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聖女の行き先

 水の聖女と呼ばれる救世(サルベイション)の会(・ソサエティカ)の神官「ルーサ・ルカ」がサナッタ・シティを訪れた事で、サナッタ・シティ全体が盛り上がるのと同時に、現在サナッタ・シティに居る誰もがソワソワする様子を見せているのには理由があった。

 なんせ神官であるルーサ・ルカが死者の日に祈祷を捧げるまで後二日あるので、その間に誰もがルーサ・ルカがこの街の何処に行くのか気になって仕方がないからだ。

 その理由は単純に噂の水の聖女の姿を見たいと思う者から、彼女が訪れてくれたら()()()()()その地域の経済は一時的に潤うので、その効果に期待する者。

 はたまた彼女がいる場所で彼女に関する即興で作ったグッズや、彼女が訪れた由緒ある場所である事を理由に何とか一儲けしようと企む者など、街の人間が彼女の行動を気にするその理由は様々だった。


 そんな誰もが注目して止まないルーサ・ルカは、来訪当日は領主であるウィルフレッドが用意した宿に泊まって旅の疲れを癒した後、翌日再びウィルフレッド達の元に訪れた。


「おはようございます、ルーサ様。

 昨夜は何の問題もなく過ごすことが出来ましたか?」

「おはようございます、ウィルフレッド様。

 あなたの心遣いや警護についてくれている聖騎士隊(パラディン・ナイツ)の皆様のお陰で、何の問題もなく過ごせていますのでご安心ください」

 そう言いながら優雅に頭を下げるルーサだが、相変わらずその所作一つ一つは非常に洗礼されていて、澄んだ水のような気品と優雅さを感じる所為だった。

 朝の挨拶と様子を伺っただけでそんな畏まった所作をされたウィルフレッドは、内心ちょっと居た堪れない気持ちになっているのだが、そう思うのも昨日の一件をまだ引き摺っているからだった。


 昨日ウィルフレッドとエレノアは、ルーサから「気さくに『ルーサ』と呼んでください」と言われはしたものの、この王国というよりこの大陸に住まう全員から信仰される教会「救世の会」の高位神官に対して、そのように接する事など恐れ多いと思った二人は、なんとか「ルーサ様」と呼ぶことで妥協してもらった。

 しかし、そこに至るまでの過程で気苦労が絶えなかったので、その事を再び思い出してしまったウィルフレッドの心情は、ちょっと居た堪れない様子だ。

 だからと言ってルーサに悪気がある訳ではない事を理解しているので、ウィルフレッドは気を取り直してルーサにある事を尋ねた。


「それではルーサ様、本日ルーサ様はどのように過ごすつもりなのか、我々にも教えて頂けますか?」

「そうですね。

 まずはこの街にある教会の支部を一通り回りたいと考えています」

「分かりました。

 ちなみにこの街には三つの教会支部がありますが、支部場所をご存じないのでした我々が案内しますけど、どうしますか?」

「ありがとうございます。

 それではお言葉に甘えて、各教会支部への案内よろしくお願いします」

「お任せください、ルーサ様」


 こうしてサナッタ・シティにある教会支部をルーサと共に、ウィルフレッドとエレノアは回る事になったのだが、この街にはウィルフレッドの言う通り教会支部は三つしかなく、お互いの距離はそこまで大きく離れている訳ではなかったので、午後に入るころには最後の支部に辿り着くと、ルーサは最後の教会支部にて他の支部で行って来たように、各支部の中に必ずある精霊神の像に祈りを捧げ始めたので、ウィルフレッドとエレノアはその様子を離れた場所から見守っていると


「……やっぱり色々と凄い人よね、ルーサ様って」

「そうだね。

 こんな事言っちゃいけないかもしれないけど、教会に勤めている人であんなに真剣かつ誠心誠意精霊神の神像に向かって祈りを捧げる人を、僕は初めて見たよ」

「そうね、職務と信仰に忠実な姿勢も凄いと思うけど『女としても完璧』って、卑怯過ぎると思うわ……」

 エレンが遠い目をしたままそうぼやいてしまったのは、昨日からルーサに美しくて品のある数々の所作から、人としての器の大きさを感じる発言に、一切露出のない服を着ているというのに、そこから感じる女性の色気等、同じ女として数々の差を嫌でも目の当たりにしてしまったエレンの内心は、とても複雑のようだった。


「はぁ……私も少しはルーサ様みたいな女性(ひと)として美しい作法を身につけておくべきだったかしら」

「そこを気にしたって仕方がないと思うけど」

「……ルーサ様の一挙一動に見照れていた誰かさんがそんな事言われたって、説得力ないわよ?」

「そっ、そんな事は……」

 エレノアはウィルフレッドがルーサの見惚れるような美しい振舞に目を奪われていたのを見てしまったたから、自分とルーサの女性としての差に嘆いた事に気が付いたウィルフレッドは、バツが悪そうな表情を浮かべつつ、なんとかエレノアをフォローする言葉がないか考えているが、とっくにルーサに鼻の下を伸ばしていた事がバレてしまっているので、下手な事も言えずに困っていると


「フフフフフ、お二人は仲がよろしいのですね」

「「ル、ルーサ様!」」

 ルーサは二人の遣り取りを微笑ましく見ていたようだが、まさか二人の話題の中心となっていたルーサ本人に見聞きされているとは思っていなかった二人は、慌てた表情を浮かべる。


「お、お祈りは終わったんですね!」

「ぶ、無事に終わって何よりです!

 それで、この後のご予定は既にお決まりでしょうか?」

 二人は慌てつつも、先程の話題についてルーサに触れられないように、別の話題を振ってみるが、ルーサは先程と変わらない微笑を浮かべたまま


「そうですね。

 このままお二人の仲睦まじい姿を見て居たい気もしますが、どうしてもこの街で行っておきたい場所がありますので、お二人にはまたご迷惑をかける事になると思いますが、その場所まで案内と同行をお願いしてもよろしいでしょうか?」

「「もちろんです!!」」

 二人はこれ以上先程の話題を蒸し返される事がないと分かった事に安堵しつつ、ルーサの言う「行っておきたい場所」を尋ねると


((この人はやはり本当に聖女なんだな))

 と、思わずにいられない答えを聞いたので、快くルーサが言った場所にルーサを案内するのであった。


・・・

・・


「……どうしてこんな事になってるんだろう」

 私は只驚く事しか出来なかった。

 だって今私の目の先には、会えるなら一度会ってみたいと強く思っている人が! あのルーサ・ルカ様が!!

 モーリス・タウン訪れるなんて夢のような話が……私の目の前で起きているんだから。

最後までこの話を読んで頂きありがとうございました。


やっぱりいきなり憧れての人が目の前に現れたら、滅茶苦茶驚きますか?

ちなみに私は過去に一度憧れの人が目の前に居たのに、気が付かないでスルーしてしまった事があります(笑)

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