったけど、自分の要求だけ突き付け、相手の要求は跳ね除けるようなヤツの要求を聞く馬鹿なんていないわよ?」
エレンはそう言った後、僕との距離を一瞬で詰め、僕目掛けて再度剣を振り下ろす。
こうして再びエレンと僕の得物のぶつかり合う音が、町中に響き渡り始めた。
しかし、僕もこのまま引くに引けないので、更にエレンに訴えかける。
「君だって分かっているハズだ!
今もっとも優先してすべき事はココで争う事じゃなく、この街を混乱させる者達を倒す事だと!!」
エレンの攻撃を捌きつつ、僕は必死にエレンに訴える。
そんな僕の必死の訴えを聞いたエレンは、バツの悪そうな表情を見せながらも攻撃を続けているが、その攻撃は先程より剣筋がより甘くなっている。
(やはりエレンも、今最も優先すべきだと考えている事は僕と同じか……)
そうじゃなきゃ僕の訴えを聞いただけで、こんなに剣筋に迷いが生じる訳がない。
「……まさか悪党に説教される日がくるなんてね。
でもお前には様々な容疑が掛っているうえ、上層部から『身柄を確保しろ』という命令が出ている。
だから私は、お前をみすみす逃がす訳にはいかないのよ!」
エレンが歯痒そうな表情を浮かべながら吐き出した言葉を聞いて
『頭では僕の言っている事は理解しても、騎士である以上組織の命令を最優先する必要がある以上、それが出来ない』
そんなエレンの心情が否が応で伝わってきた。
「頼む、今だけは見逃してくれエレノア。
じゃないとこの街は、また八年前より更なる深い悲しみに晒される事になるかもしれないんだ!
君はあの時経験した悲しみをもう一度経験したいのか?」
「五月蠅い!
悪党にそんな事言われなくたって分かっているわよ」
「確かに君の目の前に居る男は悪党と呼ばれても可笑しくない男だ。
だがそんな男は、いつか裁かれる時が来る。
だからその時が来れば、この身は必ず裁きの場所に立たせると約束しよう。
だけど、その前にお互いやるべき事は『この街を守る』事じゃないのか?」
「黙れ!
お前のような奴にそんな事を言われる筋合いはないのよ」
「いや、こんな状況だからこそあえて言わせてもらおう。
君が何の為に騎士になった?
この街を守る為なのか?
それとも上の命令に従う為に騎士になったのか?」
僕はエレンの気持ちと立場を理解しつつも、現状本当に「お互いが争う事が必要なのか?」問いかける。
「……本当にムカつく奴ね」
そう言った後エレンは、剣を下ろして僕に背を向ける。
「……心底が腹立たしいけど、お前が本気で”この街を守ろうとしている”事だけは良く分かった。
だから、今だけはお前の言う通りこの街の混乱を収束させるのを優先させるわ」
そう言った後エレンは、剣を鞘に仕舞う。
「恩に着る。
そして一つ頼み、というよりお願いがある。
どうか急いでモーリス・タウンを目指し、この騒動の元凶の一人であるアーサニークの元に向かってほしい」
「頼まれなくったってお前にさえいなければ、初めからこっちはそっちに向かうつもりだったわよ」
そう言うとエレンは、直ぐにモーリス・タウンのある方向に向かって走り去った。
「……ありがとう、エレン。
そしてマリンをよろしく頼むよ」
地の声でエレンに感謝の言葉を述べる。
そして中央広場で爆発が起きた後に姿を消してしまったマリン。
恐らく彼女はあの男の元に向かったハズだ。
そんなマリンを放っておきたくないから、本当は僕もマリンの元に今すぐ向かいたかった。
だけど僕の直感は「あの事を優先しろ、じゃないと取り返しの付かない事が起きる」と訴えかけてくる。
だから僕はマリンの事をエレン託し、モーリス・タウンではなく、シェイドが示した方角を目指す。
・・・
・・
・
「まさか悪党に諭される日がくるなんて……ね」
私は急いでモーリスに向かう途中、ついさっき髑髏の闇騎士とのやり取りを思い出すと、自傷気味にそうぼやくしかなかった。
でもあの悪党の言う通り、私は”この街と大切な人を守る為”騎士になった。
だから本当に癪で仕方がないけど、私にっとは真に大切な事を思い出させ、再認識させてくれた事だけはあの悪党に感謝している。
「…だけど私が騎士を目指した事情を知っている人間って……」
そう考えると、思い当る人間は極僅かしかない。
(それに……いえ、今は余計な事を考えないでおくわ)
私は先程髑髏の闇騎士に諭されたように、今だけはこの街の混乱を収める事に集中する事にした。
最後までこの話を読んで頂きありがとうございました。




