猫の知らせ
慌てた様子で僕の元にマリリンが駆け寄る姿を見て、マリリンを捕まえようとしていた警備スタッフ達が若干困惑気味の様子を見せる。
「お騒がせしてすみません。
この子は僕の知り合いなんです。
後は僕が対応しますので、警備スタッフの皆さんは持ち場に戻って引き続き警備をよろしくお願いします」
そう警部スタッフ達に伝えると「全く、人騒がせな」と言いたげな表情を警備スタッフ達がマリリンに向けた後、各持ち場に戻っていった。
「マリリン!
言いたいことは色々あるけど、まずは何が大変なのか教えてもらえるかな?」
正直言ってマリリンに色々と小言を言いたく仕方がなかったけど、マリリンが息を切らし余裕のない表情を浮かべて僕の元に来たという事は、余程の事情があるのは嫌でも伝わった。
だからまずは、マリリンが警備を強引に突破してまで僕の元を訪れた理由を聞く事にする。
「こっ、コレをウィルさんに届けたくて!」
そう言ってマリリンは切羽詰まった様子で、上着から封筒を取り出して僕に手渡す。
マリリンから封筒を受け取った僕は中身を確認してみると
「……マリリン!
この封筒一体何処で手に入れたんだい?」
「えっと……実はちょっとカジノに入った時に偶々拾って……」
マリリンは僕に裏の仕事の内容を知られたくないと思っているのか、答えにくそうに僕にこの封筒を手に入れた場所を伝えて来る。
しかし僕は、既にマリリンの裏の姿とも言うべき銀青の泥棒猫事については把握済みなので、特に気にはしていない。
だけどマリリンは自分の裏の顔を僕が知っているなんて思い至らないだろうし、僕には知られてたくないからから困った様子を見せているんだろうけど、この封筒の中身知った僕は、マリリンに悪いけどそんな事を気にするどころか、マリリンに対して向けた感情は怒りや焦りといった負の感情だけだった。
だから僕は思わず声を荒げて
「何故もっと早く僕の元に持ってこなかったんだい?
この封筒の中に書かれていた内容は、決して放っておいていい内容ではない事ぐらい分かるよね?」
つい負の感情任せにマリリンを攻めるように問い詰めてしまう。
「わっ私だってすぐに中身を確かめようとしたんです。
だけど封筒に強固な封印魔法が施されていたから、中々封を開ける事が出来なかったです」
「それに誰がたまたま手に入れた封筒の中身に”聖女様の殺害計画が書かれた紙”が入ってるなんて思いますか?」
マリリンにそう言われて、その通りだと思った。
まさかカジノで手入れた封筒の中身に
【死者の日開催日の開会宣言時に、こちらで聖女を始末します。
ですからアーサニーク様は、ソレを合図にあなたが練った計画通り、この街の制圧を始めてください】
などと物騒な事が書かれているなんて、きっと誰も思いもしない。
そして要人が殺害されるかもしれないと知った時に、素早く冷静にこの情報が本当に正しいのか判断すると同時に、最適な対処が出来る人間なんて極僅かだ。
そして僕がこの指令書を読んで、心中穏やかでなくなってしまった理由は他にあった。
なんせこの指令書に、僕が最も憎む存在の証である”イルミナーテン”の印が記されているという事は、この一件はイルミナーテンが一枚絡んでいる事が確定しているからだ。
しかし、だからと言って僕がマリリンを強く攻めるのは、お門違いである事に気が付いた僕は
「……君の言う通りだ、マリリン。
僕も君の状況を考えないで強く言い過ぎてしまった。
コレを僕の元に届けてくれてありがとう」
僕は感情的になって言い分も聞かずにマリリンを責めてしまった事を謝罪すると同時に、マリリンが重大な情報を持ってきてくれた事に感謝を伝えれるぐらいの心の平静さを取り戻した僕は、今僕がも優先してやるべき事の為に、この場から駈け出した。
「まだ、まだ間に合うハズだ」
間もなくルーサ様による死者の日の開催宣言が始まろうとしているが、今ならまだ止める事が出来るハズだ!
最終チェックの為に中央広場から少し離れたスタッフルームを訪れていた僕は、中央広場に建てられた特設会場に急いで向かうが、中央広場はルーサ様の姿を一目拝見しようとしている人達でごった返しているので、中々思うように進めない。
(クソ、こんな所で足止めを食ってる場合じゃないんだ!)
僕は多少強引に人込みを掻き分け、なんとか開会宣言前に特設ステージに辿り着くと、そこにはステージ周辺を警備する騎士達が、ステージを包囲するかのように配備されている。
こんな厳重な警備体制の中、どうやってルーサ様を殺害するつもりなのかは分からないが、嫌でも信じざる負えない情報筋から得た情報を、ルーサ様を守護する為に配備された騎士達に伝える為に
「今すぐ開会宣言の中止を!
ルーサ様の命が危ないんです」
と大声で叫べば、護衛騎士達は「何事だ?」言わんばかりの表情を僕に向けると同時に、護衛騎士の一人が僕の元に駆け寄ろうとした時
『ドッッオォォォォーン』
僕の目の前で、特設会場が大爆発と共に粉微塵に吹き飛んだ。
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