問題
アルフォンスの運転で死者の日のメイン会場となるアークタウンの中央広場に向かっているが、道路が混雑している為ルーサ様の元に辿り着くのは普段の倍以上時間が掛かっているので、この瞬間に少しでも休んでおおいた方が良いんだろうが、なんせ大事な祭典を絶対に成功させたいという焦燥感が僕の内にある所為で、どうにも休むと言う選択肢は選べない。
そんな僕の心理状況が思いっきり顔に出てしまっている為か、アルフォンスがバックミラー越しに僕を心配そうに見ているのだが、僕は平静を装う為に何事もないかのようにどっしりと構えつつ車の中でスケジュールチェックを行っていると
「……使用人の一人して差し出がましい事を申し上げるかもしれませんが、正直に申し上げます。
ウィルフレッド様!
もうあなた様お一人で全てを成し遂げようとするのは、既に限界を迎えています。
一端髑髏の闇騎士としての活動はご自重しつつ、今後の活動方針について一考しなければ、目的を果たす前にウィルフレッド様の命が尽きてしまいますよ」
アルフォンスは僕に対して”自分でも自覚しつつある一人で活動する事の限界”についての意見を、ハッキリと伝えてきた。
「……例えそうだとしても、僕は領主としての活動も、髑髏の闇騎士として活動を止めるつもりはないよ」
僕はアルフォンスに「方針を変えるつもりは一切無い!」とハッキリ伝える、自分の覚悟を示す。
「それならせめて髑髏の闇騎士としての活動を続けるなら、協力者を得るべきです。
そう、ウィルフレッド様を隣で支えてくれるパートナを!」
しかしアルフォンスも引く気がないようで、僕には「共に戦ってくれるパートナー」が必要だとハッキリ口にしてくる。
「...…それだけはダメだ!
僕はこの復讐の先に待っているのは地獄だと分かっている以上、誰かに僕と同じ道を歩ませる訳にはいかない」
僕の復讐の先に待つのは、ハッキリ言って”ロクでもない結末を迎える”という確信が僕にはある。
だからこればかりは唯一の家族とも言えるアルフォンスにどう言われようとも、決して変えるつもりはない。
本音を言えばアルフォンスが後方支援で僕を今でも支えてくれる事さえ、本当は「今すぐ引いてほしい」と思っているぐらいだ。
僕の決意を聞いたアルフォンスは「...…困った主人だ」とでも言いたげな顔を浮かべている。
そんなアルフォンスとこれ以上目を合わせるのが気まずくなった僕は、アルフォンスから目を逸らした後、中央広場に辿り着くまでの間に出来る仕事に取り掛かかる。
・・・
普段より道路が混雑していた事もあって、普段の倍近くの時間を掛けてようやくこの街の中央広場に辿り着いた僕は、直ぐに車を降りて外の空気を吸った。
正直車の中でのアルフォンスとやり取りの後、どうにも車内に漂う空気を悪く感じていたので外の空気が妙に新鮮に感じる。
(さて、気を取り直して今日の本題に取り掛かるとしよう)
こうして僕は本日最も重要なイベントであるルーサ様が”死者の日”の開催宣言を行う会場の最終チェックを、現場のスタッフ達と共に進め始めた。
「...…特に今の所は問題は見当たらないか」
現場のスタッフ達と最終チェックを行ってコレと言った不備は見当たらなかった。
コレも全ては”死者の日”を必ず成功させる為に、スタッフ以外の多くの街の住人が様々な面で協力してくれたからだ。
お陰で最も不安に感じていた警備面も十分過ぎるほどに強化されているし、既にルーサ様は会場に到着して安全な場所で待機している。
そんな万全な状態で死者の日の開催宣言を迎えようとしているのに、僕の中には言葉では言い表せない不安の気持ちが拭えないでいるのは、僕は僕が思っている以上にこの祭事に関して神経質になっているからだろうか?
(今更不安を募らせた所で何かが変わる訳じゃないんだ。
今は僕に出来る最善を尽くそう)
僕は僕の中で消えない不安感を少しでも落ち着かせようと、心の中で自分にそう言い聞かせる。
・・・
いよいよ死者の日開催宣言まで、残り30分を切った。
相変わらず何も以上は見られないけど、気を抜く事は許され事もあって僕や現場のスタッフ達の間にはピリ付いた緊張感の漂う空気が開催宣言の時間が近づくにつれて強まっているのが分かる。
(……あと10分)
時計を確認してそう思った瞬間
「コラ!
この先は関係者以外立ち入り禁止だぞ」
後方から警備スタッフの怒声が響くいたので、僕は咄嗟に怒声が鳴り響いた方向を振り向くと
「...…あれは?」
そこには警備スタッフ達が関係者以外立ち入り禁止区域に侵入した何者かを捕まえようと、必死にフードを被って素顔を隠している何者かを追いかけている姿が見えた。
(それにしても逃げるのが上手い)
フードを被った侵入者は、かなり逃げる事に関しては慣れてるようで、捕まえようとする警備スタッフから上手く逃げ回っては、周囲をキョロキョロと見渡して何かを探しているようにも見える。
(どうやらこれは僕も加わった方が良さそうだね)
相手が逃げ上手だと悟った僕は、警備スタッフ達に加勢すべく侵入者の動きをを読み、逃げる先に回り込もうとした時、侵入者が僕の方に顔を向けて立ち止まった。
かと思えば、今度は僕目掛けて一直線に駆け出してくる。
(どうやら狙いは僕か)
侵入者のターゲットが僕だと分かった以上、僕は侵入者を迎撃する為に構えた瞬間
「ウィルさん!
大変なんです!!」
「その声は……マリリン?」
素顔が見えないローブの中から聞えた声は、僕が良く知っている子の声だった。
最後まで読んで頂きありがとうございました。
久しぶりの更新となりましたが、今後もしばらくは更新出来ると思います。




