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大物の来訪

「うん、大体把握出来たかな」

 夜もすっかり更けようとしている頃。私は今日もアーサニーク・ファミリーから金品を奪う為に、アーサニークファミリーが運営しているカジノに潜入しているんだけど、今日は明日盗みに入る現場の下見に来ただけだから、ターゲットである金庫に安全かつ最短で辿り着けるルートの確認と、警備の配置の確認が終わった後、私は直ぐにカジノから抜け出す為に出口を目指したんだけど、その際に思わず


「事前情報無しで動くのって、やっぱり大変だなぁ……」

 と、つい愚痴を零してしまった。

 と言うのも、実は五日前を最後にウィルさんは死者の日(オールソウルズデー)が終わるまで本業である領主の仕事が多忙になるから、バーをしばらくお休みする事にしている。

 そしてバーがお休みなるという事は、私にとって盗みに関する有力な情報収集をする場所が仕えなくなってしまったのと同じだ。

 つまり今の私の状況は、ウィルさんのバーが再び営業を再開するまで”自分の一人の力”で情報を収集しなくちゃいけなくなったんだけど、ここ最近ウィルさんのバーで情報を得る事に慣れちゃってたから、一人で情報を集める大変さを再び思い知ったし、なかなか盗みも実行に移せないでいる。


もっとも前に私は情報不足で何度も窮地に陥った経験があるし、いくら前より強くなっても、きっと前みたいに大勢のファミリーの人間に襲われたら敵わないのも分かっているから、可能な限り下準備をしつつ慎重に行動するようにしているんだけどね。

 そして明日盗みに入って成功するという確信を得る為の下調べが十分に終わった私は、無事に誰からも見つかる事なくカジノから脱出した私は、ちょっと確認したいことがあったのでサナッタ・シティのシンボルの一つであり、展望台まで登ればこの街が一望出来る場所である時計塔の屋根を目指す。

 夜遅い事もあって時計塔に入る扉はとっくに塞がれていたけど、私はそんなのお構いなしに得意の風魔法を使って、時計塔の壁を一直線に駆けていく。


 そして時計塔の屋根の上に辿り着いた後、屋根からこの街を見下ろして見ると、今日この街は夜が更ける前だというのに何処を見渡しても明かりが灯っていた。

 この光景を目の当たりにすると、いよいよ明日からを祝うお祭りが始まるを実感すると同時に、この前バーでウィルさんやエレンさんが


『今年この街で開催される死者の日の参加者は過去最高に増えるだろうから、きっと祭りが始まる前からこの街は賑わうだろうね』

 と、言っていた事が本当なんだという事をやっと私も実感して来たかな。

 二日後に死者の日の前夜祭が始まる事で、この街の死者の日という祭事が始まるんだけど、前夜祭さえ始まっていないのにこの街が既に賑う様子を見せているのは、ウィルさん達が話していたようにこの王国で大人気の「水の聖女様」が、死者の日の当日にこの街で祈祷を捧げるのを間近で見る為に、既に外部から多くの人がこの街に来ているからなんだよね。


「有名人効果って凄いんだなぁ……」

 いつもなら祭事が始まる前日にこんなに街が賑わいを見せた事なんてなかったのを知ってると、益々水の聖女様効果が凄いのかが分かる。

 ちなみにどうして水の聖女と呼ばれているルーサ・ルカ様が、この王国で暮らす人達に絶大な人気を得る事になってのかというと、まずルーサ・ルカ様は、十年前にこの大陸の南側にある全ての港町を壊滅させただけでなく、この大陸の南側の地形を大きく抉り取った大津波という大災害の中で、奇跡的に唯一生き残った人である。

 そして大津波で生き残る際に身に着けたとされる「神域に達している」って高名な魔導士達から評される程高度な水魔法を使って、大病に侵されたり酷い傷を負った人達を無償で救い続けると同時に、辛い事や悲惨な事があって生きる気力を失った人達に対して、親身になって寄り添うその慈悲深いその姿から「水の聖女様」と呼ばれるようになるのと同時に、人々から絶大な信頼を得るようになったらしい。


 私はルーサ・ルカ様みたいにこの大陸全土を渡って人を堂々と救ったりはしてないけど、モーリス・タウン住まう人達を救う為に活動しているから、正直に言えば私はルーサ・ルカ様に「人を助ける為に動く人」としてシンパシーを感じている!

 だから水の聖女様事、ルーサ・ルカ様に会えるなら直接会って色々と話を聞いてみたいと思っているけど、流石に()()()じゃそれは無理だよね……


「そう言えばルーサ・ルカ様って、もうこの街に来てるんだよね。

 いいなぁ、お仕事とはいえ水の聖女様と直接会えるなんて……」

 五日前に会ったのを最後に、死者の日が終わるまで顔を合わせれてないウィルさんとエレンさんが、憧れの聖女様と会っているを考えると、正直私は羨ましくて仕方がなかった。


――時は遡りその日の夕刻


「ねぇ、ウィル。

 もしかして少し緊張してるの?」

 ウィルフレッドの表情が少し硬くなっている事に気が付いたエレノアは、ウィルフレッドに様子を尋ねてみると、ウィルフレッドは苦笑しつつ頬を人差し指で軽く掻きつつ


「うーん、そうだね……なんせその名が国中に響き渡っている著名人と直接顔を合わせるとなると、流石に全く緊張しないという訳にはいかないかな?」

 ウィルフレッドは気恥ずかしそうに答えたので、エレノアの言う通りウィルフレッドは大物の来訪を前にして緊張を隠せないようだ。

 

「そう言うエレンは全然緊張してないみたいだけど、そこは聖騎士(パラディン)の中でも二つ名『光の騎士(シャイン)様』だね」

「私の場合は要人警護の任務で何度も国の重役達を警護して来てるから、もうどんなお偉いさん来たって『警護の対象』としか認識しなくなってるだけで、別に聖騎士として二つ名は関係ないわよ」

 そう気さく答えるエレノアだが、ウィルフレッドからすると街の長である領主として何度か王国の要人を相手にした経験があっても、ウィルフレッドは緊張する様子を見せているのに対して、エレノアが何時もと変わらない堂々とした様子を見せれるのは、単純に要人を相手にしてきた経験の差だろう。

 だから今回この街に来訪してくる相手が、下手したら国民から()()()()支持を集めているかもしれない相手であっても、エレノアは仕事と割り切って毅然とした態度で対応出来る姿を見たウィルフレッドは、エレノアが優秀な聖騎士だという事を改めて実感していた。

 二人がそんな気さくなだが二人の立ち位置の違いが良く分かる雑談を交わしていると、遠くから複数の自動車がこの街に向かって近づいてくる音が二人の耳に入ると、二人は気を引き締めた様子をみせる。


「ウィル、どうやらいらっしゃったみたいよ」

「そうみたいだね」

 二人は自動車の音が聴こえた方角に目をやると、精霊神の意思に沿ってこの世界を救う事を戒律とするこの世界唯一の教会「救世(サルベイション)の会(・ソサエティカ)」より、死者の日にサナッタ・シティで祈祷を捧げに来ることになった神官であるルーサ・ルカを乗せたV・I・Pカーと数台の警護車車両が二人の視界に入った。


「予定通りのご到着ね」

「何事もなくここまで辿り着いてくれて良かったよ。 さぁ、水の聖女様のお出迎えといこう」

 V・I・Pカーが街の入り口の前に停まり、V・I・Pカーから降りて来た運転手が後部座席のドアを開けると、そこから美しい水色の髪と神官の衣を靡かせながら美しい一人の女性が姿を現す。


「お忙しい中この街に訪れてくれた事に心より感謝するのと同時に、この街の者を代表してルーサ・ルカ様にご挨拶申し上げます。

 私はこの街で領主を務めているウィルフレッド・オーウェンという者です。

 かの有名な『水の聖女様』がこの街に来て頂けるだけでもありがたいのに、死者の日に祈祷まで捧げて頂けるという事が、この街にとってはどれだけ喜ばしい事か。

 死者の日が終わるまでの短い期間になりますが、この街に御滞在の間水の聖女様にご不便がないように誠心誠意務めさせて」

 ウィルフレッドはこの街に訪れたルーサ・ルカに深々と頭を下げつつ、彼女がこの街に来たことを歓迎する意を示した。


「ウィルフレッド様のお心遣いに感謝の意を示すと同時に、ウィルフレッド様やこの街に住まう皆様の気持ちに答えられるように、私はこの街で出来る限りの事をやらせて頂きますので、よしなにお願いします」

 それに対してルーサ・ルカも、この街で世話になる事に対して礼の言葉で返す。


「失礼します。

 ルーサ・ルカ様、王都よりこの街に派遣され、今回この街にルーサ・ルカ様が滞在されている間に身辺警護を担当させて頂く聖騎士隊(パラディン・ナイツ)の隊長を務めるエレノア・バーキンと申します。

 この街に水の聖女様が滞在している間、水の聖女様が危険に晒される事がないように水の聖女様をお守り致しますので、安心してこの街でお過ごしください」

 ウィルフレッドとルーサ・ルカの挨拶が終わったのを見計らって、エレノアもルーサ・ルカに対して挨拶すると同時に、深い礼を入れる。


「エレノア様、あなたの光の騎士として活躍の噂は私も耳にしていますよ。

 貴女もお忙しい中私のような者の警護に当たってくれて本当に感謝しています

 何かとご不便をかけるかもしれませんが、どうぞよしなにお願いします」

 水の聖女はエレノアに対しても丁寧にあいさつを交わした後


「今回この街で滞在するに当たって、お二人には特にお世話になると思いますから、私の事は『ルーサ』とでも、気さくに呼んでくださいね」

 水の聖女はウィルフレッドとエレノアに対して気さくに接してほしいと願ってきたが、その願いを聞いた二人は


((気さくに接してくださいって言われてるハズなのに、ルーサ様から優雅さしか感じないから気さくに接しにくい……))

 と、二人して思っていたが、同時にルーサが優雅に佇みながらも、穏やかに流れる水のような気品を感じさせる姿を見て、彼女の事を世間が「水の聖女」だと謳っている理由に大いに納得していた。

最後までこの話を読んで頂きありがとうございました。


前回後書きで更新を早めるます的な事を書いてましたが、結局早める事ができませんでので、もしこの後書きに書いた事を書いた事を信じていてくださった方がいたら、期待させて申し訳なかったです。


次話こそはもう少し早めに更新を!

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