街の復活の為に
ついに死者の日開催当日となった。
やはり今年サナッタ・シティで開催されるの死者の日はルーサ・ルカという多くの人から尊敬と敬意を得ている神官が来訪したことで、予想通を遥かに超える観光客がサナッタ・シティに集まり大いに盛り上がりを見せている。
なんせ昨日行われた前夜祭だけで、この街に外部から訪れた来場者数が既に”過去最高”の記録を打ち立てていると言えば、どれだけこの街が今盛り上がりを見せているのか想像しやすいだろう。
町全体が盛り上がりを見せる中、一部の人間はこの状況を冷静に見極め、何事もなく無事に死者の日を終える為に、今日も必死に活動している。
例えば聖騎士であるエレノアは外部から訪れた要人の警護に当たり、領主であるウィルフレッドはこの街を治める代表として様々な対応に追われていたため、二人共この一週間寝る間も惜しんで働き詰めとなっている。
そんな二人は現在、死者の日が始まる前の最後の打ち合わせとなる会議に出席していた。
「今年の死者の日は、予想以上の観光客が訪れていますが、来場者の数が多すぎて各地でイザコザの発生割合が大幅に増える事を考えると、警備の人間が足りてない状況です」
「そこに関しては民間の協力者が結成してくれたボランティアスタッフに警備を手伝ってもらうしかなさそうです」
「大変ありがたい話ですが、本来守るべき市民を危険が生じる場所に配置するといのもどうかと思いませんか?」
「だが、そうでもしないとこの状況を無事切り抜けられないのでは?」
「この問題、領主殿はどうお考えですか?」
「……」
「ウィルフレッド様!」
「……!」
本番前における最後の会議に参加していたのだが、いつの間にか僕は意識が飛んでしまっていたようだ。
どうやらここ一週間、死者の日に関する仕事に追われながら、髑髏の闇騎士としての活動も最低限は続けていた事で、疲労が相当溜まっているのは分かっていたけど、まさか居眠りをしてしまうなんて何とも情けない……
アルフォンスに声を掛けられて意識を取り戻した後、周囲に目をやれば誰もが僕に対して不安の表情浮かべている。
全く……皆に要らぬ心配をかけさせてしまうなんて本当に僕はダメな領主だ。
「皆すまない……それと話が進んでいる中ほんとうに申し訳ないんだけど、どこまで話が進んだのかもう一度教えてもらえるかな?」
***
会議は僕の所為で不穏な空気が流れはしたが、何とか意見は纏まり死者の日最後の会議は終わりを迎えたのだが、これはまだ今日の仕事の序の口でしかなかった。
本日夜から死者の日の本祭が始まれば、忙しさは今までとは比べ物にならない忙しさになるだろう。
次のスケジュールを確認し、車で移動しようとした時
「ウィル! あなた大丈夫なの?」
エレンが心配そうに僕に声をかけてきた。
「ああ、さっきはみっともない姿を見せてしまったね。
でも体はこの通り問題なく動かせるから大丈夫だよ」
僕はエレンに「何ともない!」という事をアピールするために、体を軽く動かしながら軽い口調で答えた。
「ハァ……そのセリフ、鏡で自分の顔を見ても言えるかしら?
悪いけど今の貴方、相当疲れが溜まってるが誰が見ても分かるぐらい酷い顔よ!
お願いだから仕事は私達に任せて、ウィルは休んで」
エレンはハッキリと僕の隊長が悪い事を指摘してきたけど、実際の所はエレンの言う通り自分でも相当疲れが溜まっているのは分かっている。
「エレンは手厳しいな……だけど今日さえ終われば仕事も落ち着くし、僕は領主として何としても今回の死者の日を無事に終える事で、この街が依然のように賑やかになっている事を証明したいんだ。
だから心配してくれるエレンには悪いけど、僕は自分の仕事を休むつもりはないよ」
八年前の悲劇でこの街は大きく傷ついたけど、その傷も毎年確実に癒えつつあるし、この街が以前の姿を取り戻すまで後少しの所まで来ている。
だから僕はこの街の領主という街の象徴であり、この街の今後を背負っている人間である以上、今歩むのを止める訳にはいかない。
「エレンだって分かっているだろ?
今日僕が姿を現さなかったら街の皆と外から来た人達に余計な不安を与えてしまうかもしれないし、この街にまだ残ってるマフィアの残党が、チャンスと思って何かを仕掛けてくれるかもしれないって事を」
僕は真剣な眼差しでエレンを見つめ「僕の決意はもう既に決まっている」という事を目で訴え、しばらくエレンと睨み合いを続ける。
「……ホンッッット昔から一度決めた事は、ちょっとやそっとの事じゃ曲げようとしない頑固者なんだから!」
そして僕とエレンの睨み合いは、エレンが折れてくれた事で終わった。
「ウィルが死者の日を無事に成功に導きたいのは良く分かったわ。
でもやるって言った以上ウィルには最後まで領主の仕事やり抜いてもらうわよ。
そ・れ・と!
もしさっきみたいなみっともない姿をお祭りの最中に晒そうものなら、ベッドに括りつけてでも休ませるから!!
だからそのつもりで仕事してよね!
りょ・う・しゅ・さ・ま」
エレンから次に仕事中に居眠りしたら”強制退場”の通告を受けてしまったけど、なんだかんだ言っても僕の意見を尊重してくれるエレンも、身内と認識している人間には甘いと思う。
そして僕はエレンと必ず仕事はやり遂げる事を約束した後、ウィルフレッドの用意した車に乗り込むと、ウィルフレッドは水の聖女の元に向かって車を走らせた。
最後までこの話を読んで頂きありがとうございました。




