新たな悲劇の始まり
「そんな…間に合わなかった……」
僕は目の前で到底受け入れたくない現実が起きてしまった事を、只呆然と立ち尽くして見ていた。
『この日を境にきっとこの街は八年前の姿により近づけるだろう』
そんな想いをこの街に住む皆と共に抱いて、今日と言う”死者の日”を迎える為に努力して来た事が、全て水の泡になった事で強烈な喪失感が僕を襲い、八年前に多くの物を失った時に味わった圧倒的な絶望感が、また僕を支配しようとする。
だけど僕は、絶望に支配されないためにも極僅かな希望を確かめるべく、先程の爆発に吹き飛ばされてもまだ息がある護衛騎士の元に急いで向かった。
「大丈夫ですか!」
「……何とか」
あの大爆発に巻きまれても生きていた騎士の安否を確認すると、軽くはない怪我を負っているのは目に見えて分かったけど、意識がハッキリしているならこの護衛騎士は無事だという事が分かると少し安心する。
そして僕は、騎士に僅かな希望を掛けて尋ねた。
「……ルーサ様は?」
「……先程会場に入った」
「そんな……じゃあルーサ様は」
非情にもこの僅かな騎士とのやり取りで、僕の僅かな希望は完全に砕け散ってしまった。
そして騎士もこの事実を口に出した事で、非常な現実を実感してしまったのだろう。
騎士は悲しみのあまり手で自分の自分の顔を覆い、悲痛な思いを外に出すのを必死に堪えようとしたいた。
”ウゥゥゥゥゥゥゥゥゥー!”
悲しみに暮れる僕達に追い打ちをかけるかのように、けたたましく13のサイレン音が鳴り響いた。
それが意味するのは、既に最悪の状況だというのにこれ以上の最悪を知らせるサイレン音だった。
この中央広場に13のサイレン音が鳴り響いているという事は、この街を構成する13区域全てで何かしらの緊急事態が発生している知らせだ!
そんな更なる非情な知らせ知ると、正直今すぐこの場地面に蹲って「この現実から目を背けたい」と言う気持ちもあった。
だけど僕にはそんな仕草をする事さえ許されない。
何故なら僕はこの街を取り纏める領主でありながら、過去に一度この街との関りを断ち切ろうとした時もあった。
だけどこの街の人達は、そんな僕を見放さないでくれたし僕が領主として再起するチャンスまでくれた。
だから僕は自分の為だけじゃなく、この街とこの街に住む人達の為にも戦うと心に誓った。
(……もうあの時のような悲劇は決して繰り返さない。
それにまた絶望と喪失感に呑まれて、無気力な日々を送るのは二度と御免だ!)
この想いがある限り、僕は何度心が打ちひしがれそうになっても、再び立ち上がってこの街を守る為に再起する力とする事が出来るのだから。
こうして再び無気力になりそうな自分を奮い立たせた僕は、立ち上がった後に跡形もなく消し飛んでしまった特設会場をしっかりと目に入れた後、新たな誓いを
(ルーサ様……貴女には人と真摯に向き合う事の大切さを教えて頂きました。
そんな素晴らしい人間を守る事が出来なかった僕がこんな事を誓うのはおこがましいかもしれませんが、この場であの世に旅立ったルーサ様に誓わせてください。
貴女の仇を取る為にも、イルミナーテンは必ず僕が地獄に送ります)
そう心に誓った後、僕はこの事態を一刻でも早く収束させる為に動き出す。
「アルフォンス!」
「はい、ウィルフレッド様」
僕の傍で控えていたアルフォンスが「待っていました」っと言わんばかりの返事で僕の言葉に応える。
「各地域で何が起きているか、可能な限り早く調べもらえるかい?」
「かしこまりました」
アルフォンスに、この街全体で”今何が起きているのか”を、直ぐに調べるように指示を出すと、アルフォンスは直ぐに情報を集める為に駈け出した。
そして僕はまず目の前にの事態を抑える為に周囲を見渡すと、会場が粉微塵に吹き飛んだ事で、周囲は大パニックだった。
そんな状況でまず最初にやる事は、この場にいる人達の安全を確保する必要がある。
その為に僕は地面に片手を突いた後、闇魔法を発動させる。
(皆さん、中央広場において原因不明の爆発事故が発生しました。
この場は危険ですので、今すぐ慌てず落ち着いてスタッフの指示に従って中央広場の外に出てください!
そしてもし可能であれば、スタッフと共に負傷者を運び出す手助けができる方は、ご協力お願いします)
既に日は落ち多くの影が生まれている状況を利用して、僕は影を伝って自分の声を拡散する闇魔法を使う事で、中央広場に居る全ての人達に避難指示を出した。
僕の闇魔法によって、突然頭の中に直接声が響いた事に多くの人達が驚く様子を見せると同時に、突然頭に僕の声が響いた事で、冷静さを取り戻す切っ掛けとなった。
そのお陰でパニック状態を脱する事が出来た多くの人達が、僕の声に従ってくれた。
こうして大パニックとなっていた中央広場をある程度落ち着かせる事に成功したけど、問題はまだ山積みだ。
なんせ周囲を見渡せば、離れた場所からいくつもの火の手が上がっているのが嫌でも分かる。
それが何を意味するのかと言えば
「どうやらこの状況は『あの指令所通りの事が起きている』と考えるのが妥当か……」
僕はこの状況が”あの指令書に書かれていた通りに事が進んでいる”事を、嫌でも思い知る。
最後まで読んで頂きありがとうございました。




