燃える物、後に残る物
お目当ての紙を金庫から可能な限り持ち出せるだけ持ち出した私は、その後出来るだけ気配を殺しつつ素早くカジノから脱出する為に、再び天井裏を駆け回っているんだけど、正直言ってこんなに上手く行くとは思ってもいなかった。
金庫を開けることはスムーズに出来ても、開ければ何かしらの防犯魔法が作動して他の場所から警備に当たってるファミリーの人間が金庫室にやってくる物だと思っていたし、いくら金庫室から誰にも見られず逃げる事が出来ても、異変を察知して警戒態勢が厳しくなると思っていたんだけど、そんな様子は見られないから、私は想像より遥かに簡単にカジノからお目当ての物を奪って脱出出来ちゃったから、正直肩透かしを食らった気分。
そしてカジノからかなり離れた空き家に入り、今回の戦利品を確かめてみる事にする。
「うっわぁ……自分でコレだけ盗っておいてこんな事いうのもアレだけど、こんな金額失ったら普通の中小企業は間違いなく破産する金額だよね」
私は奪った小切手の総額を数えて素直にそう思った。
今回私が狙ったのは、金品だけど自分では換金する事が出来ない小切手。
なんでそんな物を狙ったのかと言えば、今まではお金を本来の持ち主達に還す為にも金品を奪っていたけど、今回の私の狙いはアーサニーク・ファミリーに私が出来る最大限の打撃を与える為だ。
金品を奪うだけでも懐にダメージを与えてやることは出来ていたけど、やはり金品を持ち出すには私一人じゃ持ち出せる領に限界があった。
だから私が持ち出せる範囲で、最も相手に経済的な打撃を与えってやれる方法ってなると
「紙切れ一枚が大金になる小切手を奪ってやれば大打撃を与えるんじゃないのかな?」
そう考えた私は、出来るだけ小切手が集まりそうな日を考えると、今日が最も小切手が集まる日と踏んで盗みに入ってみたけど、私の予想は見事に的中した。
だってその証拠に、今私の手元には”一億ドラー”相当の小切手が手元にある。
コレだけのお金があれば、今はもう無くなってしまった私の生家であるモーリス家の屋敷を、二棟建ててもお釣りが出そうな金額だけど、私が大量の小切手を奪ったのはもう無い物を取り戻す為じゃない。
だから私は何の躊躇もなく、換金すれば大金となる小切手を空き家の暖炉に押し込んだ後、マッチで火を付けてやる。
すると小切手に一瞬で日が”ゴオォォォ!”っと燃え広がったけど、そんな炎が燃え広がる光景を見ていると、この炎は未だに”私の中で消える事なく激しく燃え続けている復讐心”のように思えた。
そして私が燃やした小切手が、例え一億ドラ―の価値があっても、燃え尽きてしまえば只の灰になって何も残っていない光景を見ていたら
『例えやり遂げた所で最終的に何も帰ってこない……』
髑髏の闇騎士が前に言っていた言葉が不意に頭を過った。
(何となくだけどあの人があの時言ってた事って『こうゆう結末が待ってる』って言いたかったのかな?)
私は完全に燃え尽き、僅かな灰と火が燃えていた痕跡が残るこの場所を見てそう思わずにいられなかった……
火の後始末を終え、今日の目的を果たした私は、空き家から立ち去ろうとした時。
(アレ?)
床に一枚の綺麗封筒が落ちている事に気が付く。
「こんな封筒持ってきたっけ?」
もしかしてこの空き家に元々あった物かと思ったけど、ココは長い事放置されていた空き家だし、最近誰かが立ち入った形跡も見られない。
それにこの封筒はまだ綺麗なので、私が急いで金庫から小切手と思われる紙切れを袋に詰めていたから、その時気が付かないで袋に入れてしまっていたのが、可能性としては一番高い気がする。
この封筒をどうしようか迷っていたけど、再び暖炉に火をくべるには時間が掛かるし、誰かに勘付かれる可能性があると思った私は、とりあえずその封筒を持って空き家から離れる事にした。
それにこの封筒って金庫に仕舞われていた物なら、かなり重要な書類だと思うから、そう考えたら一度中身を覗いておいた方が良いかもしれないし。
こうして私は普段の夜と違って、お祭りムードが湧きたつ騒がしい夜の町の中を、誰にも見られる事無く駈け出した。
・・・
・・
・
「フフフ、さぁ、ソレをどう使うのか。 後は貴女次第ですよ。
精々我々の為になるように上手く使ってくださいね。 泥棒猫さん」
銀青の泥棒猫の姿を最も暗くて闇の深い場所から銀青の泥棒猫の姿を見送るのは、イルミナーテンの大司教と呼ばれる人物。
彼女は一体何を考え、何を企んでいるのだろうか?
全ては明日になれば分かる事だろう……
最後までこの話を読んで頂きありがとうございました。




