憧れの人
「並ばれている大勢の方には申し訳ありませんが、予定時刻が迫っていますので、本日の水の聖女様との対談は現在会場内に入られている方を持って終了とさせて頂きます!」
日が間もなく暮れようとする頃に、大声でその知らせが会場に響いた瞬間、水の聖女様事ルーサ・ルカ様に会う為にこの大行列に並んでいる皆に動揺が走った。
そしてその知らせは、聖女様と対談出来る特設会場の外で待つ人達にとっては非常に残念な知らせであり、特設会場内に入ってない人達は警備を担当する人達の説明を受けると、ガックシと肩を落としながら大行列から離れていく。
(あっ、危なかったなぁ~!)
私はギリギリ会場に入っていたから、水の聖女様と対談出来る資格をGET出来たけど、あと一人分並ぶのが遅れていたら会場から去って行く人達みたいに、表情から生気が抜け暗い雰囲気を纏いながら会場から去って行ったなんて考えたら、ここ最近の自分のツキの良さは私が思う以上に凄い気がしてきた。
そして自分の番が最後と言う事もあって、前の人が一人、また一人とルーサ・ルカ様と対談を終えて行く光景を凝視しつつ、自分の番があと何人と意識しだすと緊張がどんどん高まると同時に、私の鼓動の激しさが増していく!
(ヤバイ……私の心臓音が五月蠅すぎるよ!)
遂に憧れの人と対面出来る時まであと一人になると、緊張し過ぎて心臓がバクバクとめちゃくちゃ五月蠅く響くから、本気で私は自分の心臓が破裂しないか心配になってきた。
あまりも心臓の音が五月蠅いから、私は深呼吸をして少しでも荒ぶる気持ちを落ち着かせようとする。
「次の方で最後ですね。
お待たせしました。 どうぞこちらに」
そう言って聖騎士隊のジョージさんが、私をルーサ・ルカ様がいる部屋に案内する為に声をかけてきたので、結局私は深呼吸して気持ちを整えられず「はぁ゛、はいぃ゛~」なんていう、緊張し過ぎるあまり裏返った声で返事をしてしまった。
正直知らない人に聞かれるより、ウィルさんバーで何度も顔を合わせている知ってる人の前であんな声出してしまったのは、滅茶苦茶恥ずかしかった……
だけどジョージさんは、どうやら私みたいな反応をする人を今日散々見て来たからなのか、特に私の様子を気にする様子も見せないで、私をルーサ・ルカ様の部屋に案内してくれた。
「せっかく来て頂いた所申し訳ありませんが、時間が大分押していますので聖女様との対談時間は3分ほどでお願いします」
え!? 行列に並んでる時の説明は一人五分って言ってたのに、私だけ短縮されるの?
ついさっき
(最後だから少し長く話せたりしないかな?)
なんて期待を偉大ちゃったりしたんだけど、現実は延長じゃなくて短縮だなんて結構酷いオチだと思うけど、そんな事より私は「目の前にいる憧れの人と直接話せるチャンスがある」という事に感激していたから、そんな事直ぐにどうでも良くなった。
「は、は、はじめまして、ルーサ・ルカ様!」
「はじめまして、お嬢様。
今日私に会いに来てくれる為に時間を作ってくれた事に心から感謝します」
そう言ってルーサ・ルカ様は丁寧かつ洗練された動きで頭を下げてきた。
「そ、そんな! 私なんかお嬢様じゃないですし、私みたいな人間の為に頭なんか下げないでください!」
「あら!? とても可愛らしい方だからてっきりお嬢様かと思いましたが、もしかしてご令嬢でしたか?
もしくはお嬢さんだったり?」
「……令嬢でもお嬢さんでもないんですけど」
「じゃあ……もしかしてお姫様でしょうか?」
正直「全部意味合い的には一緒みたいなものですよ!」ってツッコミそうになったけど、ルーサ様からすると私ってそんな風に見えるのかな?
正確に言えば私は”元貴族令嬢”になるのかもしれないけど、今はそんな上品な呼ばれ方されるような生活してないから、上品な呼ばれ方されても私は困る一方なので
「私の名前はマリリンです」
と、最近よく名乗っている名前をルーサ様に伝える。
「マリリンさんですか、いいお名前ですね」
「そんな事ないです……それより今日は、ずっと会って話してみたいと思っていた『ルーサ・ルカ様』に会う事が出来たので光栄です」
「私なんかと会う事を光栄と思って頂けてる事が、私にとっては光栄ですよ。
マリリンさん」
(これは……何を言っても褒められ返される気がする)
ルーサ様と少し気が抜けるような遣り取りをしたお陰?で、私のレベルMAXだった緊張もかなり落ち着いてきたから、このまま話を続けてもこの流れのままルーサ・ルカ様との話が終わりそうな気がした。
だけどそれじゃあ私はそんな話をしたくて、あの途轍もなく長い行列を並んだ訳じゃない!
私はルーサ・ルカ様にどうしても気になっているある事について聞きたいから、この場にいる。
だから私は時間もないから、思い切って私が気になって仕方がないあの事について聞いてみる事にした。
「会っていきなりこんな事聞いちゃうのも失礼かもしれないんですけど……」
「別に構いませんよ。
私に聞きたい事があるんでしたら、どんな事でも聞いてください」
そう言ったルーサ・ルカ様の笑顔は、澄んだ水の如くとても柔らかい笑顔で、ホントにどんなことを聞いても”必ず答えてくれる”
ルーサ・ルサ様の表情から私はそう強く感じた。
「どうしてルーサ・ルカ様は、人を救う為に各地を巡っているんですか?」
正直に思っている事を尋ねた。
だってルーサ・ルカ様はどちらかと言うなら、私と同じように過去に起きた事で全てを失って身も心も、もの凄く深く傷ついた人だ。
それにルーサ・ルカ様に深い傷を負わせたのは、他人じゃなくて【大津波という天災】だから、きっと私みたいに誰かを恨んで行動した結果が、たまたま誰かの助けになった訳じゃないと思う。
(そんな誰かを恨んでる訳でもないのに、どうしてルーサ・ルカ様は私と違って、知らない誰かの為に一生懸命尽くす事が出来るんだろう?)
その理由がどうしても知りたかった私は、黙ってルーサ・ルカ様の返事を待つことにした。
最後までこの話を読んで頂きありがとうございました。




