計画は進む
「おう、おう、コイツはスゲェな!」
死者の日の始まりを告げる前夜祭が開催されるはまだ明日だと言うのに、アーサニークの経営するカジノには予想を遥かに超える客が訪れていた。
その光景を自分の屋敷から眺めているアーサニークの表情は、ご満悦の様子を見せる。
「どうです、私が事前に伝えた通りになったでしょ?」
「いやぁー、ホントですなぁ!
大司教殿の言ってた通り『水の聖女がア突然訪れたら、放っておけば自然とこっちに金が回ってくる』って聞いた時は、本当に水の聖女の出迎えもしなくても大丈夫なのか?
と思いましたが、ここまで大司教殿の言う通りに事が進むと、今後の計画も上手く行きそうですな」
アーサニークは数日前に再び訪れたイルミナーテンの大司教から受けた言伝を元に、ココ数日動いていたのだが、その結果全てが順調に進んでいる為、先程より更にご満悦の様子を見せる。
「私のアドバイスが功を制したようで何よりですが、今後アーサニーク様の計画が上手く行くかどうかは、アーサニーク様が『計画の下準備をしっかり出来るかどうか?』で、大きく結果が変わってきますからね?
その事をお忘れきように!」
「そ、それはもちろん心得ています」
「ちなみに、アーサニーク様の計画の準備の進捗状況はどれほどの物でしょうか?」
「八割方は終わっています!」
「ふむ、悪くない進捗状況ですね。
以前お伝えした通り、水の聖女は恐らく明日の午後までは此方に置いておけると思います。
水の聖女がこの町に滞在している間は、事前にお伝えした通り”この町に大いに注目が集まります”ので、その隙を狙って残っている個所に例の仕掛けを誰にも悟られずして仕込む事は十分可能ですよね?」
「もちろんです! 大司教殿」
「それを聞いて安心しました。
と、言うより、ここまで我らイルミナーテンがお膳立てしてあげても、貴男が下準備も終わられならない無能だったら、私は貴方に『もう死んだ方がマシだ!』と思えるようなとってもキツイお仕置きをしなくてはいけなかったので、そんな事にならなくて心底良かったと思っていますよ」
アーサニークが”大司教”と呼ぶローブを被った女性は穏やかにそう答えたが、その言葉を聞いたアーサニークの先程までご満悦だった表情は、打って変わって引きつった笑みを浮かべている。
「し、しかし驚きですな! イルミナーテンの影響力がココまで強大とは」
「そんな事アーサニーク様からしたら分かり切っていた事じゃないのでしょうか?
なぜなら貴方達のような王都の隅に居たゴロツキを拾い上げ、ここまで強大なマフィアという組織に仕立てあげたのは、我々イルミナーテンなのですから」
「そっ、そういえばそうでしたなぁ……」
アーサニークは自分にとって物騒な話題をすり替えるために、別の話題を振ってはみたが、大司教の言葉を聞いてイルミナーテンが自分達のようなマフィアなど”決して足元にも及ばない”巨大な地下組織である事を嫌でもアーサニークは痛感したからか、言葉は尻すぼみになっている。
実はアーサニークは、元々それなりに優秀な魔導士であったのだが、所属する魔導士協会で色々と問題を起こし過ぎてしまった所為で、所属魔導士協会から追放されてしまった。
そしてその後は王都の各地を巡って仕事と住場所を探していたのだが、結局魔導士協会で起こした問題が仇となって誰もアーサニークには関わろとしなかった。
そしていつしか気のない場所に住むゴロツキとなってすっかり落ちぶれていた所を、イルミナーテンという組織に拾われ、そこからイルミナーテンの助言と援助を受け、悪名高いマフィアの一勢力のボスとして成り上がる事になる。
そして同時にアーサニークは、イルミナーテンの下部組織の一員であり、イルミナーテンにとっては都合良い駒として生きるようになったのだが、その際イルミナーテンの大司教と呼ばれる者達が、圧倒的な力を持ってイルミナーテンの活動の邪魔になる存在を、一方的かつ容赦なく葬ってきたのを知っているから、大司教という存在に対して病的とも言えるぐらいの恐怖心を抱いている。
それにイルミナーテンがいくら強大な力を持っているにしても、まさかこの王国唯一の教会である「救世の会の行動を把握するだけでなく、自分達の思惑通り教会の人間を動かせる力があるとは思ってもいなかったので、益々アーサニークの中ではイルミナーテンという組織が『どれほど恐ろしい組織なのか!』
その事を嫌でも再認識する羽目になってしまったようだ。
「さて、私はそろそろお暇させて頂きますから、また明日の夜にでも状況をお伺いさせて頂きますね」
そう言った後、大司教は以前アーサニークの屋敷から去って行ったよう、霧が大司教を包んだ後、大司教はアーサニークの前から跡形もなく姿を消してしまった。
――同時刻、アーサニークの経営するカジノにて。
「まさかこんなに人が集ってくるなんて……」
ルーサ・ルカ様がモーリスタウンに急遽滞在する事になり、その噂を駆けつけた人達が大勢モーリスタウンに押し寄せてきた。
そしてモーリス・タウンは、水の聖女が訪れた場所として現在異様な熱に包まれており、その熱にあてられた人達は勢いづいてしまった所為か、夜のモーリス・タウンにて最も賑わっている場所である【カジノ】に集まっている。
これもルーサ・ルカ様が来たことで、町全体の雰囲気が明らかに明るくなり、町の勢いが爆上がりしたからなのかな?
なんにせよ想定していた時より、遥かに多くの人間がこの町に集まってくれっちゃた所為で、私はまた次のターゲットの下見をする羽目になってしまってるんだよね。
「ここ最近ホント運が良いのか? 悪いのか? どっちなのか良く分かんなくなってきたなぁ……」
良くも悪くもここ最近変な流れに振り回されてる気がするから、仕事も変な流れに振り回されないよう、私も下準備を進めておきたい。
だから私は再びカジノに音もなく侵入し、改めて現場を入念にチェックする事にした。
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