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猫の住む場所

「ふぁ~~~ぁ……」

 まだ重たい瞼をこすり、時計を見たら今日も普段と同じ時間に目は覚めたけど、まだ眠気が取れてないせいで欠伸が止まらない。

 その原因は単純に昨夜は嬉しい事があって、その興奮が中々収まってくれないから中々寝付けなくてちょっと寝不足気味なだけなんだけど、寝不足になった理由が”嬉しさの余り寝付けなかったから”だと思うと、何だかこの眠気も悪い気はしないんだよね。

 だって今まで憎くて仕方がなかったけど、今まで逃げる事しか出来なかったアーサニーク・ファミリー相手に、私が日夜トレーニングを続けて習得したバトルスタイルで!

 そう、()()()()()()()()()()()()()()()ファミリーに一矢報いる事が出来たのは、本当に嬉しかったんだもの。


「たまには朝ごはん外に食べに行こうかな」

 何時もなら節約も兼ねて朝食は家で作っているけど、今日は気分も良いし昨日頑張った自分のご褒美という事で、久しぶりに外で朝食を取る事にした。

 まだ眠気が取れないから欠伸をしながらも、私は外に出て朝食を取るために身支度を始め、身支度が終わって外に出ると、外は今の私の気分を表すような晴天だった。



 私が住む隠れ家は、只でさえ治安が悪いモーリス・タウンの中でも最も治安もが悪い4番通りの外れにある。

 4番通りはアーサニークに支配される8年前までは、モーリス・タウンの中心地として最も栄えていた通りで、私の生家であるモーリス家の屋敷も4番通りに昔はあった。

 もっとも私の生家はアーサニークの手に落ち、今となっては只の悪党の巣窟になり果ててしまっているけど……

 そして4番通りに住む人達は、八年前にアーサニークからこの街が侵略を受けた際、私の生家モーリス家を強く慕っていてくれたし、アーサニークの侵略に最後まで抵抗する意思を示してくれるているのも4番通りに住む人達だった。

 だけどその所為で、4番通りに住み人達はアーサニークから最も強い弾圧を未だに受けている……

 だから私は、あまり4番通りに顔を出さないというか、顔を出せないでいるんだけど、それはきっと4番通りの人達に対する罪悪感が未だに拭えないからだし、今更私がモーリス家唯一の生き残りだと発覚したら、四番通りの人達にどんな表情(かお)されるか分かんないし、それを直視するのが怖い。


 そんな臆病な私を他所に、4番通りに住む人達はアーサニークに対して”自分達は完全に屈していない”という最後の抵抗の意思を未だに示している。

 その証拠に特に強い圧政を強いられている四番通りには、未だに多くの住民が住んでいるから。

 きっとこの4番通りに昔から住んでいた人達のこの通りに対する思い入れは、人一倍強いんだと思う。

 だけど、長い間弾圧され続けたらいくら強い反抗心を持っていても、徐々にその心は折らつつあって、年々少しずつだけど4番通りに住む住民の数は減っているし、アーサニークに対して抵抗の意思を示す活動も弱くなっている。

 だから私は、この町を、そして既に消えて無くなったモーリス家に未だに誠意を見せてくれる4番通りに住む人達を助ける為にも、私事マーリン・モーリスは銀青の(シーヴィング)泥棒猫(・コラット)として憎き相手アーサニークと戦い続けている。



 4番通りが最も治安が悪いと言っても、住んでる人達は助け合って必死に生きているし、人としての最低限のマナーは持ち合わせているから、実際は周囲から言われほど4番通りの治安って悪い訳じゃない。

 4番通りの治安を最も悪くしているのは、4番通りに頻繁にやってきては4番通りに住む人達を虐げているアーサニーク・ファミリーの構成員達だ。

 現に今だって行きつけのカフェに向かっている最中に通った道で、アイツ等は力の無い住民の家に徴収という名目で押し入って4番通りの人達を苦しめているのだから!


「ほら、痛い目見たくなかったら早く金目物出せよ!!」


「うっ……家にはもう何もありません

 そっそれに、ついこの前今月分のお金は収めたハズ……です」


「はぁ? お前この町を治めてるアーサニークさんが金が必要だって言って困ってるんだよ!

 だったらアーサニークさんに面倒見てもらってるお前らが、アーサニークさんの為に即金を出すのは当然だろうが!!

 そんな事も分かんねぇの?」


「そっそう言われても……主人はこの世を去りまだ子供も小さい我が家では、毎月の上納金を治めるのが精一杯でして……」


「あぁん!? お前の事情なんてこっちは知らねぇんだよ!」

 そう言ったアーサニーク・ファミリーの一員である男は、押し入った家の中を荒らし回り始める。


「や、止めてください!

 本当にもう家には何もないんです!!」


「うっせぇな!

 そんな事いうヤツに限って何か隠し持ってるってのが、セオリーなんだよ」

 家の中から荒らしながら金目の物を物色しようとする男を、必死に女性は止めようとして男の腕に掴みかかるが


「うぜぇんだよ! クソ女が!!」


「キャッ!!」

 男は腕に掴みかかってきた女性を引きはがす為に、力任せに女性を突き飛ばす!

 力任せに突き飛ばされた女性は、受け身を取る事が出来ず地面に叩きつけられるが、男は女性が地面に叩きつけれる様子を見ても一切表情を変える事はなく、再び家の中の荒らしつつ金目の物の物色を始めた。

 そしてキャビネットの中を漁っていると、男は何かに気が付く。


「んん! なんだこりゃ!?」

 男は物色キャビネットの奥に隠されるように仕舞っていた小さなケースを見つけた。

 そのケースは、痛んだ家屋には似合わない風格を醸し出していたので、男も見つけた際に思わず声を上げてしまったようだが、男が小さなケースを手に取っている事に気が付いた女性は必死の形相で


「そ、それは、亡くなった主人が唯一私の為に残してくれた形見の指輪なんです!

 お願いですからそれだけは!」


「はぁ? 何言ってんのお前?

 金目の物が無いって言ってたクセに、こんなもん隠し持ってたんなら即没収に決まってんだろ!」


「それだけは本当に許してください! 何でもしますから!!」


「なんでもします? お前寝言は自分の也見てから言えよな。

 お前みたいなみずぼらしい女になぁ、価値なんて何もねぇんだよ!

 だからお前に出来る事は、俺にコイツを大人しく引き渡す事だけ!

 この通りの人間はそんな事すら分かんねぇのか?」

 そう言って男は女性の旦那さんの形見を持って家から出ようとするけど、女性は旦那さんの大切な形見を奪われたくない一心で、必死に男に再び縋りついていた。

 しかし女性のそんな思いなど「知った事ではない」とでも言うように、男は縋り付く女性に腹にケリを入れ強引に女性を引きはがすと、女性は苦しそうに「ゴホゴホ」とせき込む。

 しかしその様子を見ても男は何とも思っていない表情を見せる事から、この男は普段からこんな事を平然とやってのけている最低の男だと分かった。


「ねぇ、良い加減にしたら?」

 この状況を見るに耐えれなかった私は、思わず男に向かって声をかけられずにはいられなかった。

最後まで読んで頂きありがとうございました。

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