新しい力
「話ぐらい聞いてくれても……」
髑髏の闇騎士に「私も戦えるように鍛えてほしい」とお願いしてみたら、髑髏の闇騎士は何に一つ言う事なくその場から”スッ”と姿を消してしまった。
えっ?、という事は髑髏の闇騎士は「私を鍛える気もなければ話す気もない」って事なの?
いくら私にとって憧れの人だとしても、そんな素っ気なさ過ぎる対応されたら、私だって軽く傷つくし文句の一つでも言いたくなった。
確かに急過ぎるお願いだけど、それでも、それでも私が【どうして強くなりたいのか】その訳ぐらい聞いてくれても良いと思わない?
そして何よりも、私の持てる勇気を全て絞り出して憧れの人に頑張って声をかけたのに、塩対応だなんてあんまりだと思った……
以前、髑髏の闇騎士に助けられた時、あの人は私と話してくれた。
だから「話ぐらいは聞いてくれる」と思い込んでいたけど、実際の所は一言話すどころか何も言わないで去られてしまったので、意気消沈気味に私は隠れ家に帰った。
***
髑髏の闇騎士に鍛えてもらう事を無言で拒否されたけど、それ以降も相変わらず私は髑髏の闇騎士の後を追いかけている。
その理由は「なんとかしてあの人に鍛えてもらう方法ってないかな?」という、あの人と関わる事を諦めきれない気持ちからだった。
そんな思いを胸に、今日も髑髏の闇騎士の後をこっそり追っていると、髑髏の闇騎士とエレンさんがファミリーの拠点の一つで鉢合わせてしまった。
「髑髏の闇騎士! 今日こそお縄に付きなさい!!」
「・・・・・・」
こうして二人の激しい戦いが始まった。
相変わらず誰かが入り込む余地のないレベルの戦いだけど、私は物陰に潜みつつ髑髏の闇騎士と光の騎士が激闘を繰り広げているを観戦する。
すると、私と同じように二人の戦いを黙って見守っている聖騎士多隊の隊員さん達が、この激闘に対する意見や感想を話し始めたので、私は目では激闘を追いつつ、耳は聖騎士隊の隊員さん達の会話に聞き耳を立ててみる。
「……相変わらず入る余地が無いよな」
「だよな、隊長には悪いけどあの戦いに割って入る気がしないわ」
「そもそもあの二人の動きを、私達はマトモに目で追えてないものね」
「ホントだよ! 正直『今後どれだけ訓練したらあの二人の戦いに付いていけるようになるか?』
なんて考えたくもねーしさ」
聖騎士隊の皆さんは、目の前で繰り広げている激闘を見た感想を各々漏らすけど、私は聖騎士隊の人達の感想聞いて、ふと思った。
(そっかぁ……厳しい戦闘訓練を受けているあの人達の目から見ても”あの二人の戦いは相当凄い”って思える戦いなんだ)
戦う為に厳しい訓練を受けて来た人達であっても、あの二人が激闘を繰り広げる姿を「目で追えない」って口にだしてしまうのって、あの二人は相当エグイレベルの戦いを繰り広げているって事だよね?
そう考えると、私ってかなり無謀かつ無茶なお願いを髑髏の闇騎士にしちゃってたかも??
どうやら私のお願いが相当無謀なお願いであった事を察してしまった以上、私は益々髑髏の闇騎士から鍛えてもらるのは無理な気がしてきた。
だからと言って、私は未だに繰り広げられている激闘から目を離す事が出来ないでいるけど。
(それにしても、聖騎士隊の人達が言うように確かにあの戦いに付いていける気はしないけど『動きを目で追えない』って言うのは、言い過ぎじゃない?)
そんな疑問がをふと頭を過ったんだけど、その疑問は私の思わぬ能力を気付かせてくれる事になる。
聖騎士隊の人達が口を揃えて「目で追う事が出来ないと」言っている戦いを、何故か私は目であの激闘を追う事が出来ると言う目が、私の秀でた能力だった。
つまり私は髑髏の闇騎士とエレンさんの戦いを、目で追って詳細に観察する事が出来たんだよね。
この能力に気が付いてから私は、とにかく二人の動きを今まで以上にしっかりと観察し、私とあの二人の体の動かし方の違いを探しあて、私との違いを見つけたら模範してみて
「どうすればあの二人のように無駄のない華麗な動きに近付けるのか?」
という事を目標に、トレーニングを続けた。
その結果、私は以前より遥かに素早く自分の体の動きをより素早く動かせるようになり、同時により些細で精密な風魔法のコントロール能力を得た事で、結果として私の身体能力は、以前とは比べ物にならないレベルに向上する。
元々敵に捕まらないように”素早く動く為の訓練”は、ずっと続けていたから、私は瞬間的なスピードだけなら髑髏の闇騎士やエレンさんに迫る動きは出来ても、戦いに関する動きはサッパリ分からなかった。
だから今度は二人の戦いを見て、実戦での戦い方を学ばせてもらう事にした。
特に戦闘に関する動きの参考にさせてもらったのは、私のヒーろーじゃなくて、バーで働いている時に何故か目の敵にしてしまうエレンさんの戦い方だった。
髑髏の闇騎士とエレンさんの戦闘スタイルを比べると、髑髏の闇騎士はどちらかと言うなら確実に相手の攻撃を受けつつ、力強い一撃で攻撃を加えていく戦闘スタイルであるのに対して、エレンさんはスピードを生かした素早い一撃や連撃を叩きこみつつ、相手の急所を容赦なく狙うスタイルを見て、私が模範とする戦闘スタイルはエレンさんの戦闘スタイルだと確信したから、私はエレンさんの戦い方の模範を始めた。
正直に言って私自身の力って腕力も魔力も大した事ない!
その事は嫌と言うほど身を以て思い知っているから、私はどれだけ髑髏の闇騎士に憧れていても、髑髏の闇騎士の戦い方をどれだけ私が模範したって、私は髑髏の闇騎士にはなれない。
でもエレンさんのように自分のスピードを生かしつつ、相手の急所を狙っていく戦い方なら、私の戦闘能力の低さを補う事が出来ると思ったから、私はエレンさんの戦い方を重点的に観察した事で、私の戦闘スタイルは出来上がったんだけど、まさか私一人で憎きアーサニーク・ファミリーの拠点を潰すことが出来たのは、私でも出来過ぎだと思ったし、何より私が強くなるための模範となってくれた二人には、感謝してもしきれないんだよね。
「アハハハ……今度お店でエレンさんと顔合わせた時は、何か申し訳なくてまともに顔合わせれないかも」
”今まで散々突っかかってるのに、動きはしっかり盗ませて頂きました”だなんて、ちょっ図々しい奴だと思ってしまう私。
そう思っちゃった所為で、次ウィルさんのバーであの人と顔を合わせた時の事を考えてみたけど
「結局私は、今度エレンさんと会った時、どんな顔したらいいのかな?」なんて考えていると、いつの間にか真っ暗闇の空が瑠璃色に変わり、朝日が昇ろうとしていた。
最後までこの話を読んで頂きありがとうございました。




